劇場公開日 2025年10月31日

「脚本に練りこみが圧倒的に不足」(LOVE SONG) クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 脚本に練りこみが圧倒的に不足

2025年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

Snow Manのファンの皆様、以下はSnow Manについて何ら知りもしない「おっさん」の感想につき、お気持ちを顧みない記述に満ちておりますので、お読みいただくのをやめられることを強くお勧め致します。本作を鑑賞後にあれこれ調べまして初めて内実を知った次第です。



 切なく、胸を締め付ける、なんてのはラブストリーの最大要素ですから、大好きなんですよ、私はこのジャンル。それが異性に限らず同性でもさして関係なく、作品の出来が良ければ大満足。そもそもLOVEに性別は基本的に関係ありませんから。で、いつもの様に劇場に入りましたら、足が止まってしまいました、約200名超程の女性観客の中にただ1人おっさんが・・・、それが私。ひぇ、森崎ウィンってこんなに人気あったの?驚きました。

 ラブストーリーの中でも同性同士のゲイラブを描く作品も多々ありますが、大きく分けて3つあります。

①ラブストーリーのひとつとして描く
②主にゲイのためのエンターテインメント
③主にゲイでない方へのファンタジー

 前述の私が喜んで鑑賞するのは①のタイプで、「ブロークバック・マウンテン」2005年とか、「ゴッズ・オウン・カントリー」2017年、今年で言えば「クィア/QUEER」2024年 などなど名作多し。②は、ちょっぴりからハードまで、主に欲情を満たすための作品で、あまり鑑賞する機会もありませんが。③は逆にゲイの本質から欲情をオミットしファンタジーとして描く作品。③も鑑賞しますが、分かり易いのは数年前のドラマの「おっさんずラブ」でしょう、ややコメディ寄りでしたが大いに楽しめました。で、BLもこちらに分類されますね。数年の前よりタイのBLドラマ「2gether」の人気は知ってましたが鑑賞しておりません。

 その監督さんであるチャンプ・ウィーラチット・トンジラー氏に日本側から依頼したのが本作で、角川映画がタイの大ベテランにBLを依頼し、役者も脇に及川光博や筒井真理子を配する気合の入れようですので、観たくなりますよ。よくぞ主演に森崎ウィンを据えたもので、選択眼には狂いはありません。

 と言うわけで冒頭の映画館に入っての驚きとなるわけです。結果的にはガッカリな感想です。いくら何でもイージー過ぎる脚本で、冒頭もラストも大都市バンコクで偶然にも程がある二人の出会いには呆れ果てました。何の工夫も努力もなく、振り向けばそこにいる。なかなか出会えないからこそ切なく描けるのに、その段取りを全てカット。互いにカムアウトできずにいる苛々は分かりますよ、しかしソウタはいい歳して自らがゲイなのかバイなのかましてやヘテロなのか判らないってのが馬鹿馬鹿しい。カイの方が自覚はあるようですが。「そうやっていつも逃げる」ってソウタのカイへの怒ったセリフ、そのまんまソウタに返してやりたいですよね。

 上司役の及川光博の徹底した戯画化には、安っぽさ満載で、見ていられやしません。彼がイケオジだったらソウタの気持ちが揺らぐから、男になびく方を選択したのでしょうが、中途半端の極みですね。それにしてもソウタとカイを少年時代から描く仰々しさ、既にその頃から恋が芽生えていた事を描きたいのでしょうが、大学生になっても屋上でのシーンなんて切ないなんて微塵も感ずること出来ません。お互いに求めるベクトルが希薄過ぎ、これって要は求めてないも同然ですよ。ならばそれを強くするには障壁プロットが必要なのですよ、唯一ソウタの母親が嫌がるそぶりを見せますが、それだけで障壁にも何にもなりません。ロミオとジュリエットよろしく恋の障害が大きい程に恋は大きく燃え盛るのにね。

 そして相手役の方の鼻の頭の小さなホクロが気になって気になって。歌われる歌唱も詩も残念ながら私の琴線に触れず、なんなのこの方と思ってました。セリフも圧倒的に森崎にボリュームが片寄り、向井の方は短い返事程度。ぶっきら棒の唐変木、そっけないと言うか気持ちがまるで伝わらないのですね。明らかに監督は森崎の美形を前面に据え、そのように撮っている。向井の良さを描こうとしてないとしか見えないのです。鑑賞後に知ったのですが、日本人の父親とタイ人の母親のもとに生まれたハーフゆえのキャスティングなんですかね。そんな出目はどうでもよいと思うのですがね。

 折角日本の大手がBL路線に乗り出したのに、残念極まりないですね。二人のキスシーンも数回ありますが、サラリとしたもので、求めあうものでは全然ない、ただ触れただけ。どきどきなんて全く感じませんよ。また、タイトルがラブソングなんて止めてよ、ピーター・チャン監督の超名作「ラブソング」1996年と被って。エンドタイトルに向井康二(Snow Man)と出て、合点が言った次第。場内明るくなって早々に出ると目立つと思い、客席にじっと座り最後の一人で退出しました。

クニオ
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