「悪くはないが…。」フロントライン luna33さんの映画レビュー(感想・評価)
悪くはないが…。
作品性はひとまず置いといて、DMATの真実を描くという意味においては思惑通りの作品に仕上がったのだろう、という印象だ。
この作品を語る際に、当然ながら全員が当時のコロナウイルスやパンデミックの恐怖、感染への不安、当時の首相による「緊急事態宣言」などの話になってしまうと思う。だって皆が実際にコロナ禍を体験している「当事者」だから。つまり全員に「思い出」があり、誰もがコロナ禍を振り返れば何らかの感傷的な思いに浸ってしまうはずだ。
ただここで考えさせられる。
実際に体験して得たこれらの個人的なエモい感情と、いち作品に対する評価をどこまで混ぜ合わせるべきか、そのさじ加減がとてもとても難しい。例えば自分の友達が芸能界デビューしたらめっちゃ応援してしまうだろうが、その目線で盲目的にタレントとして褒めちぎってしまうと、友達としては正しくてもレビューを書くという形で何かしらの評価を下す人間としてはどこかフェアじゃない気もしてしまう。レビューはあくまでもフェアにしたい。そう考えるとこの作品に対する評価はそれほど高くはならないのだ。
あの時何が起きていたのかを知れたのは良かったし、DMATの活動には本当に敬意しかない。もしこれがドキュメンタリーだったら高評価に出来たのだが、あくまでも映画作品として冷静に観てしまうと「それなり」という印象に落ち着いてしまうわけで、それが面白くもあったが残念でもあった、というのが僕の正直な感想だ。

