「ヒーロー映画のお手本のような作品で、観たいものがぎっしりと詰まっている宝石箱だった」スーパーマン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒーロー映画のお手本のような作品で、観たいものがぎっしりと詰まっている宝石箱だった
2025.7.11 字幕 イオンシネマ久御山
2025年のアメリカ映画(129分、G)
原作はグラント・モリソン&フランク・クワントリーの『オールスター・スーパーマン』
某国の紛争に加わったスーパーマンが窮地に陥る様子を描いたアクション映画
監督&脚本はジェームズ・ガン
物語は、スーパーマン(デヴィッド・コレンスウェット)が地球に来てからヒーローとなるまで、さらに直近の戦いの顛末が字幕表示されて始まる
謎のメタヒューマン・ハンマーに苦戦するスーパーマンは、氷の大地に投げ飛ばされ、瀕死の重傷を負ってしまう
犬のクリプトに「孤独の要塞」に連れ帰ってもらったスーパーマンは、そこで奉仕型ロボットたちのケアを受け、黄色い太陽を浴びることで身体の回復を試みた
その間に父ジョー=エル(ブラッドリー・クーパー)と母ララ(アンジェラ・サラフィアン)の残したメッセージで癒されたスーパーマンは、再びハンマーと戦うためにメトロポリスに戻ることになった
スーパーマンを執拗に追うレックス・コープの代表ルーサー(ニコラス・ホルト)は、部下のエンジニア(マリア・ガブリエラ・デ・ファリア)にスーパーマンの探索を命じたが、寸前のところで「孤独の要塞」を見失ってしまった
ルーサーは独自に開発したメタヒューマンや怪物などを使ってスーパーマンに戦いを挑む一方で、紛争地域のボラビア国に多額の武器援助を行なっていた
だが、ボラビア国の大統領バジル・グルコス(Zlatko Buric)は関係を否定し、メトロポリスで暴れているハンマーは無関係だと主張していた
その後、戦いが一段落し、スーパーマンはクラーク・ケントとして日常に戻っていく
彼はデイリー・プラネット社の記者として働いていて、スーパーマンへの独自取材を行うことでスクープを得ていた
同僚で恋人のロイス・レイン(レイチェル・ブロズナハン)だけは彼の正体を知っていて、編集長のペリー(ウェンデル・ピアース)、フォトジャーナリストのジミー(スカイラー・ギソンド)たちはそれを知らない
だが、ジミーには別ルートの情報源があり、それが元カノのイヴ(サラ・サンパイオ)で、彼女は現在のルーサーの恋人だったのである
映画は、スーパーマンの両親のメッセージの破損した後半部分がエンジニアによって復元され、それがニュースとなってメトロポリスを駆け回る様子が描かれていく
前半部分は「地球人のために尽くせ」というものだったが、後半は「人類を油断させて取り込んで、遺伝子を残して地球を支配しろ」というもので、スーパーマンは「地球にとっての侵略者だった」というニュースが流れてしまう
市民たちに罵詈雑言を浴びせられ、SNS上でも炎上は展開しまくる中、スーパーマンと共闘体制を築いていたジャスティス・ギャングたちも距離を取り始めていく
やがて、拘束されてしまったスーパーマンは、政府から依頼を受けたルーサーの手によって、ポケットユニバースという別次元の牢獄に入れられてしまった
そこには彼が開発したエレメントマン(アンソニー・キャリガン)がいて、彼は地球上には存在しないスーパーマンの弱点であるクリプトナイトを作り出してしまう
それによって身動きを封じられたスーパーマンは絶対絶命のピンチに陥ってしまうのである
物語は、それでもスーパーマンを信じようとする人々と、ルーサーの裏の顔に迫るロイスが描かれ、彼女はジャスティス・ギャングに助けを求めた
グリーンランタン(ネイサン・フィりオン)は政府と対立するつもりはなく、ホークガール(イザベラ・メルセード)も興味はなかった
だが、テリフィック(エディ・ガデギ)だけはロイスに同調し、二人でスーパーマンの痕跡を追うことになった
そして、二人はポータルを見つけ出し、スーパーマンが囚われているポケット・ユニバースを見つけ出すのである
これまでの『スーパーマン』を観ていなくても大丈夫だが、キャラの説明とかは一切ないので、ある程度知っている方が楽しめる
小ネタのように色んなキャラが登場するので、ジャスティスリーグとか、スーサイドスクワットなどを知っていた方が良いかもしれない
本作の見どころは「かつてのヒーロー映画への回帰」というところで、いわゆる「地球上で地球人を守る身近なヒーロー」が描かれている
ヒーローならではの苦悩もあり、両親から授かった使命が揺らぐシーンもあるものの、「人の評価は行動で示される」というように、「どんな出自だろうが選ぶ道こそが自分が何者であるかを決める」というメッセージがあった
それによって、揺れ動いたスーパーマンも自分を取り戻し、真のスーパーマンとして生まれ変わるのである
とにかく詰め込みが半端ない作品で、テンポも驚くほどに早いのでサクサクと話が進んでいく
クリプトとイブが良い役回りをしていて、天才がおバカさんにしてやられる様子が描かれていく
フェイクニュースで踊らされる市民もおバカさんの部類だが、F5アタッカーおよびSNS工作員が猿だったのは絶妙のセンスだったと思う
それ以外にも微妙にコミカルな部分があり、ノリツッコミが満載の作品なので、飽きる瞬間がないという印象だった
アクションシーンもスーパーマンだけでなく、ジャスティスギャングも豊富で、さらにエレメントマンが仲間に加わる過程も涙腺崩壊ものだった
とにかく、久々にわかりやすいヒーロー映画を観れたという満足感があって、原点回帰こそがエンターテイメントの真髄なんだな、と思った
いずれにせよ、ヒーローへの足枷が両親の想いであったり、それを切り取った部分で解釈していく怖さもあるし、それが呪いになっている部分も描かれていた
それを打破するのが「育ての親」というところに監督の色が出ていて、親というのは産んだから親ではないとも読み取れる
子どもがいかなる人物になっていくのかを導く役割もあり、それを為してこそ親であるとも言える
また、迷えるスーパーマンが覚醒する瞬間では、本作のテーマが語られ、これは現代アメリカに巣食う「親ガチャ失敗論」に一石を投じる内容だった
これは万国共通の病巣であると思うのだが、そこにズバッと切り込んでいくところは爽快だった
自分自身が何者かわからない人にとっての指針でもあり、袋小路に入ってしまった人への激励でもあると思うので、どうか自分の足で立ち上がり、その行き先を見極めてほしいと感じた
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