「生みの毒父よりも育ての慈父」スーパーマン sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
生みの毒父よりも育ての慈父
ヒーロー映画の王道クリストファー・リーヴ版と比較すると、いろいろ不満が残ることも分かります。
でも今回の新装スーパーマンは全く別の映画なのです(テーマ曲やリーヴの息子がリポーター役で出ているなどオマージュはあるものの)。
そうして観ることで私は結構楽しめました。
登場人物の多くに現代人の苦悩が描かれます。
ヒロイン レインはカッコいいのに自己肯定感が低い。
宿敵ルーサーは見た目は冷徹な拝金主義者のようで、実はその原動力がスーパーマンへの嫉妬と憧れだったことが最後の涙で分かります。
超人のエンジニアは「折角人間を捨てたのに」と、強い承認欲求に悩み、ミスター・テリフィックは実力はすごいのに、無理解な上司に不満たらたらの会社員みたい。
そしてやはりスーパーマン、真面目で正義感が強くとってもいい人。でもすぐ激情するし、ちょっと面倒臭い、一言多く地雷も踏む。スーパーマンを人間臭く描きすぎたので、優しくて鈍くさいクラーク・ケントを描く余地がなくなってしまった感じです。
そんなスーパーマンが自身のアイデンティティに悩みます。生みの親が実は覇権主義者だったというくだりはなかなか凝った設定(あの壊れたホログラムの修復はフェイクだろうと思ったが実はファクトだったのね)。
一方で育ての親の言葉に救われます「人生の選択と実行はお前次第。お前を誇りに思う」。「海の上のピアニスト」のトランペッター プルイット・テイラー・ヴィンス、随分くたびれちゃったけどいい俳優さんですね。
でも最後に言いたい。協力してくれる仲間もできたのだから、ビルの壁は少々ずれていてもいいので、今すぐに東に飛んで空から食糧を供給して下さい。今すぐです。是非お願いします!