「ボーちゃん覚醒、友情のスパイスは効いたか?」映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ボーちゃん覚醒、友情のスパイスは効いたか?

2025年8月9日
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鑑賞方法:映画館

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■ 作品情報
「クレヨンしんちゃん」劇場版第32作。監督は橋本昌和、脚本はうえのきみこ、原作は臼井儀人。主要キャストには小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、佐藤智恵に加え、賀来賢人、瀬戸麻沙美、山寺宏一、速水奨、バイきんぐ(小峠英二、西村瑞樹)らが名を連ねる。

■ ストーリー
インドのハガシミール州ムシバイと春日部が姉妹都市になったことを記念し、ダンス大会が開催される。カスカベ防衛隊は大会で優勝し、インドのステージで踊るために現地へ旅立つ。 インド観光を満喫するしんのすけとボーちゃんは、怪しげな雑貨店で鼻の形をしたリュックサックを購入する。 しかし、そのリュックサックには恐ろしい秘密が隠されており、偶然にもリュックサックから出ていた「紙」を鼻に刺してしまったボーちゃんは、邪悪な力に導かれ「暴君(ボーくん)」となって大暴走を始める。 豹変し世界を揺るがす脅威の力を手に入れたボーちゃんを、しんのすけたちは止められるのか、友情が試される。

■ 感想
これまでスポットが当たりにくかったボーちゃんを物語の主軸に据え、インドでボーちゃんが暴走暴君になるという大胆な発想は悪くないです。彼の「僕の何を知っているというのさ」という台詞は、キャラクターの深層を覗かせ、観る者の心にぐさりと刺さるものがあります。ボーちゃんの新たな一面が描かれることで、友情や個性の尊重というテーマがより鮮やかに浮かび上がってきます。

それと対比するように登場するアリアーナもまた、周囲が求めるイメージに困惑し、「らしさ」とは何かを考えさせる存在として、強く印象に残ります。さらに、当初は存在理由が不明確に思えたウルフでさえも、「よき相棒や友達を見つけることが全てではない」という示唆を提示し、その役割をしっかりと果たしています。これらの個性的なキャラクターが織りなす関係性は、なかなか魅力的です。

しかし、これらの刺激的な要素が、全体としてはどこかうまく溶け合っていないと感じます。まるでスパイスをふんだんに使ったインドカレーでありながら、一つ一つの香りが他との調和を欠き、複雑な深い味わいへと昇華しきれていないような、惜しい印象を受けます。説明的なセリフに頼るのではなく、もっと感覚的に、心の奥底でこれらのメッセージを感じさせてほしかったというのが、正直なところです。

もちろん、『クレヨンしんちゃん』らしい楽しいシーンは随所に散りばめられ、インドという舞台設定も存分に生かされています。その意味では、夏休みに親子で鑑賞するには最適な作品であることは間違いありません。ですが、しんちゃん映画に最も強く求めているものが、やや薄く感じられたのは、少し残念に思います。破天荒な行動の中でも、物事の核心をつき、人々の心を強く揺さぶるような、しんのすけの純粋な思いをもっと強く感じさせてほしかったです。

おじゃる
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