「終戦80年に相応しい作品」雪風 YUKIKAZE nnrさんの映画レビュー(感想・評価)
終戦80年に相応しい作品
数多の戦場に出ては、その度に海に投げ出された仲間を助け戻ってくる不沈の”幸運艦”雪風。ミッドウェー海戦で日本軍が大敗を喫した際にも敵からの追撃の危険に身を晒しながら1人も見捨てることなく救助を続けた。しかしその後新たに着任した艦長寺澤には「もっと早く戦線離脱すべきだった」と評されてしまう。
その後、戦況はさらに悪化し、もはや日本に勝ち目はないだろうという中で、雪風の気風を作り上げた早瀬先任伍長の「生きてかえる、生きてかえす」という言葉に希望の火が灯る。
その後、早瀬は戦死してしまうが、ミッドウェーで最後の1人まであきらめなかった早瀬の魂は雪風の隊員に受け継がれる。
戦況は悪化の一途をたどり、雪風は無意味ともいえる海上特攻作戦の中、無線が故障し帰還する味方艦隊から取り残され孤立してしまう。絶望的な状況の中、寺澤は沈む大和の船員を1人残らず救助するよう命令を下す。ミッドウェーで早瀬がそうしたように。その中で、ミッドウェーで最後に引き揚げられた井上も雪風の隊員としてまた別の命を救うのだった。
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私は戦争映画が嫌いだ。惨たらしく人が死に、その悲しみをもって反戦の意を描くことを主目的とする作品がほとんどで飽き飽きしているからだ(だから戦争映画は数を見てないし、そもそも戦争に詳しくないという前提でのレビューです)。
だがこの作品は違う。戦争という舞台を利用して命を紡ぐことを描いている。
絶望的な状況の中で浮かび上がる命の価値。我々がいま生きていることと先の戦争で誰かの命が救われたこと、誰かがその命を救おうとしたことは決して無関係ではない。
命を助けるということは、その者の人生だけでなく、その者が繋いでいく新たな命の可能性を守るということなのだ。
早瀬に助けられた井上がまた別の命を救うように。
特攻という無意味で残酷な作戦まで決行し悪あがきを続けた日本軍の過ちを描くとともに、時間により隔絶された第二次世界大戦で戦った方々と現代の我々を「命」というテーマで繋いだことで、戦争を風化させないという使命も副次的に達成している。
まさに終戦80年が経った今、観るべき作品だと思う。
ラストで流れる主題歌の「手紙(Uru)」にはやられた。所々の歌詞がこの映画の観た心にぶっ刺さった。
ただ個人的には寺澤の心理描写がもう少し欲しかったかな。ミッドウェーについて自らが批判した行動をとることに対する心情の変化があまり描かれなかったのは少し残念。まぁせめて人を助けるしかないという絶望的な状況ではあったので寺澤としては合理的な判断を下まで、という感じかもしれんが。
最後の語りかけは確かに稚拙だけど、テーマには合致してるし個人的には許容範囲です。なによりあのシーンがなくても作品としては成立しているので、あまり気になりませんでした。
ミリオタの批判が目立ちますが、時代考証とか言っても私自身が正解を知らないので、私は何も気になりませんでした。
細かな時代考証や高精度なCGよりも大切なことが描かれている映画だと思いました。
nnrさん
>個人的には寺澤の心理描写がもう少し欲しかったかな。ミッドウェーについて自らが批判した行動をとることに対する心情の変化があまり描かれなかったのは少し残念。
私もそう感じておりました。先週封切と同時に見に行きました。私の父が花月と言う駆逐艦に乗っており、途中まで雪風と行動を共にしていたため、父の見た風景を見逃すまいと画面に没入しておりました。昨晩、今度は少し冷静になり、もう一度見に行きました。最も心に残ったシーンですが、坊ノ崎沖海戦で大和が沈没した後、寺澤艦長が受けた軍部からの指令「作戦を中止し帰投せよ」と打たれた電信を、震えるこぶしで握りつぶし、踵を返してまるで早瀬が乗り移ったかのように「全員引き上げろ」と命令を出す下りです。それまで冷静だった寺澤の、現場を知らない無責任なエリート軍部や、戦争そのものへの大きな怒りを、静かな描写で表していたと思います。竹野内豊さんの抑え気味の演技も良かったです。前回はここを見逃しておりましたが、ちゃんと回収していたのかと思いました。ミリオタさんたちには評判がよろしくない本作(私も少しミリオタが入っていますが)、この作品はそれと一線を画した良作だと思っております。
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