「行間に宿る愛。一本のミュージックビデオのように美しい物語」(LOVE SONG) きのこさんの映画レビュー(感想・評価)
行間に宿る愛。一本のミュージックビデオのように美しい物語
タイ出身の監督による作品ということもあり、日本映画とは質感や展開に違いを感じました。登場人物の心情があえて語られない場面も多く、「行間を読む」ことで見えてくる深みが印象的です。
個人的にはとても好みの作品でした。お互いへの深い愛情と、執着にも似た想いが随所に感じられ、同性愛だからこその残酷さも描かれていて見応えがあります。演出や映像の雰囲気も美しく、音楽の使い方も巧みで、まるで上質なミュージックビデオのようでした。
登場人物の個性や関係性が、限られた時間の中にぎゅっと凝縮されていたように思います。
カイはまるで少女漫画のヒーローのようで、理想を詰め込んだキャラクターでした。ミステリアスで美しく、モテモテのバンドマン…一度は憧れたことのある人も多いのではないでしょうか。言動には思わずきゅんとするような強引さがありながら、驚くほどの一途さも感じられます。食事のシーンでソウタに“ある事実”を告白する場面では、思わず声が出そうになるほど驚かされました。
一方のソウタは本当に純粋で可愛らしい存在。やや情緒の揺れはありつつも、カイの前でだけ見せる無防備で愛らしい表情には惹かれるものがありました。好きで好きでたまらない、そんな想いが表情から溢れ出ており、森崎ウィンさんの演技力には圧倒されました。核心を知らないソウタの視点で物語が進むからこそ、もどかしさや切なさがより際立っていたように感じます。
また、ジンやサン、ルークたちを中心に笑えるシーンも多く、一人ひとりのキャラがしっかり立っていて、全員を愛せる映画でした。
今作の見どころのひとつであるライブシーンには本当に心を動かされました。Snow Manの向井康二さんは、さすがアイドルというべき“魅せる”歌い方で、ハスキーボイスだからこそ伝わる必死さや力強さ、そして切なさが胸に深く響きました。
そして何と言っても、キスシーンはこの映画を語る上で欠かせません。BLファンの心に刺さる瞬間がいくつもありました。令和的というよりも、どこか平成の香りを感じるような――古き良き王道のときめきが詰まっていて、「やっぱりこういうのが好きなんだよな」と思わせてくれるシーンがたくさんありました。
脚本にやや粗さはありつつも、エンドロールで主題歌を聴きながら余韻に浸れる素敵な作品です。ノベライズや前日譚コミックも連載中とのことで、思わず手を伸ばしそうになるくらいひかれました。挿入歌も含めて歌詞を改めて読むと、その意味がより深く理解できるはずです。
BLが苦手な方でも楽しめる、美しく心に残る映画でした。同性愛への理解を優しく広げてくれるような、素晴らしい時間を過ごせました。
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