「制作陣(監督含む全員)は何を伝え、そして、それをどう伝えたかったのか」雪風 YUKIKAZE たきがわさんの映画レビュー(感想・評価)
制作陣(監督含む全員)は何を伝え、そして、それをどう伝えたかったのか
戦争を知らぬ、肌で戦場を感じたことがない、平和に溺れている23歳の社会人男。
そんな私が見た後、どう考え、どう結論を出し、最終的に評価を下した本作「雪風 YUKIKAZE」へのレビューとなる。
ただし、稚拙な文章となってしまう点、ご理解頂けたい。
1.見た後すぐ
悪くない映画ではあった。
戦後80年という節目の年に、こういったシンプルで、詳しくない人にも親切な戦争映画という点では悪くない映画だった。案の定、戦後80年という背景もあって、当時の戦争について考える時間はできたのだがら、そういった意味では成功してる映画ではないだろうか。
2.冷静になった時間
少し経って、適当な居酒屋で一杯の酒を飲んだ後、別の店へすぐに移動した。
今作についての考えに耽るには、賑わいのある居酒屋ではダメだった。
静かな店へ移動した後、適当に料理をつまみながら、考えに考え抜いた。
結果、一つ出た、やっと納得したワードが出てきた。
「まるで道徳の教科書を読んでる気分だった」
私がこのワードを思い浮かべる前に、そもそもの話、まず本作の評価の仕方を考えた。
一つは、戦後80年という節目であり、日本が歩んできた歴史的背景をかんがみて、本作に求められた、もしくは求めるべきことは何か。
二つは、一つ目に上げた戦後80年とか、そういう「色眼鏡」「背景を見ない」という視点で、純粋な映画として見た時はどうか。
まず一つ目の評価の仕方は簡単だった。
戦争とはなにか、当事者ではない私が戦争について考えるというのは何か、どういう意味があるのか。こういったことを私が考えた時点で、本作は大成功している、と言える。
少しだが、他のレビューを見た時、不満、疑問点?に唐突な死をよく挙げられていた。
個人的にだが、少し疑問である。
表現が些かおかしいかもしれないが、これが戦争というものではないのか。
唐突な死、理不尽な死、無慈悲な死。
これが戦争を構成し、誰しもが戦争を嫌う第一の理由ではないのか。
皆誰しも、死を恐れ、死にたくないと願うものではないのか。
だから戦争をしたくないのではないのか。
一つ目の評価の仕方で見た時、「唐突な死」は戦争をよく表していて、普段戦争について触れもしない層が、最も戦争について衝撃を受ける描写ではないのか。
戦争について、最も分かりやすい描写ではないのか。
「戦争はこうもあっさり人が死ぬんだぞ」という、制作陣の意図を汲み取る必要があるのではないのか。
もっと書こうか。
「たった一機の戦闘機のパイロットの気分次第で、もしくはパイロットがその気になれば、搭載された機関砲、機銃、もしくはロケット、爆弾で、君の隣にいた戦友、友人、家族、上司、先輩、恋人、ありとあらゆる日常に生きる生命を簡単に、一瞬で奪うことができる」
これが戦争だ、人殺しの兵器が大活躍するのだから。
さて、色眼鏡たっぷりの評価を下した。
二つ目の評価の仕方に移る。
映画として純粋に見た時、全体的に説明口調すぎる。
一つ一つのセリフを取っても、なんだが、台本をそのまんま読み聞かせてもらっているだけで、何の感情も感性も芽生えない。
これは演技が悪いとか、そういう意味ではなく、セリフが臭すぎる。
臭すぎるというのは、あまりにも「媚びてる」「まるで日本が全く悪くないように」という点である。
先に上げた「まるで道徳の教科書を読んでる気分だった」というのは、主にこういった点を指している。
事実を淡々と描写、描くのではなく、若干盛っているのではないかと感じられずにはいられない。
節々から感じられる「お涙頂戴」「戦争はこういうもの」「日本が世界相手に戦争をしていた事実」を、なんか見せつけられているようで、もう本当に不快でしょうがなかった。
勿論これは、冷静になった後、評価を下していく段階で生まれた思考である。
しかし、一瞬で死ぬ、という描写を見た時、ほんのわずかだが、あの戦闘機に恨みを抱いた。これが戦争というものかと思うのと同時に、自分が気持ち悪くてしょうがなかった。
さて、ここまで長々と書いたが、最終的な評価を下したい。
ここでは、星なしとさせていただく。
というのも、本作は評価するとか、そういう次元に存在してはいけない気がするのだ。
これは神格化とか、そういう意味ではない。
戦争を題材にした以上、本作に低評価をつけるのは「あの戦争」を否定している気がして、凄く気分が悪いからだ。
純粋な映画として見た時の評価は、無論星2くらいが妥当である。
しかし、戦後80年というワードが重くのしかかり、どうしてもその評価を下せない。
ここまでレビューを読んで頂いて感謝する。
最後に一言だけ、添えさせていただきたい。
「気持ちで映画を作っちゃいけない」
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