「複雑な入れ替わりがもたらす共感の物語」シャッフル・フライデー おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
複雑な入れ替わりがもたらす共感の物語
■ 作品情報
監督はニーシャ・ガナトラ。脚本はジョーダン・ワイス。主要キャストはジェイミー・リー・カーティス、リンジー・ローハン、ジュリア・バターズ、ソフィア・ハモンズ、マニー・ジャシント、マーク・ハーモン。製作はクリスティン・バー、アンドリュー・ガン、ジェイミー・リー・カーティス。製作会社はウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ガン・フィルムズ、バー!プロダクションズ。
■ ストーリー
本作は、2003年の映画『フォーチュン・クッキー』の続編にあたるファンタジー・コメディ。シングルマザーのアンナが再婚を決意するが、婚約パーティーで現れた占い師の呪文により、翌朝、アンナと実の娘、そしてアンナの母テスと連れ子である義理の孫娘の体が入れ替わってしまう。入れ替わったことで巻き起こるドタバタ劇の中、特に娘たちはこの状況を利用して結婚を阻止しようと企む。しかし、互いの立場や気持ちを体験することで、登場人物たちはそれぞれの思いを理解し、大切な気づきを得ていくことになる。
■ 感想
前作があることも知らずに鑑賞したのですが、全く問題なく物語の世界に引き込まれるテンポのよさに驚かされます。主要登場人物の関係性もすぐに理解でき、導入からあっという間に映画の世界に没入できます。
しかし、そこからが本作の醍醐味であり、同時に脳に負荷がかかるポイントです。4人の女性が二組に分かれて入れ替わるという設定が、想像以上に複雑です。「今、見た目はあの人だけど、中身はこの人だから…」と常に頭の中で整理しながら観る必要があるので、かなりの集中力とエネルギーを要します。序盤はそのややこしさに少々疲労を感じましたが、ストーリーが進むにつれて自然と慣れていきます。この複雑さこそが、互いの立場を深く理解する上で不可欠な要素であり、痛快なところでもあるので、しかたないですね。
特に印象的だったのは、これまで自分の気持ちばかり主張していた二人の娘が、大人の、そして親の立場を経験することで、自分自身を顧みるようになる姿です。その変化が丁寧に描かれており、観ている者の心に鮮やかに響いてきます。終盤の展開では、思わず目頭が熱くなるほどです。家族の絆や、他者を理解することの尊さが、心温まる形で伝わってくる良作です。
正直なところ、100人収容のスクリーンで私一人だけという鑑賞体験は、非常に贅沢ではありましたが、この感動を多くの人と分かち合えないのはもったいないと感じます。こんなにも心に響く作品なので、もっとたくさんの人に届くといいなと思います。