劇場公開日 2025年6月13日

「これは感染症との戦いではなく、人間同士の戦いだ」フロントライン ブラウンちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これは感染症との戦いではなく、人間同士の戦いだ

2025年6月14日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

改めてあのときの出来事がどれほど異常で、苦しく、そして人間の本質をあぶり出す出来事だったかを実感した。
(The Last Of Us という未知の感染症で荒廃した世界が舞台のゲームがあるのだが、まさにそれと同じ。人間が戦ったのはウイルスではなく、人間だったというもの)

まず、3,000人以上が閉じ込められた船内は、想像を絶する緊迫感と恐怖の空間だった。
(映画の最序盤で、船のデカさを物語るシーンがあって、本当にこんなデカい船の中に閉じ込められたんだなと実感する)
未知の感染症に囲まれ、情報も錯綜する中で、人々がどれほどの不安を抱えていたか。
あれは単なる「感染防止措置」ではなく、もはや“海上の監獄”だったと言っても過言ではないと思う。

そんな中で、医療関係者たちが命をかけて現場に入り、黙々と自分の役割を全うしていた姿には、深い敬意と感謝の気持ちを抱かずにはいられなかった。
(家族を思いながらも、ずっと船に残って戦い続けた人たちをきちんと描写してくれていた)
給料や義務では到底説明できない“使命感”が、彼らを支えていたのだと思うが、本当にありがとうの気持ちをこのレビューで伝えたい。

そして本作で特に心を打たれたのは、医療関係者ではない“クルー”の人たちの姿だった。
感染した人たちやそうでない人たちの清掃や食事配膳、生活支援といった、誰もが敬遠したくなるような業務を、責任感だけで引き受け(引き受けないという選択肢はなかったのだろうが)、逃げずに支え続けた方々。
あの状況下で「自分には関係ない」と言わずに動いてくれたことに、ただただ頭が下がる思いだった。

一方で、強く感じたのは“社会の醜さ”だ。
外の世界は、まるでワイドショーを見るような感覚で船を取り巻き、マスコミはセンセーショナルな言葉を並べて面白がるように報道した。
(マスコミの人間ってこういう思考なんだって勉強になったのと同時に、本当にクソだなと胸糞悪くなった次第)
改めて自分も、ワイドショーの情報からしかこの出来事について考えていなかったことにも怒りを覚えた。

感染者に対しては「ばい菌」呼ばわりの差別が横行し、支援よりも「誰が悪いか」という犯人探しが先に立った。
その温度差、想像力のなさ、冷酷さに、深い悲しみと怒りを覚えた。

あの船は、ただのクルーズ船ではなかった。
現代社会のあり方、人間の本質、そして分断と連帯を同時に浮き彫りにする“鏡”だったと思う。
そこにあったのは「医療の現場」だけではなく、「人間の選択」の連続だった。

今だからこそ、この映画が世に出た意味は大きいと思う。
あのとき私たちが何を見過ごし、誰に助けられ、何を反省すべきだったのか。
改めて問い直すきっかけをくれたことに、本当に感謝したい。

そしてこの映画は未来永劫、後世に伝え続けるべきものだろう。

ブラウンちゃん
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