劇場公開日 2025年6月13日

「最前線で、淡々とアツく」フロントライン Eijiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 最前線で、淡々とアツく

2025年6月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

あの当時、私たちは何と戦うことを求められているのかと考えることがありました。
得体の知れない目に見えないウイルスなのか、国の頼りなさなのか、指示される対策の適切性への懐疑なのか、これまでの日常からの変容を求められる不安なのか、会いたい人に会えない不満なのか。

義務感に近い動機からこの作品を観賞して気付いたのは、あの機会は想像力の欠如への警鐘でもあったかということでした。
あれだけ報道されていながらも、当然あるはずの、DMATの一人ひとりの苦悩、乗客一人ひとりの不安、クルー一人ひとりの配慮、医療関係者一人ひとりの戸惑い、役人一人ひとりの錯誤を想像しながら情報に触れていた人がどれだけいたでしょうか。恥ずかしながら私は全く想い至っていませんでした。そして、毎日報じられていた「陽性者数」の「数」の動向にだけ注目してしまっていましたね。
それはメディアのミスリードだけが原因ではなく、やはり周りで起きていることよりも自身の安全を第一に考えていたためだったように振り返ります。

そうした環境のなか、まさに自身を犠牲にして闘われていた方たちがいた、その様子のほんの一部でも理解できたことは嬉しかったです。
一人ひとりの気持や行動が丁寧に描かれていたからこそのように思います。
若干、登場人物みんなカッコ良すぎだろって感じもありましたが、発生した事態の大きさとそれに立ち向かったというリアルがそんな印象を持たせたのかなと思います。
ただ、リアルな世界で抱える、国として振返りは十分なのかな?次が起こったときの対処は大丈夫なのかな?という疑問はこの先も持ち続けることになりそうですよね。

2020年2月に大事なイベントを用意していながらもキャンセルを余儀なくされたことをずっと悔しく思い続けている自分の小ささにも気付かせていただきました。

Eiji