「こんな大森南朋、初めて見た!」かくかくしかじか ycoさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな大森南朋、初めて見た!
原作ファンである。
正直、大泉洋(=先生)と大森南朋(=父ケンイチ)は逆の方がいいのでは?と思っていた。
が、蓋を開けてみたら大泉洋はちゃんと「先生」だった。舞台仕込みのしっかりした発声が先生の「描け―!」に活かされてたし、よくハの字になる眉毛が、なんだか面倒くさそうな人って感も出していたし、その一方で情け深くも見える。普段はただの「ボヤキ顔」がまるで(本当の意味で)能面の様にいろいろな表情に見えるのである。
そして何より大森南朋の「ケンイチ」が良い塩梅に振り切れていてすごく面白かった。父親が主役の「ひまわり!」ファンでもある自分が言うのだから間違いない。大森南朋がギャグテイストにあんなにキビキビ動けるとは知らなかった。かと言ってやりすぎることもなく、ちゃんと「父」の温かさも感じさせてくれた。
ちなみにケインイチがやらかすシーンはあまりに自然過ぎて思わず「あっ!」と声を出してしまった。
永野芽郁も当初は「とぼけた感じ」が合ってると思っていたが、それだけではなかった。コミカルなシーンはもちろん、泣いたり怒ったりが思いのほか良かった。特に大泉洋とのとあるガチンコシーンが素晴らしく、アキコの色々な感情が突き刺さってきて、思いがけず泣いてしまった。原作ではこのシーンでは泣かなかったのだが。ちなみに彼女はビジュアルも原作者の東村アキコ先生に近い。顔の輪郭やパーツの配置が似ている。着物姿などは衣装さんやメイクさんの研究もありかなり「東村アキコ」感がある。
その他のキャストもかなりよい。
北見(原作では二見)役の見上愛もイメージ通り。声が低めなのも良い。しかしながら他の作品ではそう思ったことがないし、大河ではむしろ高めだったように思う。声色も意識していたのだとしたら今のキャリアでそこまでできるのはかなり凄いのではないか。
鈴木仁は初めて知った時はまだ未成年で、若いのに色気のある子だなと思っていたのだが、本作ではその色をすっかり消し、ヤンキーだけど素直で憎めない「今ちゃん」になっていた。
畑芽育も単に可愛いだけではない。ちょっとした間合いの勘が良い。
そして森愁斗の「川崎君」。「ミーラクルガール♪」のくだりが地味にツボで吹き出してしまった。
MEGUMIはさすが。器用だな~。
「西村君」の神尾楓珠は本来の原作者のストライクゾーンのど真ん中ではないと思うのだが、「一目惚れする」というにはこれくらいイケメンの方が説得力はある。シーンは多くないがやはり存在感がある。
それにしても斉藤由貴が出てきたのには笑った。実はちょっと前に今回の騒動の話を高校生の子どもとしていたら、たまたまTVに彼女が出てきたので「この人こそ平成・令和の不倫の女王だよ」と教えていたのである(どんな親!?)。「奇跡の画!」と密かに盛り上がってしまった。ちなみに本当にちょい役だがなかなか良かった。特別出演とのことだったが何繋がりだったのか気になる。
映画化を知った時は「ついに!」と興奮し期待していたが、その思いは裏切られることのない良い作品であった。
強いて言えば若干リズム感が自分の好みではないところと、挿入歌の入れ方がうるさかった。
なお、終盤は原作には無いシーンで、ある種王道中の王道、東村先生レベルの人にとっては禁じ手とすら言えるのでは?そもそも私がそういうの好きじゃない!って始まった時には思ったのだが、大泉洋と永野芽郁のやり取りがとても良く、終わった時にはそんな気持ちは吹き飛んでいた。あと宮崎の海も良かった。映画館で見てよかった。