劇場公開日 2025年6月13日

「まさにほんの一片の方の見方」フロントライン きいろさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0まさにほんの一片の方の見方

2025年5月28日
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鑑賞方法:その他、映画館

私も当時、2020年2月の横浜着岸から除染作業等を全て終えて、プリンセス号が再出港するまであの現場におりましたが、映像や演出から伝わってくるような勇ましさ、情熱、使命感等々が漂う現場ではなかったですね。お粗末、いい加減、隠蔽、人任せ、中抜き、トップからのダウンダウンダウン…とにかく映画を見てなんだか腸が煮えくり返りました。虚しかった。
我々は現着してすぐに「この現場で見たことの一切は公表しない」旨が書いてあったであろう書類に読む暇なんて全く無く、とにかく流れでサインさせられ防護服なども着ずにすぐに作業でした。毎日マスク一枚だけをもらいましたね。あの書類にサインをした以上、我々のような下っ端の現場作業員の意見や体験、見てきた事の詳細は今後も世の中の表には一切出てこないか揉み消されるのでしょうが、あの場の全てや本来がこの映画でしっかり描かれているわけではないと知ってほしい。役人でも医療関係者でもなんでもないのに、あの時あの場に職を求め、もしくは強いられて集わざるを得なかった人々の数だけ視点があり意見があり、光の当たらない現実があったという当たり前の事をわかってほしい。これは意図や演出のあるドラマであり映画であり、現実のあの時の現場ではない。
制作様も演者様も誰も悪くないと思います。皆様は誠心誠意をつくしてお作りになられた渾身の良作だと思います。でも、スクリーンに一切映っていない埋もれる側の人間としてはひたすらに悲しくて、そして悔しいですね。あの2ヶ月弱の日々を「フロントライン」などという言葉で片付けてほしくなかった。

きいろ
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