「うーん、今の時代の愛の物語をつくろうとした心意気は買うが、中身がこんなにとっ散らかっていてはね。」その花は夜に咲く あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
うーん、今の時代の愛の物語をつくろうとした心意気は買うが、中身がこんなにとっ散らかっていてはね。
皆さんに観て欲しい作品はなるべくネタバラしは避けるんだけど、これはちょっとオススメできない。オススメできない説明をするためにはネタばらしが必要になるのでご了解いただきたい。
同じ街で育った幼なじみとナムとサンの愛の物語である。サンの方がトランスジェンダー(M to F)であるところがこの作品の最大のミソで大体、三つの段落に分けられる。
愛し合う二人は結婚するが、サンはどうしても性器の適合化手術を受けたい、そのためには大きな費用が必要となる、そこでサンはパトロンをつくって身を任せようとするし、ナムは同じ人物を通じて地下格闘技の世界に入る。(このパトロンさんは日本人俳優が演じています)
ここまでが第一段階。それぞれの身の上がメリハリなくダラダラ見せられるのでここまでで結構、飽きてきてしまう。
そして第二段落。ナムは舟で売春している少女の娼婦ミミのところに通って彼女を妊娠させてしまう。サンはミミと生まれる子どもを引き取る決意をして三人で暮らし始める。ここではサンの心の動きをどう表現するか作品最大のヤマだと思う(あり得ない設定なだけに)ところが脚本、演出ともにグズグズの上にサンを演ずる新人俳優さんの演技も追いつかず何だかわけの分からない方向に話は進んでいく。
第三段階は、海に三人が遊びに行き、その帰路、事件に巻き込まれる。ナムが人を殺してしまい裁判となる。その始終が描かれるのだが、強引な転調と収拾のつかないエンディングで観客は戸惑うばかりである。(ベトナムの裁判所は刑事も民事も一緒くたなのか?そんなことはないだろう)
要するに、あまりにもとっ散らかってしまい肝心の愛の物語はどこかに行ってしまった。
尺を大幅に切り、第二、第三段階もカットして、第一段階中心にフィジカルに彼らの愛を捉えていけばよい作品になったかも。でもそれって現状からあまりにも離れているので無理な注文だしなんでこちらが創作しなきりゃならん。