劇場公開日 2025年7月11日

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「ジェームズ・ガンだから余韻はない(笑)!でも高揚感はいっぱいある!」スーパーマン 盟吉津堂さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 ジェームズ・ガンだから余韻はない(笑)!でも高揚感はいっぱいある!

2025年8月8日
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鑑賞方法:映画館

笑える

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記憶がおぼろげなのだけれど、生まれて初めて映画館で観た洋画が『スーパーマン』(1978)だった(と、思う)。
当時自分は小学校低学年で、親に連れられて観に行った。もちろん字幕だったのでストーリーはほとんど分からなかったのだけど、自分は今スゴイものを観ているのだと感じ、スーパーマンの勇姿に目が釘付けになったことを覚えている。

少し成長して、生まれて初めて自分で小遣いをはたいて友人と観に行った洋画が『スーパーマン4 最強の敵』だった(と、思う)。
『スーパーマン4』はいろんな意味で底抜け作品であり、スーパーマン映画の黒歴史としてなかったことにされてしまっているけれど(笑)、友人とモヤモヤしながら帰路についたことも含めて自分の中では思い出深い作品である。

以来、スーパーマン映画は自分の中で特別なものであり続けている。

クリストファー・リーヴ演じるスーパーマンがやっぱり思い出も含めて決定版として自分の中で不動の地位にあるのは当然として、一発屋とはいえ原点回帰だった『スーパーマン リターンズ』も愛着があるし、赤パン姿をやめたヘンリー・カヴィル版も、大人の鑑賞に耐えうるハードでシリアスな『ウォッチメン』的なヒーロー像を提示していて存在意義は大きかったと思う。

そして、ついに満を持して(?)、ジェームズ・ガン監督による『スーパーマン』公開である。

そもそもジェームズ・ガンが本来持っているバッドテイストやひねくれテイストとスーパーマンのような生真面目まっすぐヒーローは相性がそんなにいいとは思えないのだけど、少なくともジェームズ・ガンはスーパーマンをまっすぐに描き切ったと思う。

ただ、そのぶん彼本来のバッドテイストやひねくれテイストの部分はジャスティス・ギャングというヒーロー仲間たちが引き受けることになり、色々と悩み事の多い生真面目スーパーマンよりもジャスティス・ギャングの方が活き活きしている、という変な映画になってしまったということは言えるかもしれない(笑)。

レックス・ルーサーがなんだかヒステリックで情緒不安定(その上かなり残虐)だったり、スーパーマンの実の両親がヤバい発言をしたり、自分の中でモヤモヤする部分も結構あった。
ニコラス・ホルトは思わず引き込まれてしまう迫真の演技をしていて、キャスティングとしては成功だったと思うけれど、悪の天才ルーサーにはもうちょっとどっしり構えてて欲しかった気もする。

スーパーマンの実の両親の問題発言も、親の世代が(白人優位などの)差別的な思想を持っていたとしても子供の世代はそんなものに囚われずお互いに手を取り合っていける、というメッセージなのかも知れない。
でも、正直なところスーパーマンの両親がこんな発言するの?とドン引きしてしまう。
まあ、あくまで無理やり復元したデータ上の発言なので怪しげではあるのだけど(でも、ミスター・テリフィックはフェイクではないと言ってた。う〜ん)。

スーパーマンがSNS上で危険な他所者扱いされる描写や、スーパーマンが他国の軍事侵攻を食い止めたせいで逮捕されてしまう描写など、アメリカが抱える移民問題や紛争介入問題への批判と取れるような部分もあり、政治的な映画だという反発もあるようだ。
スーパーマンはアメリカを代表するキャラクターだから、アメリカを批判するようなメッセージを入れればカチンと来る一部の人たちもいるんだろうな、とは思う。

でも、スーパーマンはアメリカを代表するヒーローではあるけれど「アメリカ人だけでなく、世界中の危機に陥っている人を一人残らず助けようとする生真面目でまっすぐなヒーロー」なのである。
ある意味、無茶苦茶なヒーローなのである。
あまりにも牧歌的な綺麗事であり、そんなことできるわけがないのである。
それでもスーパーマンはそんな綺麗事を貫こうと悩みながらも涙ぐましい努力をするのである。

複雑化した現代社会において、スーパーマンのような牧歌的な綺麗事ヒーローはもはや存在する余地はないのかもしれない。

でも、ジェームズ・ガンは複雑化した現代社会から目を背けることなく、彼なりのやり方でスーパーマンという赤パンを履いた牧歌的なヒーローを描き切ったと思う。

そして、それはクリストファー・リーヴ版初期シリーズの後を継いだブライアン・シンガーやザック・スナイダーも同じであり、彼らもスーパーマンという存在が、複雑化した現代社会では牧歌的すぎる、綺麗事すぎるということを分かった上で、そこから目を背けることなく彼らなりのやり方で新しいスーパーマン像を描いてみせたのである。

これから先も様々な監督によって様々なスーパーマンが描かれていくと思うけれど、(そしてその度に、前の作品はマルチバースの話にされてしまうのかもしれないけれど笑)、スーパーマン映画は廃れることなく存在し続けてほしい。

スーパーマンみたいな牧歌的なヒーローはもうオワコンでしょ、と映画プロデューサーが鼻で笑ったりするような、そんな世界にはなってほしくないと切に願う。

本作は監督がジェームズ・ガンだから観終わった後にしみじみとした余韻を味わうとか、そういうのは全然ない(笑)!

でも高揚感はいっぱいある!
あわや人命が失われそうな危機一髪の瞬間に駆けつけるスーパーマン(とジャスティスギャング)!
巨大怪獣やスーパーヴィランと壮絶なバトルを繰り広げるスーパーマン(とジャスティスギャング)!
アメコミヒーロー映画の醍醐味はプロレスチックなド派手なヒーローたちによる「ド派手な人助け」と「ド派手なバトル」だと思うのだけど、その両方をお腹いっぱい堪能できる快作である。

本作は脈絡もなく巨大怪獣が出てきて暴れたり、バトルが格闘ゲーム感覚だったりして子供向け要素が強い。まあ、赤パン姿でケープを翻して空を飛ぶヒーローが子供向けでなくてどうする、って話だけれど(笑)。
そもそも、天才アラン・ムーアの『ウォッチメン』や鬼才フランク・ミラーの『バットマン:ダークナイト・リターンズ』が出版されるまではアメコミは子供向け以外の何者でもなかったのである。
少なくともジェームズ・ガンは子供騙しの作品は作っていない。
彼なりのクセの強いやり方ではあるけれど持てる力を出し切ってスーパーマンという子供向けヒーローに真摯に取り組んだと思う。

あとはなんといっても自分にとって思い出深い『スーパーマン4 最強の敵』へのオマージュ(?)的なヴィランが登場してくれたことが嬉しかった!
なけなしの小遣いをはたいて映画館まで行ってモヤモヤしながら帰ってきた子供の頃の自分が今ようやく報われた気がする(笑)。

自分にとって世界最高の映画音楽であるジョン・ウィリアムズのテーマ曲のアレンジがメチャクチャ良かったので⭐︎半分プラス!

盟吉津堂
みかずきさんのコメント
2025年8月14日

共感、フォロー、コメントありがとうございます
私の方からもフォローさせて頂きました
私のレビューを評価して頂きありがとうございます
私も七人の侍は大好きな作品です

私、2015年から本格的に映画レビューを書き始め、キネマ旬報、kinenote、Yahoo検索などに投稿しています。作品を肯定的に捉えたレビューが持ち味です。
宜しくお願いします。

本作、仰る様に自国第一主義を超えた人間愛を持ったスーパーマンの優しさが際立っていました。恋愛をすることが強い人間愛に昇華することを実感できる作品でした。

みかずき
bionさんのコメント
2025年8月11日

コメントありがとうございます。
現実世界にあまりにも大きな問題がありすぎるので、怪獣が登場する非現実世界でちょうどいいと思います。
この辺のガン監督のバランス感覚が好きです。

bion
えーじさんのコメント
2025年8月9日

盟吉津堂さん 共感&コメントありがとうございます♪
"スーパーマン愛"が全身に伝わって来ます‼︎
盟吉津堂さんからの真摯なコメント大好きです、と言うか大好物です。映画愛に溢れていますね!
私は多分、ガン監督が合わないと思います。だっていっその事、ノーランのスーパーマンが観たいと思ってしまう方なので…ごめんなさい。。

えーじ
活動写真愛好家さんのコメント
2025年8月9日

盟吉津堂さん、コメントありがとうございます😊
新しいDCユニバースはスーパーマン、スーパーガール、バットマン、ワンダーウーマンが中心になるらしいですね‼️そこに今回のジャスティスギャングの面々も加わってくると思いますので楽しみですね‼️私的にはグリーンランタンが悪党面なのが気になりますけど・・・

活動写真愛好家
たなかなかなかさんのコメント
2025年8月8日

盟吉津堂さん、コメントありがとうございます♪
『ドラゴンボール』との共通点についてはかなり牽強付会だったなと思っていたのですが、そこを褒めていただけて大変嬉しく思います🙌

ジャスティス・ギャングの面々はめちゃくちゃ魅力的でしたよね〜!彼らの今後の活躍が楽しみです☆

たなかなかなか
近大さんのコメント
2025年8月8日

コメントありがとうございます。
1978年『スーパーマン』以前のコミックヒーロー映画は1時間くらいの中編のチープな特撮番組のようだったらしいですが、
『スーパーマン』が予算を掛けた大作となり、主演のヒーローに新人、脇を実力派やベテラン、スタッフも一流揃い。
あの『スーパーマン』の成功があったからこそ、ヒーロー映画は今日も作られ続けていると思っています。

近大
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