「おかん、なぜそこに行く」トロン:アレス 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
おかん、なぜそこに行く
シリーズはレガシーを劇場公開時に観たのみ。光るバイクと光る武器の印象だけが残ってる。
おかんの死に方、あれ気になっちゃうよね。暴走する息子に「お前は解任だから!母ちゃんがまたCEOに返り咲くから!」と言いにいくのは分かるけどさ。あんなに近づくのも、そこにタイミングよくアテナがいてアテナが問答無用でおかんを刺して殺しちゃうのもさ。そういうシチュエーションを作りたいが為のわざとらしさに見えてしまうのよね。
やりたいことは分かる。「手段を選ぶな」という命令を遂行するから、忠実なAIのアテナは手段を選ばずCEOのおかんまで殺してしまうのです。なんて悲劇!という展開をやりたいのは分かるけど、もうちょっと自然な展開にできたんじゃないか。
例えばこの映画の特徴であるオレンジのライン。パトカーを真っ二つにできるのは分かる。戦闘機を破壊できるのも分かる。でも道路に残ったあのラインに車が横からぶつかっても「あ、障害物があってちょっと乗り上げちゃいました」みたいな感じで済むの?キムがあのオレンジのラインにグルグル囲まれたけど横をどんどんって叩けるの?あのオレンジのライン、どういう仕組みよ!というのが気になってしまうんよな。
都合よくスパスパ切れるが都合よく即死には至らないラインです、みたいな。
あのオレンジのライン、触っても大丈夫なやつならそれを逆手にとってラインの上を登ったり盾にして欲しかった。お調子者ポジションのオッサンにそういうことやらせてよ。
スプリンクラーが作動して水に濡れてアテナが消滅するのもさ。デジタルは水に弱いのもなんとなく分かるし最初の方に説明あったかもだけど「あ、大量の水でダメになるのね」な唐突な感じがあったし、何より「弱点ついてやったぞ!」な作戦ではなく「たまたま運良く助かりました」感があるのがもったいない。
この場面は明確に作戦勝ちな展開にした方がより主人公側の賢さも強調できたんじゃないか。
あとキム姉さん、デジタルの世界に吸い込まれてから現実に帰ってきたけど普通に帰れるものなの?体の構造が変わったりするんじゃないのか。
そもそも最初の29分を超えた木のリンゴみたいな実も食べれるのかどうなのか。
すごいぼかすのよね。
たぶん作り手もそこら辺の「デジタル世界のモノを現実世界に持ってきた際の設定」はかなり苦労したと思うのよ。
オレンジラインのボーダーラインミーティング、赤線路線会議があったと思う。材質どうするかとかバイオレンスのボーダーラインはどれくらいにするか、とか。
だからラストもキム姉さんは妹の意思をついで永続コードを使って食料不足や環境保護を解決していきました、みたいなことをチラっと説明するんだけど。
ここをそのまま解釈すると、あのレーザーでういいーんってやって作る木はマジで普通の木として使えて実も食べれるの?めちゃくちゃすごくない?それってデジタル世界を現実世界に持ってくるのとはまた別の技術じゃない?
ってなるんだが多分作り手もそこら辺の細かいツッコミがくることは想定していて「細かいツッコミどころは無視してデジタル世界から永続コード使って抜け出したデジタルではないワイルドアレスを見せるからこの変貌ぶりエンドで許して」っていうノリなんだよな。
ここがすごいもったいない気がする。もっと突き詰められたんじゃないか。
「デジタル世界が現実世界にやってくる」というアイデアは自体は良かったけど「いざ現実世界に持ってくると材質とかどうなってるのか考えなきゃならんな」みたいになって色々ツッコミどころが出る感じになったのではないかと思う。
たぶんガジェットとかを先に考えて。例えば終盤のバトルでは空飛ぶでっけぇ門を出そうぜ!って盛り上がっていたけどいざディズニーの映画として作るなら。あんまり残酷描写できないから街中に小型メカ飛ばして墜落するくらいにしか使えなかった、みたいな事情を感じる。街破壊CGを沢山やる予算はねえ!みたいな。
そういうのがすごく多い感じがする映画。
でも自分はこのテーマに挑んでくれただけでも良かったと思った。
光るスーツと光る武器で戦い光るバイクで夜の光る街を走るよ!これぞトロンでしょ!という作り手の意思は伝わった。オレンジラインは綺麗でしたよ。
映画最初のディズニーロゴからトロンアレス仕様にして過去ニュースもわざわざデジタル世界で表現する、その見せ方は面白かった。
レトロCGな世界に行くのもいい。
レトロCG世界にいた永続コードを作ったオッサンが「非永続コードと名付けるべきだったな」っていう感じのことを言う終盤の永続コード種明かしもすごくいいと思うのよ。
29分以上存在できるようになる。でもデジタル世界で復元することは二度とできない。一度きりだ。それはまるで人間の人生のように!
っていう落とし所はすごく良かったと思う。
もっと世界観を練れたならもっと深く面白くなった気はするんだ。
例えば永続コード使用後のアレスは限りなく人間に近いけれどデジタル世界にいたくせでデジタルな喋り方、デジタル訛りが残るとか。
例えばデジタル世界から戻ってきたキム姉さんはちょっと半分デジタル人間みたいになって体や考え方が変化したとか。
デジタル世界を現実世界に持ってくるアイデアの使い方でもっと面白くなったと思う。
ただそう思わせてくれただけでも自分にとって意義はあった。
