「ヤウージャのデクよ、狼となれ」プレデター バッドランド 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ヤウージャのデクよ、狼となれ
最近、プレデターが熱い!
『ザ・プレデター』で闘いに終止符が打たれたかと思ったが、見事な戦線復帰。Disney+の配信オンリーが惜しい『~ザ・プレイ』と『~最凶頂上決戦』で。
共にダン・トラクテンバーグ監督作。すっかりプレデター請負人に。
そのトラクテンバーグの手で、プレデターが7年ぶりにスクリーンにカムバック! しかも、“初主役”で。
さあ、今回は誰と闘い、どんな“狩り”を魅せてくれる…?
シリーズ物の常。やはり『1』が名作。それか、原点回帰とシリーズV字回復となった『~ザ・プレイ』。
シリーズ通算7作目にして、シリーズ最高傑作更新か!?…ってくらい面白かった!
しかし、この面白さが伝わらないのが日本。どうせまたアニメがヒットして、良くて4億円~5億円ほどで早々と終わって、ヒットしないんだろうなぁ…。本当に悔しい!
だって、それくらい面白い!
これまで人間の主人公が居て、襲い来る“敵”。
そんなプレデターを初めて主役にしたのが新味。
ならば、誰と闘い狩る…?
己と闘い、立ちはだかる運命を狩る…!
それに相応しい若きプレデター。名は、デク。プレデターに個人名が付けられたのも初めて。
プレデターの種族の一つ、“ヤウージャ族”に属しているが、まだまだ半人前。他のプレデターに比べ小さく、武器の使い方も闘い方もままならない。
そんなデクに闘いを教えているのが、兄のクウェイ。
デクは兄を敬愛し、クウェイはかつて弟に助けられた事があり、兄弟は固い絆で結ばれていた…。
プレデター主役も初めてだが、設定や話の立ち上がりも新機軸。
残忍な異星人ハンターだが、知能や高度な文明を持っている事はこれまでのシリーズでも描かれている。
本作ではさらに深掘り。星での暮らしや日々怠らない鍛練。
全編通してプレデターが出ずっぱり。なので、プレデターが喋る、喋る! プレデター語だけど。
また、戦士としての誇りも描かれていたが、本作では兄弟の絆。
知能があって文明があって感情があって…。エイリアンとは訳が違う。
デクには果たしたい目標があった。
一族の間でも“死の惑星(バッドランド)”と呼ばれるゲンナ。
そこに住む補食生物の頂点、“カリスク”。
一族でも倒した者は居ない。
カリスクを狩れれば、戦士として認められる。
弱きデクは一族の恥で落ちこぼれとされていた。
本当に一人でバッドランドに行ってしまいそうな血気だけは盛んなデクを案じつつ、応援するクウェイ。
そんな兄弟の前に現れたのは、一族の長にして兄弟の父。
一族最強にして、強さこそ全て。弱き者を忌み嫌っていた。つまりは、我が子デクを。
父長はクウェイに命じる。弟を殺せ。
拒否するクウェイ。
命令に反したクウェイを葬ろうとする父長。
力の差は明白。圧されるクウェイ。
遂に、父長の刃がクウェイを…。デクの目前で…。
悲しみと憎しみの雄叫びを上げるデク。
死の直前、クウェイはデクを宇宙船に乗せ、送り出す。
弟よ、目標を果たせ。
兄は俺を庇って父に殺された。必ず、兄の仇を打つ…!
まるで何かの悲劇を見ているよう。
力と闘いが全て。弱き者は排除。家族間でも容赦ない。サイヤ人のようでもある。
のっけからこの兄弟プレデターとデクに感情移入。まさかプレデターに感情移入しようとは…!
バッドランドに降り立ったデク。
挨拶代わりにいきなり動植物が襲い来る。
この星全ての動植物が危険度MAX。この星自体がモンスター。
まさしく、“バッドランド”。
その頂点に君臨するカリスク。
必ず狩る。己と兄の為に。
デクはカリスクを求めてバッドランドを行くのだが…。
悪戦苦闘ならぬ“悪戦苦道”。
不慣れな地、この星についての知識も無い。
毒針を撒き散らす植物に手こずっていた時、話掛ける声。
攻略法を教え、何とか危機を脱する。
声の主は、人間の女性姿のアンドロイド。名は、ティア。
身体中ボロボロ。と言うか、下半身が無い。カリスクに襲われたという。
デクはカリスクの居場所を聞き出そうとするが、ティアは一緒に連れてって。
ヤウージャは一人で闘う。相棒など要らない。
この星の動植物に関する私の知識は役に立つ。
相棒としてではなく、道具として。仕方なく、デクはティアを連れていく。
さすがに寡黙なデク一人じゃサバイバルも映画も持たない。お喋りなティアが加わり、そのやり取りにユーモア滲み、これもプレデター映画としては目新しい。
まだ旅は道連れ世は情けとまではいかないが、ティアを背負って、バディ・ムービーの要素充分。
ティアをエル・ファニングが演じた事でビジュ的にもよろしい。
しかし…、そもそも何故こんな星にアンドロイドが…?
まだまだ難所は続く。
カミソリのような草が生い茂る野原と食料として狙う巨大四足生物。
狙っているのは他にもいた。猿型のモンスター。まだベビーながら、力はなかなかあり、機敏。つぶらな瞳がキモカワイイ。
実際はお互い出し抜こうとしているのだが、結果的に協力し合って仕留める事に成功。
ティアはバドと名付け、獲物の肉を分かち合い、マーキングされるほど好かれるが(←ここ、後々伏線)、デクはいつまで経っても心を開かない。
そんなデクに、ティアは地球という星の狼という補食動物の話をする。
狼は群れで狩りをする。その群れのリーダーはただ強いだけではなく、群れを守る。それこそが強さとリーダーの証。
デクは兄の話をする。カリスクを狩りたい理由も。
ティアもある話をする。姉妹のような同型アンドロイドがいた。名はテッサ。カリスクに襲われた時助けてくれた。彼女の無事と再会をティアは願っていた…。
その頃、何処かのラボで…。
回収された一体のアンドロイドは、テッサ。
修復され、データ報告。
任務未完了。任務の続行。
任務とは…?
デクとティアは、ティアとその仲間がカリスクに襲われた場所に辿り着く。即ち、カリスクが近い。
ティアの下半身を発見。修復中、ティアは何処かに連絡を取る…。
デクは案内の礼として、自分がカリスクを狩る場の目撃者の栄誉を与えてやる、と。
しかしティアは、逃げて!
仲間に連絡した。連れてってと頼んだのは、ここに連れてきて貰う為。私たちの任務は、カリスクの捕獲。
ティアを道具として利用していたデクだが、その実は、自分が利用されていた。
その事を知り、激怒するデク。無謀にも、一人でカリスクを狩ろうとする。爆発で誘き寄せる。
ジャングルの木々を揺らし、地面を響かせて、遂に現れたカリスク!
おお~ッ! そのデザインは怪獣と言って良し! 本作、怪獣映画の要素もあったのか!
デクの奮闘&善戦。カリスクの身体を裂く!
…が、あっという間に治癒。カリスクは驚異的な治癒能力を持っていた。
斬っても斬っても死なない相手に、次第に劣勢。あわや!…という時、何故か突然カリスクが攻撃を止めた。デクに何かを嗅ぎ取ったように。
そこへ、テッサの隊が現れる。カリスクを捕獲。デクも…。
移動船の中。目を覚ましたデクは囚われていた。
ティアと瓜二つだが、性格はまるで違うテッサ。ティアは感受性豊かでフレンドリーだが、テッサは任務第一の冷たい性格。
エル・ファニングはバディでヴィランでもあった。見事な一人二役演じ分け。
ティアも囚われの身。下半身を失い、感情に左右される“姉妹”を、テッサはポンコツと吐き捨てる…。
テッサたち企業の目的は、カリスクの治癒能力。それを人類発展の為に利用する。
カリスク捕獲の際、追加任務。デクも捕らえる。ヤウージャの武器も調べる。
拷問を受けるデク。
テッサが報告の為に一旦退室。部下アンドロイド一体になった所で、デクとティアはヤウージャ語で機転を効かし、拘束を解く。デクは船から脱出する…。
一人になったデク。
一人はヤウージャとして当たり前なのだが…、
ボロボロに傷付き、武器も無い。利用もされ、裏切られた。
胸中を様々な感情が駆け巡る。怒り、悔しさ、戦士としての誇りを傷付けられ、己の未熟さも…。
本当の未熟者だったら、ここで挫ける。
が、デクはもうただの未熟者ではない。
立ち上がる。再び立ち向かう。
だが、武器は無い。いや、武器ならある。この星の動植物を使って。
手作りで武器を用意する。何だか『1』でシュワちゃんがプレデターとの決戦に挑むシーンを彷彿。
それらの知識は仲間が教えてくれた。仲間と強さとはこういう事か…!
ヘビ型モンスターを肩に乗せる。ちなみにこのモンスター、終盤で胸熱くさせる漢気シーンが。
バドとも再会。バドの意外な正体…! あの時だから攻撃を止めたのか…!
仲間と、仲間が与えてくれた知識と、新たな武器を持って。
狼となれ、デク!
見てればすぐ分かる。これは半人前の若者の成長物語。
闘いを通じて、強くなっていく。
一匹狼だったが、その中で、出会い、影響…。
もうこれ、少年ジャンプ的王道展開!
中には、プレデターはやはり脅威的な異星人ハンターであって欲しいと思う声もあるだろう。プレデターで成長物語…? コレジャナイ…。
でも、こんなプレデター映画もあっていいじゃないか!
プレデターは誇り高き戦士でもあり、騎士道や侍精神にも通じ、本作の作風にも違和感ナシ。
私には胸に刺さりまくり。胸アツだった。
さらに激アツなのは、アクション!
ヤワな人間相手じゃ出来ないキレッキレで迫力でビジュも完璧のアクションの連続。
本作でも台詞にあったプレデターを見ての「醜い」(byテッサ)。いやいや、本作のプレデターはカッコいい。デクがメチャクチャカッコ良く見えてくる。
表情や演技もいい。こんな芸当、ジャン=クロード・ヴァン・ダムには出来ないだろう。モーション・キャプチャーを駆使して演じたディミトリアス・シュスター=コローマタンギの賜物。
シンプルながら熱いドラマに、エキサイティングなアクション。VFXやクリーチャーの数々。激ヤバ惑星のロケーションも素晴らしい。
人間が一人も出てこなくても物語は成り立つ。キャストクレジットの短い事!
立ちはだかるテッサ。合流したデクとティアのケジメ。決着。
からの、デクにはもう一つ、ケジメが。弱き者は淘汰される。父長は自分で言ったその言葉を身を持って知る事に。
最後の最後まで、見たいものをたっぷり魅せてくれた。
こうなってくると、シリーズ今後の展開が気になってくる。
ティアとテッサはウェイランド・ユタニ社製のアンドロイド。言うまでもなく、あのシリーズの。以前の“vs”とは違う、本格ユニバースの伏線か…?
新たな“家族”を携えたデクの前に現れたのは…!?
こちらの続きも気になるが、『~最凶頂上決戦』で暗示した“トラクテンバーグ・プレデター・ユニバース”も気になる。
もう超が付くほどの期待がいっぱい。
暫くはトラクテンバーグにプレデター映画を任せて、100%間違いナシ!
まずはどんな形になるか、トラクテンバーグ4本目のプレデター映画を待とう。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。

