「レガシーは受け継がれなかった」トロン:アレス シンさんの映画レビュー(感想・評価)
レガシーは受け継がれなかった
トロンレガシーが公開した2010年。当時中学生だった私はその洗練された無駄のない世界観と、何度も見たくなるマシンの展開シーンや、何度耳にしても本能から高揚する音楽の虜となり、一気にトロンの大ファンとなった。
あれから15年。レガシーは受け継がれなかったのだなと、非常に残念な気持ちで一杯である。
フリンはアイソーの出現によって現代の科学、医療、宗教等の全てが変わると言っていた。それがAI兵士に現実の世界で永遠の命を授けることを意味するなんてことはないだろう。
エンコム社もそうだ。いきなりぽっと出の中国系アメリカ人にアランとサムが会社を譲っているなんて理解に苦しむ。イヴキムは妹の意志に執着しているのみで、そこにフリンのレガシーは感じられない。
ダフトパンクが完成させた、トロンのテーマソングとも言うべきBGM「グリッド」も前面に押し出されることなく、ただ雰囲気を似せた電子音が心ではなく劇場に響いているのみである。 等々、受け継がれなかったレガシーは枚挙に暇がない。
時折前作カットのオマージュや、オリジナルへのリスペクトを感じるシーンで嬉しさもあったが、その用法は短絡的で、かつ新たに生じた負の遺産があまりにも大きく、トロンレガシーの大ファンとしては総合的に魅力的な作品にはなっていないと感じた。
一方で、前作までの遺産に固執しない新たなファン層には、その鮮烈な世界観(前作には遠く及ばないが…)と派手な演出が受け入れられることもあるだろう。
一応はトロンとしての映画は存続ということで、次作では回帰することを切に願う。
私個人の意見としては、サムとクオラがフリンの意志を受け継いだ姿を見たかった…
トロンレガシー続編の話が初めに持ち上がった2012年頃、コシンスキー監督の元で同じキャストとダフトパンクが集っていればどんな映画になったのだろうか…心底悔やまれる映画である。
