父と僕の終わらない歌のレビュー・感想・評価
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予定調和の安心感か、現実の不在か
本作は、認知症を抱える父とその息子との関係を、音楽を媒介として再構築していく物語である。SNSで拡散され世界的に話題となった実際のイギリスのエピソードを下敷きにしているが、日本版では社会現象的な広がりよりも、あくまで家族の内側にある感情の機微に焦点を絞っている。その選択が功を奏している部分もあれば、逆に現実感を欠いていると批判される余地もあると感じた。
まず評価すべきは、父と息子の関係性の描き方。寺尾聰と松坂桃李の演技は抑制的で、派手なカタルシスではなく、じんわりとした余韻を残す。認知症により記憶が失われていく父に対し、息子が「本当は自分のことをどう思っていたのか」という答えのない問いに向き合う姿は、観客自身の親子関係を映す鏡として作用する。40代以上の観客が「自分の親を思い出して涙した」と口を揃えるのは、その普遍性ゆえだろう。音楽が二人の心をつなぎ直す瞬間に生まれる説得力も確かだと感じる。
しかし同時に、本作は現実の認知症介護が孕む苦しみや社会問題を巧妙に切り落としている。実際には、暴力や徘徊、免許返納を巡る家族の葛藤といった、耐え難い現実が日常に横たわっている。だが映画はそれらはあまり描かず、歌と親子の温もりに物語を収束させる。観客にとって安心感がある一方で、当事者やその家族から見れば「きれいごと」に映るリスクを孕んでいる。SNS拡散の役割も小さく扱われ、世界的な現象を社会的文脈から読み解く余地はほとんどない。93分という短い尺に収めるための割り切りとはいえ、テーマの厚みを削いでしまった感は否めない。
この作品の本質は「現実の認知症をどう描くか」ではなく、「記憶の喪失を前に、親子がどう答えを見つけ直すか」にある。だからこそ予定調和的であっても、その反復が観客の心に響く。忘れてはまた向き合い直す父の姿は、まさに「終わらない歌」として記憶に残る。だが同時に、認知症が社会に投げかける根源的な問いをどう描くかという課題には踏み込み切れていない。作品としての完成度と、社会的なリアリティとの間に横たわるギャップを、我々はどう受け止めるのか。感動に涙することは簡単だが、その涙を拭ったあとに現実へとどう向き合うかを問うのが、本作を観る我々の宿題なのかもしれない。
演者みんな良いけど特に寺尾聰さんの役柄がとても良い。
寺尾聰さんの役柄が本当に良かった。陽気な歌が大好きなお父さん。そんなお父さんが認知症になりだんだんと症状が進んだ時のあの感じもとても怖くてさすがの演技力だなと思った。
他の演者さんも違和感なくてみなさんとても素晴らしい役者さんばかりで見ていて安心して見れた。
現在では認知症は治ることはなく進行を止めるしかない。なので普通に考えてあの後もお父さんに付き合っていくお母さんや息子はとても大変な日々を送ることになるのだが、それでもなんというかあの終わり方で良かったと思う。
とてもあたたかい気持ちになれる映画。
「君は僕のヒーロー」だから
私の父は昔からとぼけた人だった。
父のなにげない言動が、どこまでが冗談でどこまでが本気か、子どもながらに戸惑うことが多かった。
そんな父が認知症と診断されたのは、3度目の失踪のあとだった。
まだまだ軽度という診断で、暴れたり、怒ったりすることはなかったが、それでもいつ失踪するか常に気にしなければならず、気が休まる時間がなかった。
しばらくは、もともと静かでとぼけたところが多かった父だったで、認知症と診断されてもあまり違いは感じられなかった。
けれど数年経つと、徐々に表情の変化が乏しくなって、感情の発露がみるみる減っていった。
ただ食べ、黙ってテレビを見て、静かに寝る。
その生命力の希薄さは、まるで植物と暮らしているようだった。
そんな父親の死んだ目に、光が戻った瞬間があった。
それは、ちあきなおみが歌う映像が偶然テレビで流れた時のことだった。
認知症となってからは蚊の鳴くような声しか出さなかった父が、ちあきなおみの歌に覆い被さるように大きな声で歌い始めたのだ。
びっくりした。
父親の奥底に眠っていた記憶が「歌」として発露し、それとともに生命力が蘇った。
ほんの一瞬だったけれど、かつての父が戻ってきたように感じられた。
父の昔のことや、好きなことなど、全然聞いたことがなかったので、かつて、ちあきなおみの歌が好きだったことも知らなかった。
もしかすると本人でさえ忘れていた記憶だったのかもしれない。
認知症という病名をつけられてしまうと、知らず知らずに周囲はそれ前提で接するようになる。
けれど実際には、その波はグラデーションのように、完全に認知症の時もあれば、(ほんのわずかな時間だけれど)意識がはっきりする瞬間もあるということを、父親の介護を経て知った。
けれど、介護する側は「父は認知症だ」と決めて扱う方が楽なので、そのほんの少しの記憶の復活の瞬間を雑に扱ってしまうようになる。
そのうち、父は、ちあきなおみの映像を見ても、なんの反応も示さなくなった。
父のわずかな生命力は、介護のルーティンの中で、ろうそくの火のように静かに消えて見えなくなった。
脳科学的には、人間の記憶は「陳述記憶」と「非陳述記憶」の2つに分けられる。
「陳述記憶」の中には、大きく「エピソード記憶」と「意味記憶」があり、
「エピソード記憶」=「出来事の記憶」
「意味記憶」=「学校の勉強など一般的な記憶」
といった、一般的に「記憶」と言われる意識的覚えたものが含まれる。
一方の、「非陳述記憶」には、主に「技能」「プラミング」「古典的条件付け」「非連合学習」などがあり、
「技能」=「自転車の乗り方」など、身体でコツを覚えること
「プラミング」=無意識の潜在記憶
「古典的条件付け」=「パブロフの犬」など反射の条件付け
「非連合学習」=刺激の繰り返しによる慣れや鋭敏化
といった、どちらかといえば無意識に記憶されているものが含まれる。
認知症になった人は、陳述記憶はどんどん薄れていくが、体に染みついた動きや習慣などの非陳述記憶、つまり生きるために必要な記憶はなかなか薄れないで残っている。
だから、普段からとぼけた人は、認知症を発症したのかどうかが判別しづらい。
映画「父と僕の終わらない歌」のオープニングで、寺尾聰さん演じる父「間宮哲太」が、松坂桃李さん演じる息子「間宮雄太」を横須賀駅まで送った後、家までの帰り道を忘れたというシーンは、まさに認知症を象徴するような場面だ。
車の運転の仕方は覚えているのに、道を忘れてしまう。
本人も家族も、普段からとぼけた人だった場合、余計に認知症に気づきづらい。
この映画が、父の認知症を通じて家族の絆を見せていく物語だということを見事に表現したオープニングで、ストーリーは進んでいった。
そして、エンディング。
コンサートを終えた父・哲太は、誰もいないホールのステージの上で、ギターを抱えて座っている。
父を見つけて近寄ってきた息子・雄太にギターを教えようとする。
息子のことを忘れても、自分の名前を忘れても、「歌う」こと、そして「ギターを弾く」という「非陳述記憶」は失われていなかった。
人間の脳は「生きる」ために存在する。
だからこそ、食べることや寝ることといった「生きる」ために必須の記憶は、どれだけ認知症が進んでも残っている。
けれど、ひとりの人として、間宮裕太の父「間宮哲太」としては、どんどん「生」が失われていく。
息子の雄太はこれからもずっと、父哲太の生物としての「生」が終わるまで、父の記憶の喪失と向き合い続けなければならない。
ラストシーン。
自分のことを忘れていることを知った雄太は、涙ながらに息子のことをどう思っていたのか?を父に問う。
父は幼い自分に、ギターを教え、歌手となる自分の夢を継がせようとしていた。
その父の想いに応えることはできなかった。
自分がゲイであることで、孫を見てもらうことができなくなった。
父の期待に応えることができなかった。
そして、それに対するリベンジの機会を待つことなく、父の中で、自分の記憶が消えていく。
そんな時、親不孝な自分を責める雄太に、父哲太は笑顔で答えた。
「雄太はいつでも自分のヒーローだ」
子どもにとって、父親はヒーローだ。
強くて、なんでも知っていて、なんでもできる、スーパーヒーローだ。
でも、親から見た子どもも、同じようにヒーローなのだ。
いてくれるだけで嬉しくなり、楽しくなり、幸せな気持ちにしてくれる。
夢を継いでくれなくても、孫を見せてくれなくても、そんなことは親にとって些細なことで、生きていてくれるだけでじゅうぶん親孝行な子どもなのだ。
エンドロールで流れる、「smile」が切ない。
🎵
泣いたところでどうにもならないからね
そうすればきっと人生はまだまだ捨てたもんじゃないと気づくよ
ただ笑顔でいれば
泣けたな
この映画は寺尾聰の歌が上手いと言うことに尽きます。
なんだろアルツハイマーになる父を家族が支え合うまた父の夢を叶えるための物語実話もあって良かった。
今の時代の売名行為など家族が良かれと思うことがバッシングを受けるまた松坂桃李演じる役が同性愛者という今の時代の内容も盛り込まれてる。
歌で全てが変わる歌で救われるそんな映画のように思った。
見る人によって違うことも素直な心で感動できることはいいなって思わされた
実際にあったエピソードの、非現実的な描写、のような
外国で実際にあったエピソードがもとだそうで、舞台が横須賀だからか、あまりリアルには受け入れられませんでしたが、一つの物語だから、と割り切って、あとは寺尾聡さんの歌唱を楽しみに観賞しました。それでも泣いて笑ってハラハラしました。
アルツハイマー型認知症の病状とその家族の苦悩の描写は辛いものがありました。が、あそこまで病状が進んでいるのに施設に入れない、のは現実的ではないなあとか、つい自分の身に置き換えて思ってしまいます(入れようとした施設もだいぶ高級有料老人ホームなのでそれもまた非現実的)。
寺尾聡さんと松坂慶子さん演じた夫婦像はすてきでした。松坂桃李さん演じる息子は今までにない味わいでしたが、役どころが明らかになって納得。電話越しの声だけで登場していた恋人役がどなたなのかなかなか思い出せなくて、でもこの声は絶対知ってる、有名な人だ、と気になって(笑)。父親の介護のために実家に戻った息子としばらく会えなくなって、病状が深刻化していき、このまま恋人と別れてしまうのか、辛すぎる、と胃がヒリヒリしました。最後、その恋人も現れて、ああ納得! 素敵な役どころでした。それもまた非現実的ではありましたが、もっと恋人同士の描写見たかったです(笑)。
「目」の演技
松坂桃李さんは前にもゲイの役者をやっていて、優しそうだからと妙に納得してしまいました。
この家族に癒されました。
アルツハイマーだからと言って怒りたくなる様な事でも、どんなに後片付けで疲れても大好きなお父さんへの深い愛があるから怒りたいんじゃ無く悲しくなるだけ。
寺尾聰さんが子供の頃の息子の顔を愛おしそうに見つめるシーンは、純粋さのみが残ってる素晴らしい「目」での演技でした。それに応える松坂桃李さんの暖かい眼差しも又素晴らしかったです。
キャストが抜群
寺尾聰はじめ、主要キャストが良いキャラを演じていて感情移入できました。
ストーリーも満足なのですが、ステマのくだりはなくてもよかったかなと感じました。
その直前までが良い盛り上がりだったので急に落とされた感じがあったので、、
個人的に、なくてもストーリーは成立するかなと思いました。
タイトルなし(ネタバレ)
寺尾聰 歌上手〜!(歌手だが)
松坂桃李 言われてみればゲイに見えてくる
松坂慶子 困り果てた妻の様子がいい
認知症の方の行動を理解してあげられなかった時の無力感(これを探してたのか、の脱力感ね)
暴れる夫を押さえられず、あんなにもうダメだ…と思いきや、やっぱり一緒にいてあげたいという愛情
息子への奥底に眠っていた感情が吐露された時の息子の挫折感
等々、単純じゃないよな家族、人間。
でもやっぱり親父がどう思っていたのか聞きたくて、聞きたくて、(分かってないのを)いい事に聞いてみたら…やっぱりお父さんなんだね~泣。
この時は寺尾聰の演技に自然に反応してしまったと。松坂桃李のコメントを読んで、そうでしょうねぇ泣、こっちも泣いてましたよ。
大丈夫だよ、大丈夫だから、と何度も声をかける息子に、認知症ってこれが大事なんだよな(否定しない)とか自分の日常を振り返りつつのあっという間の終幕でした。
TVではやらないだろうなぁ。みんなかっこ良かったのにね。
進行が早い?
終わらない、というより、始まったと言うべきか。
アルツハイマーについて、恥ずかしながら知識も経験も無い。
それでも、こんな風にになるの?という疑問も少し。
免許返納したのに車に乗り込む父。
いやいや、危ないでしょう。
気づかなかったら一人で行くところだった。
四六時中見張っていないと、だよね。
父親を乗せて歌わせ動画を配信。
短絡的にも思えてしまった。
音楽は良かったが、終わらない=まだまだ介護は続く、という意味にも取れて感動というより虚しさや大変さを感じた。
副島君のファインプレー。
漢検一級。
なんか笑えた。
スマイル
原作はイギリスのサイモン・マクダーモットの
ノンフィクション。
舞台は横須賀に。
若き日に諦めたレコードデビューを叶えようとする
アルツハイマー型認知症の男性と彼を支える
家族の絆と仲間を描いたヒューマンドラマ。
寺尾聰さんの声と歌声がずっと心地好い。
松坂慶子さんの声も素敵。
深刻な病気でも明るく楽しく湿っぽくならず
でも、楽しい事ばかりではない………。
忘れる、忘れられる、暴れる怖さも感じた。
自分の父親が私の存在を忘れてしまったら
と考えてしまう。
松坂桃李さんの泣くシーンにやられた。
下唇と顎をヒクヒクさせ、涙も左、右、そして
左と流す姿は凄い。
スマイルさんと顔を常に触って元気づける
父親。記憶は無くしても愛は残っていると
感動した部分もある。
だが介護する側、される側の
両方の気持ちがぶつかる現実はこんなもんじゃ
ないだろうと突き刺さされた映画でした。
認知症の恐ろしさを考えてしまう
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聡には若い頃、歌手デビューできる絶好機があった。
でも当日に桃李が生まれ、オーディション受けられず。
今は認知症になってた。でも歌を聴いてる時は改善する。
桃李は音楽を聴いてノリノリでで歌う聡を録画した。
やがてそれがネット上でバズった。
それを見たレコード会社からデビューの話が来る。
ところが、上記動画が売名行為と誤解され、炎上。
デビューの話もなかったことになる。
桃李は10年前、父に同性愛をカミングアウトした。
その時は受け入れてくれたようだったが・・・。
聡の認知症は日に日に酷くなり、暴力的になって行く。
同性愛を引き合いに出され、お前は恥だとキレられる。
お前なんて親じゃない、そう告げる桃李。
ところがその夜にはそんなこと忘れ、優しい父に戻る聡。
また心が揺れ動く桃李・・・。
桃李はレコード会社の人と再度話してみた。
またバズるようなら改めてデビューも考えるとのこと。
なので小さな会場ながらソロライブの開催にこぎつける。
が、歌の時は健常となるはずの聡が本番中に歌詞を忘れる。
そこは桃李が行って優しくサポート、事なきを得る。
こうしてライブは成功裏に終わった。
ところが終了後、桃李を息子だと認識できない聡がいた。
ショックな桃李。その機に、息子をどう思う?と聞いてみた。
「おれにとってヒーロー」、その言葉が全てだった。
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おれの父は幸い、非常に元気でふつーに1人で出歩いてる。
でも96歳。いつ認知症になっても不思議はない。
だから認知症関連の話は極力見に行くようにしてる。
もし自分がそうなった時、少しでも耐性がついていたいから。
この作品はまさに、明日は我が身という作品だった。
桃李ってこういう悲劇的な役をいつも見事に演じ切るよな。
ホンマに繊細な人なんやろうね。すっごい共感して涙したわ。
でとにかくみんな優しい。桃李はもちろん、聡の嫁も友人も。
桃李の友人、商店街の人達に至るまで、みんな。
聡の人柄なのか??現実でもこんな人に囲まれてたらいいな。
とにかくもうずっと涙が止まらんかったわ。
聡が音楽を聴いてる時は健常になるみたいに、
認知症の人には、その人を象徴する何かが脳にいいんやってさ。
じゃあおれの親父がそこまで好きなものって何?
うーん、思い出せない・・・ってか、ないと思う。
世のため人のために動いてるような人やからなあ昔から。
そのこと自体は素晴らしいが、心から賛同するわけではない。
おれは自分らしく、好きなことに没頭する生き方を選びたい。
どっちが正しいのかなんて分からん。色々考えさせられるな。
そういや認知症の進んだ親から自分が認識されないことを、
おれはそんなに恐れてないし、受け入れられる気がしてる。
実際にそうなったら分からんけど、諦めがつく気がする。
逆に認知症末期の親にまで認識されたい感覚の方が分からん。
色々考えてはしまうが、なるようにしかならん。
おれはおれの生きる道をひたする歩いて行くのみ。
何か知らんけど、そういう結論に収めることにしたわ。
親子の関係をもう少し
アルツハイマーが進行する父親と息子の関係を描く。
父親が愛した音楽、その音楽との繋がり家族との繋がりを重たく描くのではなく心を躍らせる曲をイメージした様なリズムで描いてるのだが、場面場面で想いや辛さは伝わってくるのだが、何か足りないのか心を動かされるものは感じられなかった。
歌に心動かされました。
寺尾さんの歌は、心に沁みて泣けました。特に最後のレコーディングのかかったライブ、松坂桃李と一緒に歌うシーンも感動的でした。
家族の動向が気になって、時々ハラハラして見てたり…。温かい家族の映画でみれて良かったです😊
とても切ない
最初アルツハイマーとわかった時の衝撃。
歌を通じて、楽しい話になって行くのかと思いきやアルツハイマーが進行して、どんどん重い話に。
それでも、まわりのキャストが楽しい方ばかりなのでそこまで深刻になり過ぎず、クスリと笑えるシーンもありました。
主人公こバックグラウンドなど良くこの90分程度の話にまとめたなという感じ。
洋画に詳しければさらに楽しめたかも。
親しい人が認知症になって苦労した方はフラッシュバックしたり、自分と重ね合わせて辛くなる可能性もあるので星−0.5
私は半分くらい泣いてました。
とても、おすすめです。
認知症のことへの表現が雑過ぎて...
実話を基に描かれた認知症の父と息子の絆を描いた作品。
あくまでも親子の苦悩と愛を描くドラマ性の中の軸に認知症があるだけで、病気を掘り下げて制作された作品ではないことはわかるけど、アルツハイマー型認知症の症状に対していくらなんでも適当に表現し過ぎていると思う。
テープを探すシーンにしても、いきなりあんなに暴れて奥さんに暴力を振るうことなんてあり得ない。
映画内で描かれなかった場面で、
母「どうしたの?」
父「あれがないんだ」
みたいなやり取りが続いた先に拗れてあのシーンに繋がったとしても、観る側からすると「認知症=ちんぷんかんぷん」「認知症=暴れたりして大変」という印象にしかならないと思う。
確かにはたからみれば認知症の方は訳のわからない言動、行動が多々あるけれど、そこには必ず原動となる想いがあってそれを基に心情や行動に順序がある。
ラストシーンにしても回帰(記憶が昔に戻ってしまう)が起こっている状況で、大人の息子を子供時代の息子と誤認することはまずない。回帰しているのなら父にとって
目の前の青年は「見知らぬ青年」であり、それが二転三転することもまずない。
認知症の方たちと携わってきて、彼らが「自分という人間」を手放したくないと苦しむ姿をずっと見てきた分、あまりに不当な主観的酷評だとは理解しているけど、認知症に限らず病気がテーマに絡んでくるのであればもう少しそこに理解を深めて制作に挑んで欲しかった。
本人の中でのみの限定的であるがゆえに奇行に見えたとしても、そこには整合性を持って生きているちゃんとした人間なんだよ…
素敵な映画です。(寺尾さん目当てで観ました。笑)
私は、この映画を2回(5月23日に川崎チネチッタで小泉徳宏監督と寺尾聰さんの公開初日舞台挨拶があった回と、6月1日に地元の映画館)で観ました。
この映画の公式サイトで、劇中歌のリストを見た時に「これ全部、寺尾さんがライブで歌ってる曲じゃーん♪」と思ったのと同時に、同サイトに載っていた、テッドさんとサイモンさん親子の画像を見て「あっ。これ何年か前に、テレビで紹介されてた親子だ!」と思いました(笑)。
劇中で寺尾さん演じる哲太さんの歌を聴きながら「この曲、4日前(5/19)のライブで聴いたばかりだわ」と思いながら、歌詞が何となく分かる曲は、哲太さんの歌に合わせて小声で歌ってましたし、聡美ちゃん(佐藤栞里さん)の結婚披露宴のシーンでは「士郎さん(元オックスの岡田士郎さん)と文哉くんが、しっかり映ってるし〜」と吹き出しそうになり「"Love Me Tender"は、こう言うアレンジにしたのね」思いながら観ていました。((o(^o^)o))〜♪
あと、ボランティアエキストラで参加させて頂いた哲太さんのライブシーンを観た時は「あの時、結構時間を掛けて撮ったシーンが、まるまるカットされてる〜」と思いながら観ました😅
それでも、「What Now My Love」と「That's Life」が流れた時は、ちょっとノリノリでした🎵
認知症の父親を介護すると言うストーリーだと、重かったり暗いストーリーではないかと思いがちですが、この作品はそんな要素は全くないのが良いなと思います。
アルツハイマー型認知症でも、進行が早い人もいれば、緩やかに進行する人がいるらしく、哲太さんは進行が早いタイプだったと思われ、雄太くん(松坂桃李くん)とお母さんの律子さん(松坂慶子さん)が、次第に変わっていくお父さんに戸惑い、10年前に雄太くんが同性愛者だと言う事を両親にカミングアウトした事を忘れて怒る哲太さんや、子供の頃の雄太くんを思い出すシーンを観て、記憶が過去と現在を行ったり来たりしているのだろうなと思いました。
哲太さんが、色んな事を覚えられなくなって来て、室内に注意書きのメモが貼られていたシーンを観て「"博士の愛した数式"か?」と思った方もいらっしゃるかと(笑)。
※「博士〜」は、寺尾さん演じる数学者の「博士」が、事故が原因で高次機能障害になってしまい、記憶が80分しか持たないと言う内容の映画です。
2回目の鑑賞は、初見の夫を半ば強引に(笑)誘って、映画館に行ったのですが、1回目の時より細かいところに目が行くようになり、哲太さんのライブシーンでは「(寺尾バンドの)Kさん見っけ♪」と思ったり、自分がちょっとだけ映り込んでいるのを見つけました(笑)。
1回、観ているので、ストーリーは分かっているのに、なぜかラストシーンは2回目の方が泣けました😢
もしかしたら、松坂桃李くんがテレビで「お芝居で、あんなに感情が溢れたのは初めてでした」とお話しされた事が、頭に残っていたのかもしれません。
寺尾さんと松坂桃李くん、松坂慶子さん他の出演者の皆さんが、各々素敵なキャラクターで、素敵な映画だと思います😊
小泉徳宏監督が、寺尾さんにオファーした時に「寺尾さんの代表作にします」と言われたそうですが、もしかしたらそれが現実になるかもしれませんね😄
ただ、寺尾さんは過去に、「雨あがる」と「半落ち」で日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞されているのですが、この作品は、寺尾さんと松坂桃李くんのダブル主演なので、どんな扱いになるのでしょうか?😅
Smile son Just smile
父と僕の終わらない歌
アルツハイマー型認知症と診断された父哲太と
どんどん忘れていってしまう父のその事実に、葛藤しながらも向き合い支える息子雄太の姿がとても印象的
あんなにもコロコロと症状が変わるものか
調子のいい時は歌を歌って父と子の関係は安定して見える
かと思えば、どんどん忘れ、怒りっぽくなり、突然家の中をめちゃくちゃにする哲太に、雄太も、本来とても明るく優しい母の律子もボロボロに
いや、きっとそんなものではないんだろう
実際にはもっと苛酷なんだろう
忘れゆく父の衝撃な姿に
絶望すら感じさせる
さらには言ってはいけない言葉で
息子の雄太の心をズタズタにしてしまう
そんな父を施設に入れることも考えたが、
『その人と切り離せないルーティーンは、その人を安定させる(?)』
その言葉にハッとさせられた
かつてはレコードデビューを目指した父
自称横浜のスター間宮哲太の歌は
聴く人を楽しませた
アルツハイマー型認知症を患う父として歌う姿が
SNSでバズり、過去に諦めたレコードデビューをかけて、哲太のライブが計画される
レコードデビューがかかった哲太のライブは
果たしてうまくいくのか
心配な母律子は賛成出来ずにいたが、何とか父親の夢を叶えさせたい息子の雄太に
『絶対に、誰も傷つけないで
お父さんも、雄太も』
忘れゆく父を見る方も
何も分からなくなっていく本人も
どちらもやるせない
母律子の言葉がすごく沁みた
ライブ直前に哲太はまたライブのことを忘れてしまうが、息子の雄太や、母の律子、雄太の幼なじみの聡美とその夫のダニエル、哲太のバンド仲間、そして優太のパートナーの亮一らの支えによって何とか最後までやり切ることができてよかった
ライブ直後の哲太と息子雄太のシーン
他人だと思ってる目の前の息子に
『雄太は・・・俺の・・・スターなんだから』
ジーンときた
アルツハイマー型認知症の重さと、家族の苛酷さも伝わりつつも、明るく前向きなストーリーになっていて、
全てを忘れゆくとしても、病気を患う父も息子も母も、そのまわりの人たちも優しくおおらかで、その過ごし方が大事なんだとしっかり伝わった
とても心温まるいい作品
そんな作品だった
また
寺尾聰さんの明るく優しい歌声が素晴らしかった
2016年にイギリスでアルツハイマー型認知症を患った男性。その息子が車の中で父が歌う姿を撮影した動画をアップしたところ、話題を呼んで再生回数6000万回を超えた
それをきっかけにこの男性は80歳でCDデビューを果たしたという奇跡の実話がベースになっているとのこと
まさに奇跡だと思う
自分がどういうタイプの老人になるのか
アルツハイマーという病気にどう向き合っていくのか
避けては通れないかもしれないことに
少しでも知っておきたい
そんな気持ちで鑑賞しました
程々に泣けて、しっかりした役者を揃えていたので見応えある映画でした
イギリスの実話を元にしている。
監督は小泉徳宏。前作の「線は、僕を描く」で初めて見て手堅い演出をしていたので、気になり鑑賞。
程々に泣ける普通にいい映画でした。しっかりした役者を揃えていたので見応えはある。
松坂桃李はなんでもできるね。あと松坂慶子は、いつもながら柔らかい雰囲気がよかった。彼女は若い頃より年取ってからの方が、味わい深くて好きな役者になった。
おっと、寺尾聰も誉めておかないと。まあ普通によかった。彼がいなければ、あの味のある歌声は聞けなかった。それとディーン・フジオカが、下手な歌でいい味を出していた!
話も違和感がなかったけれど、最後にコンサートのような大きな舞台を用意しないと終われなかったのかな?と思った。
もっと日常的なふれあいなどで、たとえば、CDデビューしてからの話など(イギリスの実話はデビューしている)、いい着地点があれば、もっといい映画になったのでは?と思う。
家族の大切さを思い出す作品
歌手に成り損ねた父親が認知症を発症してしまう。重いテーマなのに暗く成らないのは作品全体に流れている寺尾聰さんの歌声。
余りに上手くて、歌手に成り損ねた…設定に説得力が加わる。認知症が進み家族の苦しみ、葛藤…。変わっていく父親と寄り添っていくと決意した息子と妻。大切な人と観て欲しい映画です。
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