「未熟な『僕ら』のスーパーマン」スーパーマン くめいさんの映画レビュー(感想・評価)
未熟な『僕ら』のスーパーマン
新生DCUの劇場映画一作目となる本作。レビューを書き始めるとDC映画のこれまでの歴史から語ってしまうオタクなので投稿に苦戦してしまった。本編に倣い、思い切って割愛する。
映画は最高。スーパーマンは『最強の超人だけどピュアで善人』。ヘンリー・カヴィルのクールで完璧すぎるイメージも良かったが、今作--デヴィット・コンスレットの若く、未熟さを感じるバージョンも良い。赤いパンツも、ダサくて滑稽というより一種温かみのあるデザインとして落ち着いているように感じられた。
ストーリーとアクションのバランスだが、今作は結構アクション多め。監督のジェームズ・ガンはインタビューにて『スーパーマンやバットマンのオリジンは描かない。他のみんながやっていてお決まりになっているし、観たくないからね』というような発言をしていたと思うが、逆に言えばこの映画は『観たい』というようなシーンでできている。
『スーパーマンと巨大怪獣が激突!? そんなん観たいじゃん!』
みたいなノリ。ロイスとの痴話喧嘩もあるが、くどくない適度に抑えられている。ここからDC映画に入る層もいれば、子供が観ることだってある。スーパーマンの人間としての弱さを描くのと同じくらい、単純なアクションに振っている感じだ。アクションは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』流というか、軽快なロックと迫力あるカメラ回しで楽しく観られる。
確かにザック・スナイダー版のような重厚なドラマではないが、今作を観た子供が20年後くらいに『昔観たスーパーマンの映画で、話は覚えてないんだけどスーパーマンが怪獣と戦いつつ女の子とかリスとか助けるシーンが格好良かった』とか言ってくれれば、ジェームズ・ガンの、ヒーロー映画の大勝利なのだ。
ヒーロー・チームはスーパーマン、グリーンランタン、ミスター・テリフィックそれぞれの考え方やスタイルをうまく使い分けているが、ホークガールは少し地味な印象。ただし悪役の始末をきっぱり決断するシーンなどがスーパーマンとの違いとしてはっきり出ている(侵略戦争を止めるのはルーサー(アメリカ)が示唆した不当な戦争だから、で筋が通るかもしれないけど、一国の元首を殺してしまうのはさすがに問題なのでは? 後の伏線なのかな)。一方、個人的にはクリプト(スーパー・ドッグ)が少しノイズに感じた。可愛いし犬は好きだが、少しじゃれているシーンが長すぎた気もする。
そのほかのキャラも魅力的で、ディリー・プラネットのチーフですらもっと彼のことを知りたくなったほど。
しかし最後にルーサーが涙を流したのは意外だった。アドリブだったのか、と思うくらい唐突だったが、もしかしたら心が折れたというか、人間としての弱い部分が表れたのかもしれない。その後彼が話すことはないので真意はわからないが、後の再登場につながるシーンであることは間違いないと思う。
スキンヘッドが似合いすぎるニコラス・ホルトがまたスクリーンで観られることを楽しみにしている。
本作に関するレビューは様々、いくつか読んでみたがクリストファー・リーヴ版の根強い人気を感じた。あの作品も名作だが、今作とは製作の前提も社会状況も異なる。『今』作られるべき『私たち』のヒーローとして、デヴィット・コンスレット版もけっして見劣りしていないと思う。
ところで、『ブルービートル』は本当にDCUから外れちゃうんですかね? 良い映画なのに……。