「ガンの作風にマッチするかどうか」スーパーマン ふぇるさんの映画レビュー(感想・評価)
ガンの作風にマッチするかどうか
ジェームズ・ガンの作風として本筋とは関係のないところに小ネタを挟んだり、キモカワイイ奇妙なモンスターを出すようなところがある。これまでのガーディアンズやピースメーカーなどは作風にマッチしていて成功した例だろう。しかし、グロテスクな部分を執拗にみせたり、面白おかしくするような部分もある。スーサイド・スクワッドではそれらが少し鼻についた部分でもある。
それらのガンの作風とスーパーマンとはあまりマッチしていないように思える。クリプトが登場するという時点でそれを察するべきだったのかもしれない。
本作はかなりのコメディ寄りだ。スーパーマンがコメディとして扱われるのが悪いわけではないが、ちょくちょく挟まれるネタはストーリーの進行を阻害し、テンポを悪くしている。クラークがこれまで以上に感情が増えたように感じるが、そのためにコメディ色が強くなってしまったのだろうか。
またクリプトという存在が憎くなるほどに彼が登場するシーンはただ犬がじゃれているような全く意味のないものになっている。これは二作目のガーディアンズのベビーグルートと同じで重要な存在でもなく、ただの客寄せパンダである。
これまで何度も作られている作品なだけに冒頭の部分を飛ばしたのは良いのかもしれないが、その割には印象に残るようなストーリーではない。古典的ではあるがスーパーマンが地球にくるところからやっていた方がよくなっていたかもしれない。スナイダー版はそこらへんはまだマシに見える。
評価の良くないスナイダー版だが、本作と共通する点でルーサーの存在感がある。アイゼンバーグのルーサーとホルトのルーサー、どちらも素晴らしく、スーパーマン以上の存在感を出している。
本作を観ている最中でも期待が持てなくなっていたが、ラストでさらに不安になる要素がある。それはスーパーガールだ。スーパーガールの新作が控えているが、本作のラストに登場した彼女は言葉遣いは悪く、言い方は悪いがジャンキーのようだ。彼女の軽さをみると「スーパーガール」もコメディ色が強くなるのではないかと想像する。
ドクター・ストレンジでサム・ライミが好き放題やったようにガンは本作でそれをやった感じだ。
監督の作風が好きなのか作品自体が好きなのかは別の話になる。それがマッチしていれば傑作になるがミスマッチだとただの自己満足だろう。
本作でジェームズ・ガンDCユニバースがスタートする形だが、今後の展開には少々不安要素が付きまといそうだ。