「雪風ハ沈マズ」雪風 YUKIKAZE いずもさんの映画レビュー(感想・評価)
雪風ハ沈マズ
軍事オタク的に細かいことを言えば、映画ポスターの上方から見たCG雪風の左右が反転しているとか、沖縄水上特攻の艦隊輪形陣(りんけいじん)の艦艇配置がおかしいとか、3万mの超長射程距離を誇る旧日本海軍の九三式酸素魚雷を持つ雪風がなぜ危険距離8000mまで撃たないのかとか、SBDドーントレスが爆撃行程に入った時にダイブブレーキ(急降下制動板)が開いてないとか星の数ほどあります。また姑目線で見れば中井貴一太ったなーとか農作業の妹のリップが戦時中なのに赤くて艶々なのは気に食わないよとか。
でもこの映画はそんなことではないんだなあ。
例えば「雨が降っていない」ということを映像で表現するにはどうすれば良いでしょうか?外の風景を写しますか?するとそれは晴れているということであり、あるいは風景が綺麗だなあであり、あそこに可愛い子がいるであり、雨が降っていない、ことを伝えてることにはなりません。
では「普通がいいな」を映像表現するにはどうすればよいでしょうか?
海に投げ出された友軍を救助する激しい戦闘から一転、艦上で先任伍長と語りあう日常、艦長が呉の自宅に帰り妻と語りあういっときの平和な時間にコチコチコチと聞こえる柱時計の音、エンドロールの砲撃の音が消えた海の静かな波の音。戻ってきた普通の日々。
その影には先任伍長が戦死し遺品が帰ってきても、海軍には白木の箱の中に入れる骨代わりの戦死場所の小石すらない痛ましさ、戻ってこない普通の暮らし。
そして最後の別れのメッセージ。「俺たちはここまでやったのだ、あとは頼むぞ」とひとつの時代が終わる寂しさ、去り行く者たち、去り行くあの日、あの日の普通への愛惜。3年間同じ学校で過ごした友達と卒業で分かれる時のあの気持ちかな。
「雪風」は血湧き肉躍る大スペクタクル戦争ロマンではないけれど、普通の日々はいいね、また明日から頑張ろうと思える佳作。
良い映画だったけど、
柱時計コチコチの静かな時が流れる場面から終盤の「九死一生はあっても十死零生という戦法はない!」までガサガサバリバリむしゃむしゃのポテチの音を盛大にたてていた女の子にはディズニーを見てて欲しい。
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