「やれることは全てやった、そして人々は家に帰ることができた」フロントライン コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)
やれることは全てやった、そして人々は家に帰ることができた
1 豪華客船内で発生した新型コロナの集団感染に立ち向かった人々の実話を描く。
2 本作は、未曾有の出来事に信念と責任感を持って立ち向かい、無事切り抜けた事実を基に、優れた人間ドラマに仕上がっていた。映画では、災害発生時の救急医療の専門家集団(DMAT)のリーダー(小栗旬)と現場責任者(窪塚洋介)、そして厚労省の役人(松坂桃季)の三人を物語の中心においた。この三人の関係性は、課題が発生する度に、より緊密になり互いの信頼とリスペクトが増していった。この三人体制がしっかりしていたことで、密度の濃い集団劇となった。
3 エピソードでは、乗客の夫婦や兄弟の絆の強さを現す描写は胸を打たれた。また、エピソードではないが、今回、松坂が演じた厚労省の役人が小栗が要望することの足枷となる法律上の手続きを超法規的に柔軟に対応し続けたことを始めて知った。人としても優秀だと感心した。演出では、テンポが良かった。何より冒頭から一気に物語に没入させる入りの良さがあった。
3 俳優では、会議室で待機しながら焦躁と苦悩を一手に引き受けた小栗は見事に演じた。その小栗を理解し行動した窪塚と小栗に寄り添った松坂も立派だった。加えて、淡々と医療を施した池松壮亮や分をわきまえながら必死で頑張った森七菜、ぼやきながらも緊急対応した滝藤賢一は持ち味を発揮していた。
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