「リアリティーのあるファンタジーを楽しめるが、想像だけでは補い切れないところが残念に思われる」平場の月 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
リアリティーのあるファンタジーを楽しめるが、想像だけでは補い切れないところが残念に思われる
「50歳を過ぎても『恋』ができたらいいなぁ」といった願望(妄想?)を叶えるかのような、大人のファンタジーを楽しめる。ただし、お互いに独り身だし、中学の同級生同士で、しかも告白して振られた(後に両思いだったことが分かる)仲だっただけに、あながちあり得ない話ではないとも思われて、そのリアリティーに引き込まれた。
はじめは「世間話をする会」みたいな形で2人で飲むようになり、徐々に距離を縮めていく様子には、「いい歳をした大人が」とじれったさを感じないでもないが、双方に結婚を破綻させた経験があるだけに、ここは、「同じ失敗を繰り返したくない」と躊躇する気持ちがあることを、もっと明確に描いても良かったのではないかと思われる。
やがて、彼女が進行性の癌に冒されていることが分かり、その手術の前日に、ようやく2人が結ばれるのだが、これは、病気が恋の後押しをしたのだと考えて良いのだろうか?
あるいは、彼女が、中学生の時に告白を断り、「一人で生きて行く」と決めたのは、不仲な両親を見て結婚生活に失望したからだということは想像がつくのだが、その割には、略奪婚をしてみたり、若い美容師に入れ込んだりしたのはどうしてだろうという疑問が残る。
さらには、彼女が月を眺めながら考えていたという「馬鹿みたいなこと」が、主人公との結婚生活であったということも、容易に察しがつくのだが、それなのに、どうして主人公からのプロポーズを断ったのか、その理由がよく分からなかった。
確かに、彼女は自分のことを嫌っていて、主人公が思うような人間ではないと、その理由を説明しているのだが、後に、本当の理由が、癌の再発を知ったからだということが明らかになると、益々、どうしてなのかが分からなくなってくる。
たとえ不治の病に冒されていても、それで、相手に大きな迷惑をかける訳ではないし、むしろ、残された時間を大切な人と過ごしたいと思ったり、最期は愛する人に看取られたいと願ったりするのが普通なのではないだろうか?
もしかしたら、彼女には、自分は幸せになってはならず、罰を受けなければならないといった気構えがあったり、主人公に、夫と死別した自分と同じ思いをさせたくないといった気遣いや、衰弱していく自分の姿を見せたくないといった気位があって、それこそが彼女の「太さ」だったのかもしれないが、それならそれで、もっと分かりやすく説明してもらいたかったと思えてならない。
それから、せっかく出てきたチチヤスのチー坊や、彼女が引っかかった「お前」という呼び方が、あまり伏線として機能していなかったことには、少し残念な思いを抱いてしまった。
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