「ほんの、まさにほんの一片の方の見方。」フロントライン きいろさんの映画レビュー(感想・評価)
ほんの、まさにほんの一片の方の見方。
私も当時2020年2月の着岸~プリンセス号の出港まであの現場におりましたが、映像や演出から伝わってくるような勇ましさ、愛、使命感等々が漂う現場ではなかったですね。お粗末、いい加減、隠蔽、人任せ…とにかく映画を見てなんだか腸が煮えくり返りました。虚しかった。
我々は現着してすぐに「この現場で見たことの一切は公表しない」旨が書いてあったであろう書類に読む暇なんて全く無く、とにかく流れでサインさせられ防護服なども着ずにすぐに作業でした。毎日マスク一枚だけをもらいましたね。あの書類にサインをした以上、我々のような下っ端の現場作業員の意見や体験、見てきた事は今後も世の中の表には一切出てこないか揉み消されるのでしょうが、あの場の全てや本来がこの映画でしっかり描かれているわけではないと知ってほしい。役人でも医療関係者でもなんでもないのに、あの時あの場に職を求め集わざるを得なかった人々の数だけ視点があり意見があり、現実があったという当たり前の事をわかってほしい。これは意図や演出のあるドラマであり映画であり、現実の現場では絶対にない。
制作様も演者様も誰も悪くないと思います。皆様は誠心誠意をつくしてお作りになられた渾身の作品だとは思います。でも、埋もれる側の人間としてはひたすらに悲しくて、そして悔しいですね。あの2ヶ月弱の日々を「フロントライン」などという言葉で片付けてほしくなかった。
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