「両片想いを見届ける」(LOVE SONG) 🌻ちい🌻さんの映画レビュー(感想・評価)
両片想いを見届ける
10年前に日本の神社で「日本で仕事ができますように」と祈ったというチャンプ監督。夢が叶ったタイと日本の合同制作。
ワットアルン、バンコクの路地裏、ナイトマーケット、タイの風景と空と太陽、美味しそうな食べ物。それらが美しい映像で描かれタイに行きたくなる。
キャスティングは先ず、アジア進出を目標に掲げていたミャンマー出身の森崎ウィンくんがソウタに決定。
カイ役は難航していたと知って驚いた。タイ語を話しギターの弾き語りがありカメラマン役。てっきりタイにルーツを持つ向井康二くんに当て書きしたかと思っていた。
この配役こそプロムリキット運命。
そして忘れてはならないのはミッチー。
私にとって王子様と言えば若かりしミッチー。ジンは穏やかで優しくユーモアに溢れキュートなミッチーそのもの。
チャンプ監督がミッチーに惚れ込み出番を増やしたというのもわかる。
食べ物に貪欲なのは満たされない心なのか。
ソウタにとって忘れられない初恋との再会
カイにとって忘れたかった初恋との再会
この最初のフライヤーの意味が映画を観ると痛いほど良くわかる。
パンフレットの表紙の無邪気な笑顔のソウタと後ろから抱きついている苦しみを纏ったカイの表情に胸が締め付けられる。
パンフレット素晴らしいのでお手元に残すことをお勧め。なんと言ってもスチール画を担当した斎藤弥里さんの撮るオフショットが、写真集と言っても良いほど。
ご自身もバントを組んでたチャンプ監督。登場人物の感情を高め物語を進める音楽も素晴らしい。
康二くんにはアコースティックギター、ウィンくんにはエレキギターが当たるよう全体構築したという近谷直之さんの劇中歌。
サントラ聴くとシーンごと思い浮かんで心が動かされ更に想いが深まっていく。
特にナイトマーケットのシーンで流れるTheSkyAskYou?チャンプ監督の歌がふたりのあたたかく幸せな時間を、一層魅力的に包みこんでいる。
大学時代の屋上でカイのギターの弾き語りからはじまり、その姿を見るソウタの締め付けられるような表情。広がっていく曲と空と共に想像をかきたてられる。
繰り返される情景、タイと日本の比較のカットやシーンが差し込まれて印象的。あれっ?と引っかかるフックにもなっている。
カイの登場するスローのシーンはいくつもあるけど、どれもソウタの目線でこれからの導入として見る側にも心の準備をさせる。
特にウィンくんと康二くんが拘り撮り直しをしたというカイチアオ作るシーンが染みる。卵のジュージューの音がいつの間にか過去の土砂降りの雨のシーンの音と重なる。
こう言う所がチャンプ監督素晴らしい。言葉が無くともお天気特に雨音や光から情感五感に訴えかけてくる。
鈍感なほどピュアで屈託の無い満面の笑顔を向けるソウタはまさにカイにとっては太陽なんだろうな。
ウィンくんの仔犬のようなきゅるきゅるの瞳は本当に可愛い。ソウタ目線で語られるカイに観てる側も恋をする。
そして全てを知った2回目以降はカイの目線で全く違う意味を持つのだ。
Gravityがエンドロールで流れてくるその前のシーンで全てが腑に落ちる。
言葉では伝えられないソウタへの気持ちを音楽で表現するカイ。
その思いを理解し勇気を出してようやく言えたソウタ。
ずっと言えずにいた言葉をソウタから聞けてソウタに向き合うと決めたカイ。
ここからふたりの Lovesong が始まる。未完成のLovesongから( )が消える瞬間。何度見ても体中の力が抜けて席を立てなくなる。
最後に言っておきたい。
ヒカリ
サンキューゥ!
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