「どこかちぐはぐな人気漫画家の自伝的な作品」かくかくしかじか よしてさんの映画レビュー(感想・評価)
どこかちぐはぐな人気漫画家の自伝的な作品
永野芽郁さんや見上愛さん、畑芽育さん、鈴木仁さんといった俳優陣は魅力的でした。しかし、観終わった後には残念ながら「ピンボケ」な印象が拭えません。
原作者の意向が強く反映された結果でしょうか。人気漫画家へのサクセスストーリーは、そこに不可欠な葛藤や努力の描写が希薄で「スムース」に過ぎ、リアリティに欠けると感じました。そのため脚本全体も「メリハリのなさ」が目立ちます。また、師匠の「描け、描け」という教えも、漫画家デビューへの過程でどう活かされたのか描かれず、終盤のモノローグによる説明に頼ってしまっては、映画的表現とは言えません。
構成面では、美大進学後の「金沢パート」が、主人公が絵を描かなくなったという事実を伝える以上に物語への貢献が薄く、冗長に感じられました。加えて、多すぎるモノローグや、”やりすぎ”とも思える両親に代表されるコメディ演出は、映画全体のトーンから浮いて雰囲気を損ねており、結果として一本の話としての「統一感」を大きく欠いていました。
重要なエピソードもどこか「サラッと」流れてしまい、物語としての「強いフック」が見当たりません。原作者が脚本・制作にも名を連ね、「この映画を作りたい人が作りたいように作った」結果、作品全体の焦点が定まらず、ちぐはぐな作品になったという印象です。俳優陣の魅力は光るものの、エンタメ作品としての吸引力には物足りなさが残りました。
コメントする