「どうしようもないこじらせ秀才の涙に心掴まれる」スーパーマン 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
どうしようもないこじらせ秀才の涙に心掴まれる
そりゃあどんな映画も賛否があるものだと思うのだが、ネットで自動的に流れてくる批判的な意見が、わりとスーパーマン=クリストファー・リーヴ世代の人たちが「こんなのスーパーマンじゃない!」と怒っているケースが多くて、クリストファー・リーヴの存在感の大きさやオールドファンの愛情の深さはわかりながらも、作り手も演者も変わってリスタートしてるんだけどなとは思ってしまう。
にしてもスーパーマンというヒーロー中でも特にアイコニックな存在を現実の俳優が演じるにあたって、毎度毎度よくもまあこんなにスーパーマンぽい人が見つかるものだと感心しきりで、今までで一番等身大で親しみやすいながらもちゃんとスーパーマンだったデヴィッド・コレンスウェットが当たり役、脇キャラに至るまでちゃんと好感を勝ち得る作りになっているのも良い。
弱き民が救世主を求める、みたいな描写には鼻白む部分はあるのだが、露悪趣味があるはずのジェームズ・ガンが、スーパーマンというものを善良さの象徴として描ききったスタンスは素晴らしかったと思う。
しかし一番心を揺さぶられたのは、ニコラス・ホルト扮するレックス・ルーサーが野望が砕けてガチ涙を流すシーンだった。この映画のルーサーは、ヘイトと拝金主義をこじらせたどうしようもない男だが、自分はヘイトの根本には恐怖があると思っているので、スーパーマンに圧倒されて排除するしかないと思い詰める心情は(反対はするけど)理解できるし、そのために人智を尽くして勝利を確信していたこじらせ秀才の悔し涙は、とても人間的で感動すら覚えるものだった。