劇場公開日 2025年8月15日

「沈マヌ強運艦ガ命ヲ繋グ」雪風 YUKIKAZE ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 沈マヌ強運艦ガ命ヲ繋グ

2025年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

難しい

ミッドウェー海戦
第三次ソロモン海戦
ガダルカナル島撤収作戦
レイテ沖海戦
坊ノ岬沖海戦
主だった戦歴でもこれほどの数を残している稀有な駆逐艦「雪風」。

「ソロモン海戦」では
米国の駆逐艦二隻を撃沈の戦功、
「坊ノ岬沖海戦」では「戦艦大和」の最期を見届け、
多くの乗員を救出している。

そうした誉の高い艦を舞台に
戦後ハ十年の今、往時をどのように描くのか。

「心技体」との言葉がある。
三要素がバランスよく揃えば最大限のパフォーマンスが発揮できるとの教訓だが、
この艦はまさしくそうしたもの。

新兵に対しての古参兵の虐めや鉄拳制裁は無く、
艦内には闊達な空気が満ちる。
隅々までの整備は行き届き、
手の空いている者は先を見越し自ら行動を起こす。

操艦技術と敵の攻撃予測も卓越。
的確な判断が幾つもの窮地を救う。

また就役して年が浅い新鋭艦との状態も奏功。
1940年以前は日本の国力や技術も十分に発揮できる時代だった

もっともそれらを統帥する艦長の技量も大きい。
本作の主人公『寺澤(竹野内豊)』は何代目となるのか。

ヘッドが変われば方針も変わるのが世の常だが、
彼等は前任の良き風習をそのまま踏襲、
部下たちも、それに応え奮戦する。

日本軍を評価するのに
「兵は優秀、下士官良好、将校凡庸、指揮官愚劣」
との表現があるが、まさしく的を射る好循環。

が、本作の主眼は、艦や乗組員たちによる戦闘を描くことを主眼とはしていない。

繰り返されるのは、沈没した船から海に投げ出された兵隊たちを
艦上に引き上げるシーン。

手を差し伸べて救えば救うほど、
彼らの営みは未来の希望へと繋がって行く。

中途、特攻機の零戦を見送る場面での
『寺澤』の苦々しい思いの吐露。

或いは、「天一号作戦」で片道切符を渡された
『伊藤整一(中井貴一)』中将の、
若い下士官への期待。

何れもが作戦とも言えぬ
命を軽視する指令を下す上層部への
痛烈な皮肉。

命を繋ぐことを使命の一つとして躍動した「雪風」の存在意義が
ピタリと嵌る。

映画では敗戦後の「雪風」についてもふれられる。

終戦ののち、海外からの復員者、帰還者の輸送の任に当たり、
1947年に賠償艦として中華民国へ引き渡される。

嵐で鑑底が損傷、1971年末に解体される
(1970年初頭に解体完了との説もあり)。

後者が正しければ、戦後二十五年。
奇しくも「大阪万博」が開催された年だった。

ジュン一