劇場公開日 2025年7月11日

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「移民のスーパーマンと排外主義の市民たち」スーパーマン おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 移民のスーパーマンと排外主義の市民たち

2025年7月17日
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『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』といった傑作を連発するジェームズ・ガン監督の最新作だと思って鑑賞したため、期待値を上げすぎてしまったかもしれない。
正直なところ、十分面白かったが、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』に比べると、そこまでではなかった。

説教くさいのは気になった。
個人的には、この映画が提示するメッセージは当然のことばかりで新鮮味はなかったものの、今の社会を見れば、理解できていない人も多いだろうから、映画の中でわざわざ語る価値はあると思う。
世界中で注目される「スーパーマン」というメジャータイトルの中にそれらのメッセージを組み込もうとするのが凄いと思った。

この映画は簡単に言えば、強き者のあるべき姿を描いた作品だと感じた。
富裕層が自己中心的になり富を独占した結果、世界の総資産の半分を上位1%の超富裕層が占め、貧困に苦しむ人が後を絶たない現代社会において、非常に重要なメッセージを投げかけていると思う。

そもそもスーパーマンはなぜ人助けをするのか?
それは幼い頃から親にそう言い聞かせられてきたから。
ここから、幼少期の親の育て方が子どもの人格形成に極めて重要であることがわかる。
しかし、映画の途中で、スーパーマンが親からのメッセージを誤解していたことが判明する。
もし最初から親のメッセージを正確に理解していたら、全く逆の人格になっていたかもしれない。
それでも、大人になってその真意を知ったスーパーマンは、そのメッセージを受け入れることを拒否。
この映画の中のセリフで「親が子どもに与えるべきは目的ではなく手段」というものが出てくる。
世の中には子どもの将来像を勝手に決めつけてしまう親も少なくないように感じる。
親がやるべきことは、子どもに多くの経験をさせ、得意なものを見つけさせ、大人になったときに子どもが自ら選択する道を尊重することだと自分は考えているので、今作のこの描かれ方には納得。

スーパーマンが実は「移民」であるという視点も非常に重要。
ガザ地区を思わせる場所への攻撃に抵抗するスーパーマンに対し、それが不都合なIT長者がSNS上で大量のネガティブキャンペーンを展開し、排外主義に陥った市民たちがスーパーマンを追い出そうとする構図は、現代社会の排外主義に通じるものがあり、非常に現実味を帯びていた。
今まさに参議院選挙の選挙活動が行われているが、まるでそっくりで困る。
スーパーマンが本作の諸悪の根源に向かって最後に言い放つごく短い言葉が、排外主義に対する的確な反論になっていて、監督のメッセージ性を強く感じた。

本作の敵はスーパーマンより強いということが名前で分かりやすく表現されていたが、日本人にはお馴染みすぎる名前でそれがどこか滑稽だった。
スーパーマンの戦い方が完璧に分析されていて、どんな攻撃にも最善の行動ができるという戦闘スタイルは、まるで将棋AIを見ているようだった。

SNSにスーパーマンへのアンチコメントを大量の猿が一斉に書き込みしている場面は、「自民党ネットサポーターズクラブ」を彷彿。

スーパーマン以外のヒーローが複数同時に出てきた時は、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』が頭をよぎり、勝手にすぐにやられてしまうものだと決めつけてしまった。

夜、マンションの一室でクラーク・ケントとロイス・レインが見つめ合う中、ガラス張りの窓の外では巨大生物とヒーローたちが戦っていて、それがこの世界の日常なんだなと感じつつ、巨大ハンマーのようなもので敵をぴょこぴょこ叩いているのが滑稽で、思わず笑ってしまった。

スーパーマンが弱点であるクリプトナイトによって絶体絶命のピンチを迎え、「これはどうすることもできないのでは?」と思って観ていたが、あまりに素敵な解決方法に思わず落涙してしまった。

命の危機にある人々がスーパーマンに助けを呼ぶが、スーパーマン自身は他の使命があるため現場に急行できず、代わりに他のヒーローたちが救いにいく場面。
最初は「スーパーマンが呼ばれているのに本人が助けに行かなくていいのか?」なんて思ったが、よくよく考えてみれば、困っている人がいれば誰が助けたっていいわけで、「目の前に困っている人がいたら四の五の言わずさっさと動け」というメッセージに感じられた。

おきらく
トミーさんのコメント
2025年7月17日

スーパーマンにちょっと聞いてみたい。リスと人間同時に危機の場合、どっちを優先する?リーブ版第一作でも描かれたテーマですが。

トミー
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