「強さと優しさと明るさと希望を兼ね備えた“S”の帰還」スーパーマン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
強さと優しさと明るさと希望を兼ね備えた“S”の帰還
スーパーマン映画の最高峰はやはり、1978年のリチャード・ドナー監督&クリストファー・リーヴ主演の第1作目である。
これはスーパーマン映画だけではなく、今に続くスーパーヒーロー映画の礎を築いた記念碑的作品でもある。ヒーローアクションとしてだけでなく、ファンタスティックさやロマンチックさも格別。
なので、その後どんなに才ある監督や役者が挑んでも超える事は出来なかった。おそらく本作のジェームズ・ガンでさえも。
ならば、どれだけオマージュとスーパーマン愛を捧げられるか。その点、ジェームズ・ガンは魅せてくれた。
DCEUから新生DCUへ。その第1弾。
スーパーマンも設定もスタッフ/キャストもオールリセット。
となるとスーパーマンは何者で何処から来たのか誕生秘話を描くものだが、この鬼才は同じ事はしない。すでに“知っている”前提で話は始まる。
そもそも今更スーパーマンの設定を何一つ知らないなんて事ないだろうし。『ドラゴンボール』悟空の設定にもなってるし。
即ち今回は…
・スーパーマンの存在はすでに世界中に認知されている。
・スーパーマンとデイリープラネットの記者クラークとして暮らしている。
・もうロイスと付き合っている。
・ロイスはクラークの正体=スーパーマンである事を知っている。
・宿敵ルーサーと幾度も対している。
・ルーサーの陰謀をことごとく挫く!…のではなく、大苦戦…。
何と今回、スーパーマンの敗北シーンから始まる。墜落し、ボロボロに傷付いた姿…。
それだけではない。今回のスーパーマンはあらゆる面に於いて苦境に立たされている。
独裁国の侵攻に介入。その行動が問題視。超人/異星人だから許されるのか…? “あちら”の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でも問われたヒーローの存在意義をいきなり投入。
スーパーマンを支持する声も多いが、SNS上ではアンチ派が圧倒的。醜聞に踊る現代社会をチクリ。
誹謗中傷にさすがのスーパーマンも悩み、声を荒らげる。
さらに追い討ちを掛けたのは、南極の氷の下にある秘密基地に侵入したルーサーによって実の両親からのメッセージが復元。それは耳を疑うものだった…。
こんなにも劣勢が続くスーパーマンは珍しい。今回本当に勝利を掴んだのはやっと最後の最後くらい。
負けが続く弱いスーパーマンなんて見たくなかった…?
ちょっと待って。未熟者の成長が定番ながらエモーショナルに描かれている。それはスーパーマンとて同じ。
だからこそ、クライマックスでルーサーと対した時の台詞が響くのだ。
僕だって人間だ。悩む。落ち込む。朝起きて何がベストか考え、一歩を踏み締める。(←こんなニュアンスだったような…)
『マン・オブ・スティール』でもスーパーマンの内面に踏み込んだが、本作ではもっと、人間味深く。スーパーマンもヒューマンなのだ。
それを体現したのが、デヴィッド・コレンスウェットのフレッシュさと端正な魅力。歴代スーパーマン俳優に全く劣らない。まだ一本だけだが、個人的にはクリストファー・リーヴに次ぐほどドンピシャ。
政府もアンチ派で、そんな政府からスーパーマン退治を受けた今回のルーサーの天才っぷりは別次元レベル。…いや、本当にそうなのだ。
秘密のポータルを開き、“ポケットユニバース”を手中に。他のメタヒューマンや気に食わない者をそこの牢獄に。
改造人間を配下に。全身ナノテク武器のエンジニアも強敵だが、スーパーマンの戦闘スタイルを完コピした胸に“U”の文字の謎のアーマー。その呼び名は何と、ウルトラマン…! ガンのウルトラマン好きは有名で、我が日本のスーパーヒーローも参戦!…と思ったら、ただそう呼ばれてるだけで全くの別人。ちょっと期待してたんだけどね…。
代わりにKAIJUが登場。スーパーマンvsKAIJUは少年的ワクワク。
話が反れてしまったが、とにかく頭がキレる今回のルーサー。
あらゆる陰謀や罠を張り巡らせ、常にスーパーマンの数歩先を打つ。独裁国とも密約。
ルーサーが圧倒的に優勢でスーパーマンがずっと劣勢というのも初めてかもしれない。いや、これが本来のルーサーの実力/脅威なのだ。
だから最後、この憎々しいルーサーを挫いた時は痛快。
最後敗れたルーサーは絶叫するのではなく、悔し涙を流す。ベジータだってフリーザに絶望した時涙を流した。
これが印象的。歴代“おっさん”ルーサーと比べ比較的若いニコラス・ホルトだからこそ成せる業であり、巧さも光る。
苦境のスーパーマンだが、孤立無援ではない。
スーパーマンと記者としてインタビュー中口論にもなるけど、ロイスの支えと存在。時にはピンチの助けにも。演じたレイチェル・ブロズナハン、何処かで見たと思ったら、『アマチュア』でラミ・マレックの殺された奥さん役。
デイリープラネットの職場仲間も個性的。
スーパーマン以外のスーパーヒーローの存在も認知されている世界。“ジャスティス・ギャング”なるヒーローチームも登場。緑のタイツ姿じゃないが口の悪い俺様新生グリーン・ランタンやヴィランにしか見えないホークガール、リーダーの頭脳派ミスター・テリフィックはスーパーマンといいコンビになれそう…?
ここに最後、ポケットユニバース牢獄に囚われていたメタモルフォも加わり、新生DCUの“ニュー・ジャスティス・リーグ”の伏線…?
そして忘れちゃいけない“スーパーワン”ことクリプト。実写初登場。可愛いけど、なかなかな困ったちゃん。だけどご主人様のピンチに駆け付け人懐こく、やっぱり可愛い。最後ルーサーをボコボコにするのは痛快だけど、一応普通の人間だから手加減してあげてね。
ジェームズ・ガンが『スーパーマン』を撮ると聞いた時、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のノリで明るい娯楽作になるかと思ったら、『マン・オブ・スティール』ほどではないが前半は意外にもシリアス。スーパーマンの苦悩を綴る。
それを乗り越え、最後は爽快感溢れるカタルシス。
宇宙のならず者たちを大暴れさせただけあって、アクションやスケールは迫力たっぷり。ザック・スナイダーの重厚アクションにも負けない。
ガン流ユーモアは勿論。
オマージュも込めて。今回スーパーマンの登場や活躍シーンには必ず、ジョン・ウィリアムズの名曲のアレンジが掛かる。やっぱりスーパーマンと言ったら、あのテーマ曲。フル尺で聞きたかったくらい。
ジェームズ・ガンから溢れんばかりのスーパーマンLOVE。本作は“スーパーガン”でもあった。
クライマックス、独裁国に侵攻された国の人々や子供が“S”の旗を上げるシーンは胸打った。
スーパーマンが初めて我々の前に登場した時から、そして今も、“S”は象徴。
強さ、優しさ、明るさ、希望…。
それらを兼ね備えた僕たちのスーパーマンが還ってきた。
近代さんのおっしゃる通り、1978年の『スーパーマン』はその後のスーパーヒーロー映画の礎となった作品ですよね!
本作はクリストファー・リーヴ版への目配せがあちこちに効いていてファンには嬉しい1本でした!
新生DCUの今後が楽しみですね!
今回スーパーマンの登場や活躍シーンには必ず、ジョン・ウィリアムズの名曲のアレンジが掛かる。やっぱりスーパーマンと言ったら、あのテーマ曲。フル尺で聞きたかったくらい。
ジェームズ・ガンから溢れんばかりのスーパーマンLOVE。本作は“スーパーガン”でもあった。
↑
ジョン・ウィリアムズのスーパーマン音楽、
いいですよねぇ〜!!
自分なんて、もう刷り込まれていますので。
^_^
あの曲流れたら、
気分アガるぅ〜〜


