「ゾクゾクして怖かった」ドールハウス ひろかんさんの映画レビュー(感想・評価)
ゾクゾクして怖かった
実は、映画館でホラー映画を観るのは初めての経験だったかもしれません。
自宅でテレビ画面越しに観るのとは全く違う迫力と恐怖感がありました。
暗闇に包まれた劇場の中で、大画面から迫ってくる恐怖演出に何度もゾクゾクとした感覚を味わい、冷や汗が出る思いを何回もしました。
音響効果も相まって、まさに全身で恐怖を感じる体験でした。
この映画の物語は、5歳の娘・芽衣を事故で亡くした鈴木佳恵(長澤まさみ)と看護師の夫・忠彦(瀬戸康史)の悲しみから始まります。
愛する娘を失った母親の心の傷と、それを癒そうとする人形への愛情移入が描かれています。
佳恵が骨董市で芽衣に似た人形を見つけて購入し、我が子のように愛情を注ぐ姿は、母親の愛の深さと同時に、その愛が時として危険な方向に向かう可能性も示唆していました。
新たな娘・真衣が生まれ、5歳に成長した彼女が人形と遊び始めると、一家に奇妙な出来事が次々と起こります。
人形を手放そうとしても、捨てても供養に出してもなぜか戻ってきてしまうという展開は、まさにホラー映画の王道パターンでありながら、観客を確実に恐怖に陥れる効果的な演出でした。
長澤まさみの演技は特に印象的でした。愛する娘を失った母親の悲しみ、人形への愛情、そして次第に狂気に近づいていく様子を繊細に表現していました。瀬戸康史も夫として妻を支えながらも、状況の異常さに戸惑う男性を自然に演じていました。
田中哲司演じる呪禁師・神田や安田顕演じる私服警官・山本といった脇役陣も、それぞれが物語に深みを与える重要な役割を果たしていました。
風吹ジュンの忠彦の母・敏子役も、家族の複雑な関係性を表現する上で欠かせない存在でした。
観ていて強く感じたのは、そもそもの悲劇の始まりについてです。
鈴木佳恵が子供たちだけを残して買い物に行ったことが事故の原因となったのではないか思ってました。
親として、一瞬の判断ミスや油断が取り返しのつかない結果を招くという恐怖は、多くの観客にとって身近で恐ろしいテーマだと思います。
映画の結末については、確かに色々な意見があると思います。
すべてが明確に解決されるわけではなく、観客それぞれの解釈に委ねられる部分も多いです。
しかし、私はこういう終わり方もありだと感じました。
現実とは何か、愛とは何か、そして家族とは何かを問いかける余韻のある終わり方だったと思います。
ホラー映画としての恐怖演出も効果的でしたが、同時に家族愛や喪失の悲しみといった普遍的なテーマも深く描かれており、単なる恐怖映画を超えた作品だったと感じています。
映画館での初めてのホラー体験としても、非常に印象深い作品となりました。
恐怖の中にも愛や家族の絆といったテーマが織り込まれており、観終わった後も考えさせられる内容でした。
ホラー映画が苦手な方でも、家族というテーマに興味がある方にはおすすめできる作品だと思います。
