「船の中にいたのは特別な人ではなく、隣人だった」フロントライン とみーさんの映画レビュー(感想・評価)
船の中にいたのは特別な人ではなく、隣人だった
まずはこんなに記憶に新しい出来事を、映画として見られることが新鮮だった。
未知のウイルスというものへの漠然とした不安感に包まれていた当時、それでもやはり自分にとっては「漠然とした」感覚でしかなかったと思う。
日々増えていく感染者の数字を見ながら、心を痛めさえすれど自分ごとではなかった。
「フロントライン」は毎日のように変化する報道に、へー大変だなあ、くらいの気持ちで見ていた裏で、最前線で戦っていた人たちがいたことを思い出させてくれた作品だった。
そもそもDMATという存在を知らなかった(私の無知かもしれないけれど)。
作品内で描かれている扱われ方がどこまで真実かは分からないが、ボランティアとして危険の中に飛び込んでいた人たちがいることは、もっと周知されてしかるべきだと感じた。
映画を見て1番に感じたことは、
災害の最前線は自分とは遠い世界のできごとではないということ。
医師や看護師たちも家族がいて、普段の職場がある。
船の乗客たちもそれぞれの生活の中で船に乗っている。
船の中は想像もつかないようなフィクションの世界ではなくて、ひょっとしたら近所に住んでいる普通の人たちなのだと、自分の想像力を省みるきっかけになった。
また、作品内ではマスコミや政治家はその一面がピックアップされているという点も忘れてはいけない。
マスコミの報道をそのまま鵜呑みにしてはいけないというメッセージが込められているが、この作品自体もまた、これが真実の全てであると鵜呑みにしないようにしたい。
自戒をこめて。
とにかく、映画としては見応えがあり、見終わったあとに人と話したくなる良い作品だった。
p.s.久しぶりに窪塚洋介を見たが、色気があってこんなにかっこよかったっけ?と驚いた。