「不沈艦「雪風」を知れたのは良かったですが、」雪風 YUKIKAZE 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
不沈艦「雪風」を知れたのは良かったですが、
ナレーションをつとめる奥平大兼の頭を見て、
一瞬ハッとした。髪が長い、しかもふさふさとしたボリュームだ。
太平洋戦争の兵隊が長髪はないだろう。
丸刈りにしろとまでは言わないけれど、せめて5分刈りくらいで
お願いしたかった。
艦長の竹野内豊もお洒落な口髭を蓄えて、軍人にはぎりぎり見えるが、
ダンディ過ぎる。
奥平を見たとき、この映画の方向性が見えた。
リアルな戦争映画ではない。
思った通り今まで観てきた数々の戦争映画の名作の中には、
数えられないだろう。
駆逐艦「雪風」という艦船の名前も働きも知らなかった。
日本海から南洋の海へ出向き軍艦と共に戦い、海に投げ出された水兵を
救いあげて命を助けた。
しかし救助場面の単調さといったら、あまりにバリエーションがない。
「雪風」の側面には綱が組まれている。
投げ出された船員は、泳げるものは泳ぎ着き、ただただしがみつき登って、
甲板にいる雪風の船員が手を伸ばして甲板に引き上げる。
この動作を単調に繰り返すのみ。
ワンパターンのみ。
途中で力尽きて海中に飲まれる者など皆無なのだ。
海も終始穏やかで、荒れない、波ひとつなく静かなものだ。
もっとドラマがあるはず。
山本(奥平)が唯一、脚を怪我して太ももから出血していた程度。
ここで早瀬(玉木宏)との絆が生まれるが、
エピソードらしいエピソードもない映画だ。
人間の心の葛藤も人間関係の確執も生まれない。
この映画のテーマは【生きて帰れ‼︎】
だと思います。
戦争映画の名作を少し取り上げて問題点を考えてみます。
「アルキメデスの大戦」2019年作。
戦艦大和の建造には、当時の国家予算の26%を費やしたそうです。
「戦艦大和」推進派の軍部に対して、反対派の山本五十六。
彼が打った手は、どうも少なく見積っていると踏む予算の嘘を暴くために
菅田将暉演じる天才数学者に「戦艦大和」の建造費を計算して貰うのが、
「アルキメデスの大戦」です。
《数学で戦争を止められるか?》
これがテーマ。
この映画は「雪風」のVFXとはスケールが違います。
「戦艦大和」の船内も縦横に撮影され、再現されている。
「戦艦大和」が沈没する映像のスケールも比較にならない。
大和の最後は本当に壮絶でした。
沖縄戦を戦おうと向かったのに、沖縄にまでもたどり着けなく
途中で空からの無数の砲火を浴びる。
乗員3332人ので、そのうち276人が生存し3056人が死亡しました。
その戦艦大和の最後を描いたのが、
「男たちの大和/YAMATO」2004年です。
映画にはこんな場面があります。
「雪風」に多分助けられた大和の船員が故郷の村に帰ります。
同郷の死んだ仲間の母親に、友の最後を告げに行きました。
母親から言われた言葉は、
「なぜお前が死ななかった。なぜおめおめと生きて帰った」
そう言われた隊員は深く傷つくのでした。
生きるも地獄、死ぬも地獄だと思いました。
「雪風」には心を打つ強烈なエピソードが少ない。
それにこの映画は【反戦映画】でしょうか?
たしかにダイジェストで戦況を教えてはくれます。
サイパン陥落、
フィリピン撤退、
最後のレイテ戦、
本土空襲、
原爆のきのこ雲、
終戦、と。
司令官は司令室から出て来ず、指揮をとるのみ・・・
との言葉もあるが、
♠︎1970年の万博。
戦後25年、復興した日本と、言いたかったのでしょうか?
黒白のニュース映像、集まる多くの人の群れ、
何を訴えたいのかわからない・・・のです。
★★
玉木宏の死と水葬。
海に国旗を巻いて捨てるのは衝撃でした。
考えてみれば、「男たちの大和/YAMATO」でも同様の水葬シーンが
ありました。
太平洋戦争中の日本海軍では普通のことだったのでしょう。
♠︎♠︎
ラストの描写。
更に10年後。
台風か水害で屋根に取り残された少年と犬を救助する女性、
(髪留めから竹野内豊の娘らしいと分かるが、何故ここで
有村架純?という違和感を覚える)
★★★
ラストシーン。
雪風の甲板で乗員全員が呼びかける、
「見てるからね〜」
「頼んだぞ〜」
ここでも感動するより違和感。
「仲間に入ろうよ、自衛隊に〜」
・・・に聞こえてしまう。
真面目で気持ちいい映画ではありますし、「雪風」という、
16回も海洋に出て無事に任務を果たして日本に帰り、
多くの兵を救助した。
戦後は1946年まで引き揚げ船としても活躍、
1万3000人の引き揚げに当たった。
その後、中国に引き取られて台風で壊れた。
本当に奇跡的に頑丈で「幸運艦」「不沈艦」と呼ばれただけのことは
あります。
運が良かったのか、艦長の三角定規での銃撃を避ける技が
功を奏したのか?
物足りない映画とも言えるが、胸が苦しくなる場面が無かったので、
気楽に楽しめました。
當真あみが可愛く、田中麗奈が美しかった。
綺麗事感は否めなかった。
共感ありがとうございました。私も知らない事が多かったから、観て良かったとは思いますが、イマイチな所もあって、娯楽作品と考える事にしました。
私は退屈では無かったんですが、戦闘部分はあっさりしてたのに、万博とか更に10年後とか、いつ終わるんだろうと思ってしまいました。
娘が遺志を継ぐのはいいけど、男の子が水害で屋根の上に一人取り残されるってどういう状況なのか考えてなくて、安易だなあと思いました。
YUKIKAZEというタイトルとか、「駅馬車」に感心した話とか、アメリカで上映する予定なんでしょうか。
共感ありがとうございます!
琥珀糖さん のレビューを読んでいて、戦争映画の過去作の主題の部分を切り貼りして再構成したら、戦争を多方面から見つめ直す一つの大きな作品になるのではないかと考えました。海外だとクエンティン・タランティーノとかがやりそうな分野ですけど、日本の監督・脚本家の中でそういう発想が出てこないのが残念です。
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