シンシン SING SINGのレビュー・感想・評価
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ドラマよりドキュメンタリーの方が良いかもしれない
犯罪者が刑罰でない更生プログラムを受けるという話はそれなりにわかっていたので、期待した。演じる場面より、じっとして口々に言い合う場面が多いので、退屈だった。黒人女性担当者から聴聞を受けることになり、演技ではないかと疑われる場面は、少し可哀想になった。結果が出るまでの待機時間に移り、実物のカーテンコールの場面が続き、少し希望を感じた。釈放で解放された後、エンディングでは、様々な表情や動きをする当事者たちが登場し、そのドキュメンタリーでも良かった気がした。
格子のない窓
主役以外はご本人とはいえ、元受刑者で現俳優みたいな人達なのかなぁ。更生プログラムの参加者ではあったみたいだけれど。
普通に見れた。
いや…普通過ぎた。
とても崇高な作品だとは思う。過ちを犯した人間を許せる社会が実現されていて、舞台上には一般の共演者もいて、客席からは笑いと拍手が向けられる。
…複雑だけれど、更生させる資格があるのかと疑問を抱く人もいるとは思うけど、長い目で見たら間違ってはいないんだろう。
参加者にしてみれば別世界なんだと思う。
よくこんなプログラムを思いついたなぁと感心するのだけど、理には適ってるようにも思う。
演出家をかって出た人は肝が据わってんなぁとも思うし、途中途中で挟まれる各人の半生からはバイオレンスしか感じない。
札付きの悪である囚人がプログラムを通して更生し、本人も諦めてた仮釈放を許可されたりする。
その手伝いをしていた主人公は、心の支えでもあった友達を亡くし、仮釈放の面談では「それも演技なの?」と理不尽な質問もされる。立ち上げたプログラムがマイナスに働いた瞬間の表情は…あのまま動かないんじゃないかと思う程に絶望に支配されてた。
主人公のお気に入りの場所として、度々出てくる格子のない窓。
拳が一つ通る程の大きさなのだけど、そこが唯一格子に邪魔されず景色を眺める事が出来るのだとか。
なんかコレが更生プログラムとリンクしてくる。コレを「希望」と呼んでいいのか「泡沫の夢」と呼ぶべきなのか。近づけば格子は見えない。が、引いて見れば格子の存在に気づいてしまう。無くなるわけではないのだ。彼らが収監されてる事に変わりはない。
なんか一気に虚しさが込み上げてくる。
そりゃそういうもんだよなぁ…。
彼らを描くから、彼らに感情移入もするけど、れっきとした犯罪者だもんな。
物語は主人公の出所で幕を閉じる。
不慣れな自由を肌で感じてるかのような主人公は絶品だった。
どんな場所でも状況でも、人って1人じゃいられないんだろうなぁなんて事を思い、人と協力して創る「演劇」ってものには、他者共生の側面なんかもあったんだなぁと、そんな事を漠然と思う。
にしても、どなたもカメラを全く意識してない芸達者ぶりだった。監督はどんな脚本と演出を用意したんだろうか?見事だと思う。
演じて自由になることと、本当の自由を得ることの間には何があると思いますか
2025.4.24 字幕 京都シネマ
2023年のアメリカ映画(107分、G)
実在する芸術によるリハビリプログラム(RTA)に参加した元受刑者たちの活動を描いた伝記映画
監督はクレッグ・クウェルダー
脚本はクリント・ベントレー&クレッグ・クウェルダー
原題の『Sing Sing』はニューヨークにあるシンシン刑務所のこと
物語の舞台は、ニューヨークにあるシンシン矯正施設
そこに収監されている受刑者のディヴァイン・Gことジョン・ホイットフィールド(コルマン・ドミンゴ)は、RTAと呼ばれる「芸術を使ったリハビリテーション」に従事し、受刑者たちと演劇を披露することを生き甲斐としていた
主に、隣の独房のマイク・マイク(ショーン・サン・ホセ)、演出家のブレント(ポール・レイシー)らとともにプログラムを運営していて、そこに参加希望の受刑者が参加する、という内容になっていた
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」を成功させた彼らは、次の演目のために欠員を補充することになった
志願者を面接することになり、ディヴァインGは、ディヴァイン・アイ(クレマンス・マクリン)に興味を示す
彼は「リア王」を読んで演劇に興味を持ち、素養があると思われた
だが、彼は自分をコントロールされることを極端に嫌い、グループの中心となっているディヴァインGの方針を受け入れようとはしなかった
映画は、元受刑者を集めて、使われていない矯正施設などを利用して撮影に望んでいる
本人役として参加しているのが11人ほどいて、実際に行われた演劇をベースに組み立てている
テーマとしては、居場所の獲得というものだが、自由になることを諦めている者もいれば、足掻こうとしている者もいる
ディヴァインGは殺人容疑で収監されていて、これは不当逮捕だったことが証明されている
だが、25年という時間を奪われていて、その間に立ち上がったのがRTAだった
彼を含めた数人の男性グループが演劇の上演と支援を申し立て、そこにキャサリン・ヴィッキンズという人物が加わってRTAの創設が実現した
ディヴァインG自身が書いた戯曲などもたくさん上演され、それ以外にも4作の小説を書いている
ちなみに映画の冒頭にてサインを求める受刑者がいるのだが、この人がディヴァインG本人である
奇妙な演出だが、この映画におけるディヴァインGの演技は本業でなければ難しい部分もあったのかな、と思った
いずれにせよ、受刑者にも色々とあってというエクスキューズがあるものの、受刑者というだけで色眼鏡で見る人もいると思う
とは言え、アメリカの司法制度と人種差別などの背景を考えると、日本的な感覚で断罪するのも無茶だとは思う
また、矯正プログラムに参加しようという意欲がある時点で何かしらの心の変化があると思うし、そう言った中でプログラムに参加することで変わるものもあるだろう
映画は、このプログラムを通じて、自分自身を探求するとか、変化を促すなどの種にすれば良いと思うし、俳優がセリフを覚えるためのコツであるとか、舞台演出における俳優への促し方などを学ぶ場になっている
そう言った意味において、そこで描かれているのが受刑者だからというので断罪するのではなく、そこから学ぶことで自分の人生の何かしらの糧にしたり、起こり得る未来に向けての心構えを持つということが大事なのかな、と感じた
最高
傑作
実際にシンシン刑務所に収監されていた人が多数出演しているドラマ映画。
映像・音楽・演技はどれも最高。主演のコールマン・ドミンゴは、"ビール・ストリートの恋人たち"でしか見たことなかったけど、ここまでの演技ができる俳優だとは思ってなかった。声質がとにかく良い。クラレンス・マクリンをはじめ、本人役として出演した多数の元収監者たちもプロに引けを取らない名演を披露。
でも個人的に1番光ってたのはポール・レイシーだと思う。"サウンド・オブ・メタル"効果もあると思うけど彼がいるだけで場にどことない重みが加わるのがすごい。
仮釈放審査の面接での面接官の悪意に満ちた質問に、収監者に悪者のレッテルを貼る世間の風潮が垣間見えて嫌悪感を感じたけど、もしかしたら自分もそんな目で見てしまっているかもしれないことを自覚させられた気もする。
RTAのメンバー全員で人生最高の瞬間を思い返して共有するシーンが最高だった。多分あそこでみんなが語った出来事は実際に彼らに起きたことだろうし、それを語るみんなの顔が幸せそうで胸打たれる。中でもカーマインの公園での奥さんとの話が本当に胸に響いた。
クソほど報われない刑務所の中でも必死に希望を見出して闘うディヴァイン・Gは、"ショーシャンクの空に"のアンディにも重なる。他にも似てる要素をたくさん持った作品だけど、断然今作の方が自分の好みに合った。
ミニシアターで観るのに最適な映画。
怒り
怒り
どう見ても厄介そうなディヴァイン・アイが気づかされる感情、それが怒り
表現するのが簡単だと演出家がいう、その怒りに満ちていたディヴァイン・アイが次第に変わっていく
このRTAの意義を彼を通して分かりやすく見せてくれる
そして、冤罪で投獄されたディヴァインG
彼は穏やかな存在だった
ディヴァイン・アイを良い方に導く存在だった
けれど、友を失い、道が閉ざされ、怒り、失望、悲しみに支配されてしまう
その彼に手を差し伸べるのが、穏やかさを取り戻したディヴァイン・アイ
罪を犯すこと、更生すること、それを語ることは難しい
人間の本質は変わらないとは思う
ただ、なにかの要因で負の方向に向かい、怒りなどの負の感情に支配されてしまったのなら、そこは変えられるのだと本作を通じて思う
ディヴァインGがどれくらいの時を経たのか、冤罪をはらせたのかは分からない
けれど、彼の出獄の日、かつての怒りに満ちていた時とは別人のようなディヴァイン・アイがいる
失意の底に落ちたディヴァインGも晴れやかな表情で再会する
この映画自体はフィクションでもあるけれど、ディヴァインGとディヴァイン・アイと演出家以外で、as himselfの出演者である彼らたちはノンフィクション
ここで描かれたことは決して理想論ではないはず
人の可能性、だ
車の窓を開け、風を受けるディヴァインGを見ながらそんな気持ちでラストを迎えた
実話‼️
ニューヨークのシン刑務所を舞台に、更生プログラムである演劇に一生懸命取り組む受刑者たちの刑務所内での日常と、仲間たちとの友情を描いた作品‼️今作は刑務所映画の新たな秀作ですね‼️出所した主人公を、先に出所していた仲間の一人が迎えてくれるラストは、「ショーシャンクの空に」みたいで印象的でした‼️海賊やロビン・フッド、フレディ・クルーガーまで出てくる彼らの演目をフルで観てみたいですね‼️そして今作は実話ベースで、本人役でたくさんの元受刑者の皆さんが出演されており、実際の演劇の映像が流れたりするのも良かったと思います‼️
娯楽ではなく記録映画として。
2025年になってからワン・イーボー主演映画以降、何故かどうにも見に行こうかな、と思える作品に出会えず気がつけば約3か月ぶりの劇場鑑賞となりましたが。。
レビューが高評価だったので見てみました。
娯楽作品とかエンターテイメントとして見るにはこの作品にその要素は無いんですが、
「刑務所の中ではこういった演劇による更生プログラムがあること」
は知らなかったので、それを知ることが出来て良かったです。
ただ登場人物はおじさん達がメインなので、画像としての華やかさに欠けてしまい。それのせいなのか?土曜日初回で鑑賞人数合計6〜7人?という客席の寂しさを伴ってしまいましたが。。(これは多分客席ががっつり埋まるタイプの映画ではない。。)
でも久しぶりにのんびりとポップコーン片手に静かなひと時を過ごせたのと、
主人公的ないかにも優等生タイプの模範囚が後半に挫折を味わい、前半はいかにも問題児タイプの囚人が後半では逆に頼れる相棒に変わっていく、その様が見れて、とても人間らしいドラマを演出していると思いました。
いくら取り組んでも報われないなら心が壊れそうになるし、でもそんな自暴自棄な自分でも寄り添ってくれる人がいたら少しづつ立ち直れる。前半と後半で、支える人が入れ替わっていて、
「いつまでも優等生じゃいられない」けど
「いつまでも悪党のままでいる奴ばかりじゃない」
というメッセージを受け取りました。
基本的には概ね淡々と物語が進み、やや上映時間が長く感じてしまうタイプの映画なので、娯楽を求めるのではなく、ゆっくりした人間ドラマをじっくり味わう時間のある方にオススメします。
久しぶりの映画館でした〜
演劇が更生プログラムとなっている理由が実感できる
何かの役を演じるためには、自分自身を見つめ直す必要があるのかもしれない。
役者たちが、車座になって、演出家の指示で、自身の完璧だった瞬間について語り合ったり、長い間会えていない友人のことを思い出したりしている様子は、グループセラピーそのもので、「舞台演劇」が囚人の更生プログラムに採用されている理由は、こんなところにあるのだろうと納得することができた。
特に、その効果が顕著なのが、新しくプログラムに加わった元ギャングで、いかにも「悪党」然としていた彼が、ハムレットを演じようとする過程で「人としての心」を取り戻し、主人公との友情を深めていく様子には胸が熱くなる。
また、多くの出演者たちが、本人役を演じた実際の受刑者たちだったという事実が、エンドクレジットの「as himself」という表示で明らかになった時には驚かされた。
その一方で、演劇は、作り上げていく「プロセス」が大切だということは理解できるし、最後に、上演された時の実際の映像が流されたりもするのだが、ハチャメチャな内容の喜劇が面白そうだっただけに、出来上がった劇を、ちゃんと観てみたかったという物足りなさも感じてしまった。
それから、主人公は、無実の罪で収監されているという設定だったが、だからといって、冤罪を晴らすとか、脱獄するとかといったドラマチックな展開がある訳ではなく、そのことが大きな意味を持っていたとは思えない。
ここのところは、実際に罪を犯した主人公が、しっかりと更生し、最後は出所して、出迎えてくれた友人と共に人生をやり直していくという物語で十分だったように思えてならない。
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