ケナは韓国が嫌いでのレビュー・感想・評価
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良い作品
当然のように人々の心に根付いた格差、男尊女卑等々に息苦しさを感じたケナがニュージーランドへワーホリに行き、また行っちゃう物語。
ケナの両親役の俳優さんはもう少し貧乏感、疲れた感じがあっても良かったのでは。
対して、何年も公務員試験に落ち続けた挙句、自殺した友人役の役者は、良いもの食べてない感じ、日に当たってない感じ、精神がギリギリな感じ、自信がなく人におもねる感じ...そして、競争社会で絶対人を蹴落としたりしないだろうなという人の良さがにじみ出ていて心を掴まれる。
女性達のスッピンと化粧した後のギャップも興味深い。
韓国の社会の闇が感じられる作品ではあるが、ケナ自身は貧乏な家出身というだけで、そこそこ良い大学を出ており、プロポーズしてくれる彼がおり、愛情深くご飯を作ってくれる家族がおり、良い会社に就職し、会社の忖度に対して上司に真っ向言いがかりをつけられる十分恵まれた立場である。
そう考えると、単純に気の強い青い女の子の物語。
このまま気が強いだけで突き進んで中年になったらどうなっちゃうんだろうってちょっと心配にもなり、それこそ続編が見たい気持ちになる。
生きづらさと自分探し
ある意味モラトリアム映画だろうか、若いうちは大いにあっていいと思います。ただ、日本社会は、新卒カードという言葉があるように、やり直したり遠回りすると就職には不利になるのも確か、このあたりが難しいなと思うんだけど、選択はあくまでも本人だからな
考え方一つだというけれど
大学出ても、満足な就職がない。
やっと就職できても。
片道二時間の通勤地獄。
サービス残業当たり前。
パワハラも。
これは、全てこの映画に当てはまるわけではないけど。
となると、ある程度財力というか余裕のある人は、海外での道を探る。
そんな、主人公。
かといって、海外でも、思ったほど上手く行ってない模様。
ある種のモラトリアム映画だろうか。
私の友人は、国立大学を出て、海外青年協力隊に4年参加した。
当時、すばらしい自分の道を開拓するためのチャレンジと。
羨望の眼差しを送った。
40年たって、沖縄に在住する彼を訪ねて、当時の気持ちを尋ねた。
「就職したくなかった、サラリーマンになりたくなかった」
「モラトリアム」だよと、サラリと言った。
出稼ぎとは違う、自分探し
移民問題が取り沙汰されている。
彼らは、より良い生活を求めて、移動する。
良ければそこに定住する。
でも、来てほしい人と来てほしくない人もいる。
これも本音。
主人公もある意味、そうなんだろうけど。
ただ、自分探しの趣のほうが強い。
だから、移民ほどの切迫感はないんだけど。
青春の旅路なんだろうな。
生きづらさを感じる韓国社会
ひしひしと伝わってくる。
主人公の親世代は、こんなもんだと受け入れているけど。
主人公のように、若い人は大きく違う。
そんな、韓国社会をよく表現している。
グローバル化の中で、自国にこだわることもない。
じゃあ海外でという流れも。
でも、そう簡単ではない。
もっと条件悪くなるかもしれないし。
だけど、原作がベストセラーになったように。
韓国以外での道を探す若者の願望が、見て取れる。
そうやって、自らの進んでいく道を探すんだろうな。
若さは、うらやましい。
SNSの発達で狭くなる世界
便利なツールではあるけど。
最近の日本でも、つくづくそう感じる。
使い方にもよるけど、世界が広がるのではなく、逆に狭くなる。
ある不満をXでつぶやく。
あるいは、芸能人が、ブログで日常の出来事を書く。
ときにそれが、炎上したりして。
つぶやきの世界とか、その界隈とか限定されていて。
意外と、窮屈。
有名人となればなおさら、テレビで言った一言のため謝罪を繰り返さなえればいけなかったり。
まあ、問題発言ならしょうがないけど。
そのことが、SNSでものすごい勢いで拡散してゆく。
そう、生きづらい、嫌な時代だと思う。
そんなとき、ケナのように脱出試みるんだろうか。
でも、インターネットは世界中で追いかけてくるよね。
ケナに限らず、私達の逃げ場所は、どこにあるんだろう。
自分で選択肢を狭めない生き方
トランプの再選が決まり多くのアメリカ人が国外への移住を決断した。ロシアでもウクライナ侵攻をきっかけにして多くの富裕層やインテリがロシアを後にした。
自分が生まれ育った母国を捨てて移住することはある意味身を裂かれるような思いを味わうことだろう。ただの一時的な旅行とはわけが違う。だが、たとえ自分が生まれ育った母国であろうともそこから離れざるを得ないことも起こりうる。愛する母国イコール現政権ではない。またそういう事情がなくても他国への移住を望むことは当然人であれば認められる根源的なものでもある。人間は常に自分が住みよい地を探し求め、それを探し当ててそこを安住の地としてきた。
ケナが望むのはまさにそんな人間としての根源的な願望。寒い場所が嫌いなら暖かい場所へ、競争社会が嫌なら競争がなくとも生きていける場所へ。何も自分が生まれた国に一生束縛される必要はない。愛国心だのなんだのと他人に言われる筋合いもない。仮に愛国心があったとしてもケナは寒いのが苦手なのだから。
親を選べないように生まれてくる国は選べない。でも自分の人生は選べる。一度きりの人生をこの韓国の10万キロ平方メートルの中だけで過ごすのはもったいない。毎日二時間かけての通勤で何をしてるのかもわからない会社を辞めてケナは韓国から抜け出すことを決意する。
恋人のジミョンは韓国人にしては今風の男子で女の自分を尊重してくれるが、やはり彼は韓国男子だ。自分を支えたいなどと悪気はないものの女を下に見ている。自分は男の庇護下でいるつもりはないというのに。そんな悪気のない彼を憎めない、でもやはり彼も韓国という枠に縛られている、そして彼の気遣いにいちいち嫌気がさす自分も韓国的なものに縛られている。彼は何も私の家庭を憐れんで施しをしようという気はないのに根拠のない劣等感に縛られてる自分が嫌になる。やはり自分をそういう風に縛り付けるそんな枠から解放されたいのだ。
自由の身となったケナ、でもニュージーランドでも人種差別もあるし言葉の壁もある。自由に国境を超えて世界中を飛び回れる翼を得るのも楽じゃない。そんなニュージーランドの地で知り合う様々な同志たち。彼らがケナを束縛していた枠から徐々に解放してくれる。
私は何人でもない、私はコスモポリタン(地球市民)だ。何にだってなれるはず。自分の可能性を自分で狭めてはいけない、自分の限界線を決めてはいけない。
ケナの自殺した同級生はこの韓国で国家試験に何度も失敗して、これではとても生きてはいけないと自ら命を絶った。限界線なんて本当は存在しないのに。自分で勝手に決めた限界線を超えたからあきらめてしまうなんて。でも多くの人々がこの限界線に縛られて生きてる。そんなことが馬鹿らしくてケナは旅立った。限界線なんて端から存在しないのに、自分で作り上げた限界線に縛られて生きるなんて。
若い命が今も失われる。つい先日も韓国を代表する子役出身の女優さんが自ら命を絶った。三浦春馬氏の死以来のショックだった。彼女の作品が好きだった。
年寄りから言わせてもらえば若い人はどんなに才能にあふれていても唯一ないものが経験だ。長く人生生きていれば思うようにいかないことの方が多い、そういう時には生き急がないこと。うまく行かなければ焦らず立ち止まる。それでキャリアをだめにしようがそれはしょうがない。人生は積み木のようなもの。どんなに高く積み上げても崩れるときは一瞬。でもまた積みなおせばいい。それができるのが若さであるということ。だから自分の限界を勝手に決めて限界を超えたとしてあきらめないでほしい。
ケナは同級生の死を見つめて思ったはず。自分は限界線を引かない、生きられる限り生き続ける。自分の悔いのないように生き続ける。そうして彼女は暖かく過ごしやすい自分にとって安住の地を見つけるのだろう。彼女の目線の先のどこにも線はひかれていない。
タイトルなし(ネタバレ)
ポスター見て、てっきり生きづらい韓国を出て、海外にバックパッカーとして放浪の旅に出るロードムービー的な映画と勝手に思ったら、韓国とニュージーランドの生活が半々の展開でした。
最後は結局ニュージーランドに戻るのでしょうね。
これで幸せの青い鳥は身近にいたとかで、韓国で元彼と結婚して幸せな家庭を築くエンディングだったら、かなりしらけてしまったはず。
個人的には、インドネシアの彼の元へ行って結婚した方が良かったと思うのですが・・・
ケナの二面性
ストーリーは分かるけど、感情の動きは敢えて類推させるように描いてきいるので、全部は分かんないよ。
日本でも行きづらいところあるけど、韓国はもっと大変そうだね。
冒頭でケナが上司と対立するけど、上司も大変だと思ったな。
日本的なしがらみの部分を残しつつ、欧米的な実力主義も導入されてそうだよね。
男性社会で、男性でも大変そうなのに、女性になったら、そりゃ大変だ。
ケナはニュージーランドへ行って会計の学位を取ることにすんのね。
「日本や韓国の金持ちはアメリカかヨーロッパへ行く。ここに来るのは貧乏ばかりだ」って言われちゃうのは辛いね。そういう辛さは残る。
妹と対象的に描かれてるのかな。
妹はなんにもしないダメ人間なんだけど、周囲は気にせずやりたいことをやってる。
最後はバンドマンの彼氏もできて、ダメじゃないんだよね。
観てて印象的だったのが、ケナは「強く、自立した女」を目指してるように見えるんだけど、男の人の前で可愛い声で、舌っ足らずに話したりするんだよね。
これが揺れてる感じを表現してるのかな。
ちょっと引っ掛かりがあって面白かった。
留学して最初に出会った留学生と付き合い始めるところとか、最小限の説明で描いてくるから、全部は追い切れてないと思うんだよね。原作も読んでみよ。
あっさりと。ただただ、淡々と。
映画館にて鑑賞。
意外にも中高年の男性も多い印象。
韓国での描写が鬱蒼として暗いですね。その対比として、ニュージーランドでの描写が明るいのは明るいのですが、もう少し自然描写も混ぜて良いのでは??
ストーリーの1つ1つが淡々としているので、観客側の感情移入もやや弱めかも。
(エリーの言葉、良かったですね!ただ、最後どこいったのか??)
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