劇場公開日 2025年3月7日

「「的外れで焦点ずらし」な男たち」ケナは韓国が嫌いで TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「的外れで焦点ずらし」な男たち

2025年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画のタイトルを見て、数年前に話題になっていた(本作の)原作について思い出して劇場鑑賞を決めた本作。サービスデイのヒューマントラストシネマ有楽町はまぁまぁの客入りです。
冒頭、ケナ(コ・アソン)のナレーションで解説しながら始まる朝の出勤風景。寒さと眠さに耐え、片道2時間かけて向かった職場ですが、自分の仕事に意義を見出せないばかりか、上司(男性)の理不尽さや魂胆が丸見えな指導に嫌気が差しています。モヤモヤする気持ちを恋人・ジミョン(キム・ウギョン)に共有するケナ。一昔前なら「理解があって彼女想いの優しい彼氏」と言われていたような模範解答をするジミョンですが、ケナにとっては「的外れで焦点ずらし」な返答にイラっとします。反骨心が強く、時にストレートな物言いもしがちなケナ。しかし、ちゃんと聞けば何一つ間違ってはいないし、むしろ自分の人生、そして幸せについて目を逸らすことなく真剣に向かい合っています。そしてまた、「こうあるべき」と言われがちな世間体を気にして安易に「敷かれたレール」に乗ることにも疑問を抱いています。
今あるものを捨ててまで「賭け」に出るリスク。28歳と言う、嫌でも「この先の人生」を意識せざるを得ない年齢にいよいよ、韓国を出る決意を決めて飛び立つケナ。初めのうちは言語というハードルにどうしても「韓国人コミュニティ」での行動が多くなりがちですが、段々と英語も上達し始め、交友関係の幅も広がり始めます。
ところが、どこに居たって「起きて欲しくないこと」に直面するのも人生。そんな時、辛い気持ちに寄り添おうとする男性陣は、ケナを自分の庇護下に置こうとします。勿論、本人たちに「弱みに付け込む」意図はないでしょうが、根本的にケナを理解していれば「そうじゃないだろう」なこのサジェスチョンもやはり「的外れで焦点ずらし」。私を含める男性陣よ、本当に気を付けないといけませんな。。
韓国では寒さに震えてポケットに手をツッコミながらくわえタバコする「ヤサグレたケナ」が、オークランドでは自然と海に囲まれた開放感の中、日に焼けて健康的。(映画でそのシーンはありませんが)しっかり勉強して学位を取りつつ、余暇には友人たちと呑みながら英語でポリティカルな議論までするケナは正に「覚醒」。強い意志で「モヤモヤすることが多かった20代」を脱却し、新しい人生に踏み出す30歳のケナに拍手を送りたくなること必至。良作です。

TWDera