フロントラインのレビュー・感想・評価
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当時の不安感を前提として作られたことの是非は?
本作で取り上げた、ダイヤモンドプリンセス号でのコロナ発症とその後コロナ禍の出来事は、極めて政治的出来事であった。政治的とは当事者が多数いるという意味だ。患者、医者、看護師、政府(官僚)、政治家、日本国民そして世界国々と当事者は多い。本作では、船の患者、その家族、医師らを当事者として焦点を当てている。
外国人の演者が割とまともだった。邦画での外国人役は演技がアマチュア劇団レベルというのが多いのだが、今回のは割と堂に入った演技をしている。夫が発症し1人船に残された女性を演じた方は、夫を旅に誘った後悔をよく演じていた。
マスコミを「マスゴミ」として描いているが、やや類型的である。マスコミの人間も様々であり、「マスゴミ」として描くにしても背景などもっと深みが必要ではないか。人はそう単純な生き物ではないのだから。
この映画は、あの時の多くの人々が持っていた不安感をベース(前提)にしている。なにかとてつもない事が起こりつつある。得体の知れぬモノが迫っているという、ホラー映画が持つ出来事への不安感である。
そう、本作はホラー映画として作られるべき作品のはずだったと思う。
しかし人々の不安感をあまり上手く演出できたようには思えない。あの時、船の中ではこんな事が起きてましたという報告感が強い。それが制作目的だとはいえ、何か物足りない。
政府内でも相当の暗闘があったはずだが、抜けている気がする。
ほんの五年前の出来事なので、あの不安感を多くの人々は肌感覚で覚えているから描く必要はないという判断もあるかしれない。が、五十年後の人々がこの映画を観た時、どう感じるだろうか。
状況はわかるとしても、身に迫る気持ちは起きないだろう。名作と言われる作品は時代を越えるというが、それは作り手の用意周到な計算があるからだが、本作にその計算はあったのだろうか?
船が給排水のために外洋に出る場面は印象的だった。鮮やかなライトをつけながら、漆黒の闇の海を行く様は、その後の世界を暗示しているかのようだった。
窪塚さんと池松さんに味つけされた真面目でドキュメンタリーな作品
評判が良いので映画館で鑑賞。当時報じられていたダイヤモンド・プリンセス号のニュースを改めて思い起こした。
現場で抱えていた想像もしなかった実体を、本作を通して初めて知ることとなった。
当時は、感染力の高い恐ろしい未知のウイルスが国内でまん延するかも知れない水際で、治療法もワクチンも存在せず、医療現場の体制も整っていなかった。
このような緊急事態において、有志の医療関係者に「依存」するしかない極限状態だった。
本作では、結城医師をはじめ医療従事者は心を正常に保つために「人命を最優先」「人道的な正しさ」をその行動原理としていた。
自己や家族を犠牲にしながらも、世間から謂われのない批判に晒されなければならない悔しさや憤りは計り知れない。
それでも、自分たちが最前線に立たなければ、事態は立ち行かなくなるという恐怖と責任感が、彼らを突き動かしていたのだ。
このような状況の中で戦う医療従事者を「善」として、彼らの視点から当事者の覚悟や苦悩が画かれているが、そこがまさに見どころになっている。
矢面に立ち、甚大なリスクを背負いながら即断即行動を下すことの重みを目の当たりにし、医療従事者の方々への心からの感謝と敬意を抱かずにはいられない。
一方で、陽性の可能性がある者と自分の子供が接触するのを避けたいと考えるのは、至極当然な人間の感情である。
自分と自分の身近な者を守るという行為は、人間にとって最優先されるべき本能的なものであり、それが脅かされることは恐怖であり「悪」と認識される。
そうした世間の恐怖をマスコミが煽り、医療現場との対立構造を作り出すことで、医療従事者の善性を際立たせている側面も感じられた。
本作は、スター性のある小栗旬を起用しているにもかかわらず、エンタメ要素を極力排し、様々な立場の感情に配慮していると感じる。
ドキュメンタリーまではいかないものの、感情の起伏を抑制している点も、この作品の良さになっている。
窪塚扮する医師の強い覚悟と、池松扮するの医者の芯の強さが本作を際立たせていて、作品に味がついている。窪塚洋介がかなりカッコ良かった!
感動して涙が止まらない作りにはしていない。
エンタメ的ヒューマンドラマを期待されている方には向かないかも。
1番ムカつくのは、自国語で喚き散らす外国人旅行者だった。
広く浅く
感染症が広がる船内。必死に治療にあたる医師たちや、乗客一人ひとりに真摯に向き合う乗務員の姿に心を打たれた。
その様子を見て、「あの時、自分にできることは本当に何もなかったのか」と自問自答し、悔しさと感謝の入り混じった思いで涙が溢れた。
ただ、主人公は対策本部に駐在し、現場の最前線には立たない立場。船内で指揮を執るのは別の医師で、下船後の搬送手配なども厚労省の職員が担っていたため、彼自身の苦悩はややぼんやりと描かれていた印象。
一方で、マスコミの描写はあまりにも“ペラい”。ペラすぎる(笑)。
ただただ世論をかき回して報道に注目させようとする姿勢が不快なのに、その後すぐ、誠実に働く医師や乗務員のシーンが続くことで、彼らとの対比がより鮮明になってしまっていた。
マスコミにも、彼らなりの信念や仕事への矜持があったはず。そこをもう少し丁寧に描いていれば、作品全体に深みとバランスが出たのではないかと思う。
そして窪塚洋介。はじめは誰だかわからなかったが、エンドロールを見て驚いた。落ち着いた渋い演技で、作品を引き締めるような存在感を放っていた。
今だからこそ、たくさんの人に見てほしい
映画にして頂きあの時の反省点など整理できた
ありがとうDMAT
医療従事者
どこまでが真実なのかは分からないし、綺麗事の理念だけで成し遂げたとも思えない。
が、実際あの船で感染は起こり、未知のウィルスは猛威をふるい、そのウィルスに立ち向かった人達がいるのは事実だ。
結びとしては、船の問題が片付いたになってはいるが、未曾有のパニックとしてはほんの入り口なので、ハッピーエンドになるわけもない。
僕らはその後の時代を生きている。
振り返るには早いタイミングだとは思う。
が、当時、何が正解かも有効かも、どんな脅威なのかも分からない中で、その渦中に飛び込んだ人達がいる。医療従事者の方々にはホントに頭が下がる。
自分の命どころか、家族の人生をも賭けてる。
目の前の命に向き合い、最善を尽くした人達。
そんな人達の物語だった。
皆様、熱演だった。
ただ、ホントにコレは想像なのだけれど、あんなに整然としてたのだろうかと思う。
阿鼻叫喚とまではいかないが、もっと壮絶だったんじゃなかろうかと思う。勝手にオブラートを想像してモヤモヤしてる。
人の善意はいっぱい映っていたけれど、人の悪意は限定的だったように思う。
下衆なマスコミと無責任な政治家とか。
光石さんとかハマってたなぁ。
よく出来た脚本だなぁと思えた。
立松さんは偉くなってくれたのかなぁー
…ああいう人がああいう人のまま偉くなれないから、この国の将来が不安でしかないんだがな。
気持ちは分からなくはないんだが、風評被害ってシャレになんないなぁ。
そういう誤解を解いてあげるのもマスコミだと思うのだけれど、元より信頼が失墜してるからそんな役割も今更担えんだろうなぁ。
そうなんだよな…。
なんか食い足りなかったのは混乱がそこまで描かれてなかったような気がしてて、何に立ち向かってじゃなくて、どう立ち向かったかにフォーカスされてたから「感謝」みたいな感想になったんだろうなぁ。
13名が亡くなったという事実
あの当時は新型コロナウイルスの感染者が少しずつ増え始めていたものの、後にあそこまで猛威を振るうウイルスとは知らなかった頃です。ダイヤモンドプリンセス号のニュースはよく見ていましたが、中の様子は分からなかったから、感染者を中に閉じ込めたままなのはどうなんだろうかと思っていました。本作では描かれてなかったようですが、アメリカの助言だったんですね。
確かに、患者の受け入れを拒否する医療機関が多かったから、そうするしか無かったんだなと思います。
日本ではそれまでウイルスの爆発的な感染なんて無かったから、感染症対策のシステムが構築されてなかったのも仕方ないことですが、そういう事態を予測することも無く、医療に関する国の予算もどんどん削られていましたから。
そんな中でも戦ってくれた医療従事者、関係者の皆さんには、頭が下がります。それなのにD-MATの方々が差別され、酷い言葉を浴びせられたり、その家族までが職を失ったり、同じ医療関係者からも中傷されるような目に遭っているというのは、報道番組でも新聞でも度々取り上げられていましたよ。
戦争中やもっと前からあった迷信的な偏見や村八分的な思考と何ら変わらないです。
本作は当時の緊迫した状況を伝えてくれますが、まだ描き切れていない事が多いと感じました。
クルーが頑張ってくれたこととは別に、アメリカの運航会社の対応は色々まずかったと思います。隔離が始まって食事を各部屋に運んでくれるようになっても、パンを素手で配膳しているのを不安に思ったという日本人客の証言あり(テレビより)
検疫の様子も見たかったです。
アリッサ他2名のクルーはその後どうなったんでしょうか。
感染症専門の教授が乗船し、ゾーニングが正しく出来ていない事や、役人の認識の甘さを批判していたのはテレビでも中継しました。その指摘はもっともで、なぜ教授が船を降ろされることになったのかは知りたいですね。(お役人が降ろしたんだろうと思ってます)
「面白いことになりそうですよ」と言った架空のテレビ局の記者のセリフは事実ではないですよね。でも主人公は面白がられていると感じたかもしれません。船内はまるで野戦病院のような状態だったのに、まわりはただ見ていただけでしたから。
最終的に、3711名中、感染者712名、死亡者13名、医療機関への搬送者769名、搬送先16都府県、150病院でした。ウイルス以外の原因で亡くなる事案をも含めて被害を最小に食い止めようとしてくれました。
最初に2名が亡くなった時、「でも、船の上ではない」というセリフは、D-MATを擁護する為に敢えて言わせたんでしょうか。震災の時に関連死を気に病んでいた方々が、まるで責任を押し付け合うかのようなお役所的発言をしたとは信じたくないです。
本作では、窪塚洋介さんがカッコ良かったです。池松壮亮さんも良かったです。森七菜さんが船内を走り回って奮闘する姿、ふくらはぎが生命力に溢れていて魅力的でした。
池松壮亮さんのリアル
やはり見ておくべきだと思い上映館へ。人も疎らなレイトショウで助かったが、どうしても泣けてきたのは当時の閉塞感が蘇ってきたからか、そんな事態にあっても美しい人間性が見られたことに改めて胸打たれたからか。
最も印象深かったのは池松壮亮さん。医者の仕事は単調な検証と対応とを地道に繰返し積み重ねていくことがほとんどで、地味で人の汚い部分にやむを得ず踏み込んでいく、かっこいい劇判なんてつきようもない局面が大半。それを体現されていたようで、事前に読んでいた監督・脚本の意図に最も忠実だったように思う。窪塚さんはかっこよすぎ、とは思ったけれど、こういう医者、いるいる(笑)と思った。これ程無骨で渋い役をされるのだとIWGP以来しっかり拝見することがなかった(すみません)ので驚かされた。
そして光石研さん。今回の下衆(ある意味では自分の職業に忠実なわけだけれど)なテレビマンも、他の作品での温厚な父親も、同じ顔貌と風体なのにきちんと”わかる”。改めて凄いと思った。
そのラインを踏めるか?
「えっ、○○さんコロナ? あらあら…」そんな感じになった現在、薄れ...
「えっ、○○さんコロナ? あらあら…」そんな感じになった現在、薄れだしているあの頃の世の中を改めて思い出させてもらうに良いタイミングだったと思います。当時、生死をかけてコロナに対峙してくれた医療従事者や関係各方々の、我々が目にすることができなかった姿、事実(多少の演出はあるかと思いますが)をこうして伝えてくれた企画・制作者に感謝です。
冒頭からもう胸アツのセリフが行き交って小泣きの連続。また、頑張ってきた方たちからの思い、メッセージがセリフ一つひとつに込められていることをしっかり受け止めなくてはいけないでしょう。そして邦画においては大抵、エキストラ役か問題起こし役(悪役含)で使われやすい外国人客(役)にスポットを当て、ひとつひとつのサブストーリーの主役としてしっかり見せ場を作った脚本にも拍手。一番泣きました。
一点、気になったのは厚労省役人・立松 信貴(演:松坂 桃李)はどこら辺まで実在の方に似せたのかなと。あの融通の利かせ具合、年上とはいえ結城(小栗 旬)からの呼び捨ても官僚のわりに普通に受け止め、現場にも立ち入り、そこで自分がしたことに反省する好人物像。「厚労省も頑張った」は受けとめますが、エンディング間際の電話シーンは蛇足でアピールし過ぎ。せっかくのこの物語が、そういう意図・コンセプトで作られたのかと邪推してしまいます。
とはいえ、多くの方がコロナ禍の時代を共にしたわけで、振り返り、今後同様の事が起きた時に今度はどのように考え、行動するのか、その心構えを持ち続けるためにも観に行く価値のある映画だと思いました。
未知に困惑する現場の大変さを知る映画
人間だからこその愚と徳
人間の愚かさ
覚えてますか?
初期のコロナで感染防止の為に
隔離した豪華客船。
それを題材にした物語。
とにかく怖い。
感染も怖いけど一番は
マスコミとそれに乗せられる民衆。
自分の子供が何も悪い事してないのに
クラスで「バイ菌」と呼ばれる理由が
父親の自分が医者だから……って何?
心に刺さる辛い涙。
でも、
ヤバいネタほど人は集る。
倫理もなく数字を追うだけのマスコミと
他人の不幸が大好きな人間達の愚かさ。
自分も人のこと言えないよ。
そして現場は現場で
みんなの言い分が全然違うプロジェクトを纏める。
しかも世間ではバッシングされながら。
そして、失敗するとそこには死。
地獄だよ、本当に。
映画だから見てられるが
仕事であの現場に行ってたら
鬱になってる気がする。
このスタッフに
心の底から敬意を表する。
そして、映画としてもみんなに観て欲しい名作。
あまり日本映画では得意でないノンフィクション系の映画の傑作だと思う。
これがよく出来ていてびっくり!
多分、脚本も書いた増本淳というプロデューサーの力だと思う。
監督が関根光才で、昨年の「かくしごと」の監督。「かくしごと」は、あまりいい出来ではなかったけれど、映像や演出はリアルで、レベルが高いと評価していた監督だった。それが今回、実を結んだ。
普通の人々がそれぞれ緊急で初めての事象に対応しなくてはいけない状況で、嘘くさい演技をしていたら、台無しになるのは火を見るより明らか。
松坂桃李の官僚や、医師の小栗旬や池松壮亮、窪塚洋介が抑えた演技で良かった。(いわば「シン・ゴジラ」のあのノリ)
それで、「シン・ゴジラ」よろしくいろんな困難な事態に対処してゆく。それが案外エンターテイメントとなっている。後半のバスでの大移動は壮観であり、なかなか緊迫したシーンになっていたし。
ラストに事態が収束して小栗旬と松坂桃李がお互いお疲れ様と言っているところで、窪塚洋介が扮する仙道先生がもう北海道で医療に従事している姿が!これがカッコイイ。「ダークナイト」のラストシーンを思い出した。
窪塚洋介は、ラストだけでなく、全編を通してカッコよかった。さすがです。
松坂桃李が最初官僚の上から目線の冷ややかさを演じて、それが最後には小栗旬の医師に対して「先輩」と認め敬意を払っている演技も素晴らしかったし、それを受ける小栗旬がしっかりしているからこそ映えるのだと思う。
今回は、小栗旬が演技者の中でいい要になっている。池松壮亮も良かったし、その妻役の前田亜季は出番が少ないながら、リアルな演技をしていて好感。
森七菜は、英語が上手くてびっくり。可愛く良かった。無駄な演技をしない。いい女優になりました。
あまり日本映画では得意でないノンフィクション系の映画の傑作だと思う。これからも良質なノンフィクション系の映画を期待したい。(特に政治系)
この増本淳プロデュースの「THE DAYS」も見てみよう。
缶コーヒーはポッカに違いない
5年前の狂騒が蘇り、人の咳払いにビクッとし暗闇を出て直ぐに置いてあるアルコール消毒ポンプをプッシュする自分がおり、当時コロナで近親者を亡くされた方には辛いというか見るに堪えないであろう日本での長期コロナ禍の発端となった事件をこんなにも早くしかも綿密にしかも面白いエンターテインメントとして作り上げた良くも悪くも増本淳プロデューサーの映画である。もともとフジテレビ社員で医療系のドラマを数多く手掛けていたそうで、半年かけて行った膨大な取材をもとに自らが脚本を書いたことが成功の要因だろう。監督が脚本を書くケースは多々あるが、映画を立ち上げテーマ・方向性を決めるPが脚本を書くことがぶれない映画制作の要で、事実を基にしているだけにこのプロデューサーと脚本がこれだけの役者を惹きつけ豪華キャスティングを成立させた。「DMATのヒーロー物語り」に偏ってしまう(まあそう見てしまうのだが…)ところをギリギリでこらえており、ましてや隊長の小栗旬自身が決断を迫られる悩みと優柔不断のあり様を素直に演じていて、危ない感じの窪塚洋介がゆるぎない彼なりの「正義」を貫くことで「目の前の命を救うか?感染拡大防止を最優先するか?」というテーマを見事に提示してみせた。意外な柔軟性を持つ厚労省役人の松坂桃李ももちろん良いが、ひと段落した夜の病院でぬるい缶コーヒーを池松壮亮に勧める滝藤賢一の演技が素晴らしい。
世界中の人に観てほしい作品
「家族に医師がおります」と言えなかったあの時期。
私の住んでいる地域で初のクラスター病院となり、離れて暮らしている実家まで村八分状態で、父母は会合にも呼ばれず回覧板さえ来ませんでした。子供は先生から呼び出され「検査してるの?」とまで言われました。その当時の出来事を思い出し、涙が止まりませんでした。
この映画は事実でドキュメンタリーを観ているような自分もまた登場人物のような錯覚になり、終わってからも席を立てませんでした。
映画だと細部までは表現できず、是非ともドラマ化してほしいと思います。
忘れつつあるあの出来事を、いま映画にする難しさがあっただろうにと感心した映画でした。
最後のマスクの跡とハグするまえのちょっと躊躇するシーンにまた涙がこぼれました。
名もなき英雄たち
2020年2月、皆このニュースに釘付けだった。SARS の流行はさほど影響のなかった日本、ここにきてどえらいものが襲来したな、と思ったものだ。その当時、断片的にしか把握していなかった状況が、今回フィクションとして我々の前に姿を現す。
いや、どんな困難な場面に遭遇しても、我々に出来ることは日々積み重ねてきたこと、当たり前のことを当たり前のようにやる。これに尽きるし、それ以上のこと、英雄的なことを、個々人が行える訳じゃないんだよな。目の前の困難・課題に対して、持てる力を注力して、ベストと思われる最善手を選択していく。その積み重ねが、日々物事を前進させていく。それしかないし、できないよな。
それぞれのプロフェッショナルが、それぞれの持ち場で、その日その時の最善を互いに尽くしていくこと。その集積が我々の日常を支えているんだな。他者と比べるでなく、私自身が何を成しうるのか、何で貢献していくのか・貢献できるのか。そんなことを考えさせられた。自身の人生や職業感について、改めて見つめ直すきっかけとなる作品だった。
(25.06.26追記)
吹越さん演じる六合。モデルとなった岩田健太郎氏の動画は当時リアルタイムでみた。言っていることは理にかなっているのでは?と当時感じたのは覚えている。但し、本作でも指摘されているように、人間は理だけで動くようにプログラムされていない。人を動かす、自ら動きたくなるプロセスを踏むこと、他者から信頼される自分であること。自分自身がそうであるだろうか?ということも点検していきたいもの。一朝一夕には自身に落とし込めないから。これもやはり自身の歩んできた道、歩んでいく道がモノを言うのだろう。
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