「80年の節目の映画としては残念」雪風 YUKIKAZE 焼き魚さんの映画レビュー(感想・評価)
80年の節目の映画としては残念
これまで2010年台以降の戦争映画の有名どころは一通り観てきた10代後半の学生(男)です。
※以下、個人の感想です。
・映像
流石に近年の映画なのでディテールで目くじらをたてるようなことはありませんでした。が、満足に魅せてはくれなかったと思います。雪風の画は艦上での「寄り」か全景が入る「引き」のどちらかがほとんどで、迫力に欠けました。対空戦闘のシーンは何度も同じものが出てきて使い回しかと感じました。大和や瑞鶴も出てきますがこちらも同様です。
また、航空機に関しては質感・挙動共にCG感が否めなかったです。メインは雪風と割り切って手を抜いているのかもしれないですが、10年以上前に公開された『永遠の0』の方が遥かにリアルです。あちらはメインは零戦でしたが九七艦攻や赤城、米空母のタイコンデロガに至るまで隙がなかったです。
・ストーリー
ミッドウェー海戦から天一号作戦までの雪風の生涯が物語の軸です。最後に復員船として働くところもちょっと出てきます。私はてっきり進水から賠償艦として連合軍に引き渡すところまでやるのかと思ってたので、あっさりめで驚きました。ミッドウェーからマリアナまでは一瞬です。体感10分ぐらいで2年経ったので心配になりました笑
雪風の生涯というメインストーリーに加えて、先任伍長の早瀬、艦長の寺澤、水雷員の井上という人物がフォーカスされます。私は誰か1人に絞るべきだったと思います。誰が主人公か分かりませんでした笑(今調べたらどうやら艦長が主人公のようです)また、序盤からフォーカスされ本土の家族の様子も描かれる早瀬はグラマンの機銃掃射から井上を庇って戦死するのですが、私はここで死なせる必要があったのか疑問に思います。物語における主人公の死(早瀬は主人公ではないですが)というものは視聴者が主人公に感情移入し、生きて欲しいと願って起こるからこそ喪失感を感じさせるものですが、早瀬の背景はそこまで重厚に描かれていませんでした。(これは中途半端に3人にフォーカスした結果でしょう。)死ぬ時も結構あっさり死んでしまい、感動的なものはありませんでした。簡単に人が死んでしまうという戦争の現実を伝えたかったのかもしれないですが、、、。
もう一点、井上はミッドウェー海戦時は三隈に乗っており、早瀬の手で雪風に引き揚げられて助かった後に自身も雪風乗組になったという経緯があり、早瀬に2度命を救われ、2度目で早瀬は身代わりとなって死んでしまったということになります。そこまで描いたなら戦後に井上が早瀬の家族を訪ねる的な要素があっても良かったのではないかと思いますが、映画内では艦長が手紙と遺品を送ってそれを妹が読んで終わりです。
他にも、ストーリーと関係ないですが最後に戦後の台風災害時に成長した艦長の娘が海上自衛隊員となって子供を救助するシーンがありますが、その海自隊員になんと有村架純が起用されています。とんでもないちょい役で大物女優が出てくる配役も謎でした笑
・総評
雪風好きな人にとってはかなり物足りない、感動系の映画を観たい人にとっては期待はずれ、そんな映画でしょう。純粋に、こういう艦があったんだな〜って知りたい人は観たら良いと思います。
戦後80年の節目に、しかも終戦の日に公開されるとあってかなり気合の入ったものを期待していたのですが、結局何を伝えたいのか分からない、どう転んでも中途半端な映画で残念でした。
やはりこの手の映画は山崎貴監督でなければダメかと改めて感じました。5年後、10年後の次の節目の年にはぜひ山崎監督に『永遠の0』や『ゴジラ-1.0』を凌駕するような傑作を作っていただきたいものです。
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