「旋律の絆」デュオ 1/2のピアニスト レントさんの映画レビュー(感想・評価)
旋律の絆
双子の物語を親子監督が演出。親子間で生じる問題もとてもリアルに描かれていたので自分たちのことを照らし合わせての演出だったのかな。
社交的な兄、内向的な弟、ジェレミー・アイアンズが一人二役の双子を演じた「戦慄の絆」を思い出した。一人の女性をめぐり二人の間にかろうじて保たれていた均衡が崩れていく様を描いた。
本作は双子姉妹がソリストの座をめぐり関係がぎくしゃくする、しかし後半はさらなる怒涛の展開に。
スポコンドラマとしても双子同士のライバル関係を描いた愛憎劇としても難病ものとしても親が自分のエゴを子に押し付けムービーとしてもすべての要素がまんべんなく丁寧に描かれた超娯楽作品。
主演を演じた二人をはじめとして役者さんもすべてが魅力的で特に若い頃のエリック・バナにそっくりの音楽学校の先生がよかった。宗像コーチみたいなキャラはスポコンものでは必須、でも生徒に手を出したらいかんでしょ、この辺がさすがのフランス映画。
お父さんの頑固おやじキャラも良かった。娘に夢を託すのをあきらめて再び潜水の記録に挑むところが可笑しい。お母さんも娘たちの夢を後押しするために自分を犠牲にする母親像がよく描かれていた。人間ドラマでは必須の人物描写がその背景から丁寧に作りこまれていて心理描写もうまくて、次から次へと登場人物たちに起きる事態に見ていてお腹いっぱいになるほど。最近のフランス映画は「ダンサーインパリ」など良作が多い。
親の期待を背負わされながらもピアノの腕を磨き精進する双子姉妹は名門の音楽学校へ入学、ソリストへの道を駆け上る。ただ選ばれるのは当然一人だけ。ここで二人の関係に亀裂が生じ始める。あがり症でいつも姉クレールの陰に隠れるように遠慮がちなジャンヌは姉のコピーと厳しい言葉を投げつけられショックを受ける。それでも控えめな彼女は姉を応援する。姉は社交的で彼氏も作り楽しそうだがジャンヌはその陰で地道に努力を重ねる。
しかしソリストに選ばれたクレールに異変が、初期の腱鞘炎と思っていた症状は改善せず、ソリストの座をジャンヌに奪われてしまう。
抜け駆けされたと思いジャンヌをなじるクレール。姉妹の関係は悪化するが、それもつかの間クレールの症状は遺伝的なものと判明し、時を経ずしてジャンヌにも同じ症状が。教師の言う通り輝きを見せたとたんに光を失うのは彼女らの血筋が原因だった。しかし本当の輝きが別のところにあることを教師はこの時は知らない。
もはやこの時点で姉妹はピアノをあきらめざるを得ない状況に、二人はどん底に突き落とされる。
子供の頃から親の期待を一身にあびてピアノ一筋で生きてきた姉妹にはあまりにも残酷過ぎた。成長したひな鳥がいざ翼を広げて大空に飛び立とうとした矢先に翼をもがれたように。しかし一方では今まで自分たちの重荷でもあったピアノから解放されて心が軽くもなった。二人は初めて自由になれた気がして羽を伸ばした。
しかしいざピアノから解放されてもやることが見当たらない。コンサート会場のチケットもぎりのアルバイトでは退屈過ぎた。他の職業を探せといまさら言われても。
ホールにあるピアノに何げなく触れる二人。あらためて自分たちにとってピアノとは何だったのか、この時二人は親の期待やオーディションなどといったこととは関係なくまっさらな状態でピアノと向き合えた。そして二人は思い知る、やはり自分たちはピアノが好きなんだということを。
趣味でもいい、やりたいことをやろうと、二人の意思はこの時はじめて一つになった。枝分かれするかと見えた線路のレールが再び一本のレールになるように二人も離れたりくっついたり、これが双子というものなのだろうか。
関節に負荷がかからない奏法を独自に編み出した二人。双子だからこそなしえたシンクロ奏法でもあった。
音楽には詳しくないけどこれが実話だとは驚き。どこまでが事実でどこら辺が演出なのかわからないけど、コンサート本番で指揮者が二人のデュオを知らされてなかったのはあり得ないと思う。あとジャンヌが教師とピアノの上で関係を持つのは創作だろうなあ。
クライマックスでの演奏前に怖気ついたクレールがいつもジャンヌがあがり症克服のために口にする言葉をすればなお良かった気もする。
誰が見ても楽しめる見終わった後に多幸感に満たされる大満足の映画でした。
共感&コメントありがとうございます。
エースをねらえ!は自分のバイブル的漫画なのでどうしても・・あのピアノ教授は最後迄傲慢教え子と差し替えようとしてましたね、彼女とも関係が?