「alternative facts/もう一つの事実」スーパーマン ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
alternative facts/もう一つの事実
『ロイス・レイン( レイチェル・ブロズナハン)』は
既に『クラーク・ケント(デヴィッド・コレンスウェット)』と
デキてしまっている。
なので、その馴れ初めが語られることは無い。
『レックス・ルーサー(ニコラス・ホルト)』も同様、
はなっから仇敵として現れる。
二人の因縁は描かれず、
これも過去作を参照してくれと、とのことだろう。
『スーパーマン』が珍しく「KAIJYU」と戦う。
「カプセル怪獣 ミクラス」と「スティッチ」を融合させたような
微妙な造形。
でも頭部は「ケムラー」に似ているかしら(笑)。
が、この「KAIJYU」には他のスーパーヒローも共闘し立ち向かう。
本作はあくまでも「DCユニバース」の世界観の中との
位置づけを象徴するエピソード。
犬を飼っている設定にも驚く。
『クリプト』と名付けられた「スーパードッグ」は
躾はなっていないし、血の巡りはかなり悪そう。
ただ、その無邪気な振る舞いが、時として主人公を窮地から救う。
『ベンヤミン・ネタニヤフ』を彷彿とさせる
「ボラビア共和国」の大統領『バジル・グルコス』は利権のため隣国へ侵攻する。
被害国の市民を守るため、
『スーパーマン』はこの紛争に介入する。
これも目新しい展開。
「ボラビア共和国」の裏では『レックス・ルーサー』が暗躍。
メディア対応に秀でた彼は、
真偽あやふやな映像でマスコミとSNSを使い、
『スーパーマン』を攻撃する。
今までは人々の尊崇の的だったのに、
一転し異星人のよそ者として指弾される姿は、
世界中で起きている排外主義のうねりを見るかのよう。
彼等がいなければ生活の基盤すら成立しないのに、
一面だけを捉えたポピュリストの言説に諸手を挙げる。
取り上げるメディア側の変節は何時ものこと。
のちのちあっさりと、手のひらを反すのも。
世間の非難の目だけでなく、
自己のアイデンティティにも直面し懊悩する『クラーク・ケント』。
それを救うのは、血の繋がっていない育ての親の愛情、との展開は
安直ではあるものの、一面の真理かもしれない。
新奇な設定に
今を予見したかのような構成。
撮影は一年以上前に終了しているハズで、
とりわけ後者は『ジェームズ・ガン』の先見性をうかがわせる。
とは言え、肝心の『スーパーマン』の活躍に外連味が薄い。
身体性が伴っておらず、いたずらに派手な音が鳴り響くばかりで、
驚くような展開も見られない。
観客は何を楽しみに来ているのか、を
再考すべきだろう。