「政治家はどこにいる。」フロントライン ふくすけさんの映画レビュー(感想・評価)
政治家はどこにいる。
増本淳氏が企画、脚本を担当している。
彼は元フジテレビプロデューサー。あのテレビ局の内情は内部告発であり信憑性が高い。
全編、DMATの医師・看護師、クルーが不当に評価されてきたことへの怒りと、その名誉回復への情熱に満ちている。
身を挺して救命に尽力している人々が激しい差別と排除に遭い、口惜しさと情けなさ、彼らへの感謝で、涙なしには見られない。
ただ、こうなると、どこまでが事実であるのかが気になる。
①厚労省の役人 立松(松坂桃李)はウソをついてでも、入院先を確保する。
②テレビ局の現場取材を行う、女性が報道の仕方に躊躇を感じる。
③400人を受け入れた愛知の病院はその後どうなったのか?
④現場のリーダー 仙道は具体的に、特定の人物として存在するのか?
彼はコロナウイルスを上陸させないことよりも目の前の命を救おうとする。
全て事実だとしたら驚くべきことだ。
組織とルールに逆らってでも、自分の信念を守り通す姿勢が、現場のスタッフのみならず、厚労省の役人や、患者を受け入れる病院にも広がっている姿には感謝しかない。
DMAT指揮官・結城(小栗旬)が報道の女性に「どこか面白がっていませんか?」の言葉に女性は答えることができない。あの忸怩たる思いは事実だと思いたいが、ここは信用できない。
ただ、あのマスコミの態度を助長しているのは私たちなのかもしれないとも思う。
ひとつ気になるのはこの映画の中で「政治家」は全く登場しないことだ。
立松が意見を上申するのは厚労省の役人だ。政治家ではない。
そこは暗澹たる気分になった。政治家が何かを決断した形跡は見えない。
最後に、立松は医師が行うべき判断を独自にして、陰性の兄と陽性の弟を同室にする。
おそらく明確なルール違反であろうが、それが尊い。
最初いけ好かないいなややつに見えたが、結城との関係がどんどん親密になっている。
「偉くなれよ、お前みたいな役人がいてくれれば現場の俺たちはもっと働きやすくなる」
なんという賛辞であろうか!
いつの間にか厚労省の役人をお前呼ばわりしているのもこの映画の真骨頂に思えた。
仙道医師(窪塚洋介)真田(池松壮亮)も素晴らしい。書きたいことありすぎ。
政治家が見えないのは、実際いなかったのではないか?
動いていなかったのではないか?
という気持ちなのです。
描きたかったけど忖度してできなかったなら、まだましかと。
政治家を登場させなかったのが映画の主張の一つとも思えます。
ふくすけさん
共感、コメントありがとうございます。
おっしゃること同感です。政治家の姿が全く見えない。そこが日本映画の限界なのか。かつてのこのような社会派映画であれば、政治家も描けていたかも…。
ふくすけさんの貴重なレビュー読ませていただきありがとうございます。
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