「いつものNHKスペシャルかな」雪風 YUKIKAZE north-windさんの映画レビュー(感想・評価)
いつものNHKスペシャルかな
40年ほど前の「連合艦隊」、あるいは20年前の「男たちの大和」の形を変えたやつ・・・?
NHKスペシャル(ドラマ)として放送しても良かったレベル。
「ゴジラ-1.0」であれだけのことがやれるのかと思い、今作も期待していたのだが・・・
「連合艦隊」と同じ頃に上映された西ドイツ映画の「Uボート」、こちらは潜水艦の内部に特化した映像作品で、彼我の力量の差をまざまざと見せつけられたように感じたが・・・40年後にまだ「連合艦隊」かい、と言いたくなるほど(中井貴一のデビュー作、今作で伊藤誠一大将役だったのは、感慨無量の感もあったが)。
駆逐艦「雪風」と言う、特定された艦を題材にしているなら、もうちょっとやりようがあっただろうに・・・・
構成として、先任伍長(最古参の下士官)、伝説の?寺内艦長、ミッドウェイから生還し配属された新兵、邦画に付き物?銃後の女の子等・・・
もうこれだけで、いつものやつだなと・・・
最期は・・・これまた40年近く前の層雲峡SOS事件のカセットテープかなと・・・
題材はいいのに、残念な印象。
後はグチでしかないが・・・・
冒頭のミッドウェイ・・・雪風が題材なら、雪風視点で描きましょうよ。
なんでいつも航空機目線なのか。しかも数年前に見た米映画「ミッドウェイ(2019)」より見劣りする描写?
(ミッドウェイも褒められたものでもなかったが、勘所は抑えてある)
そもそも、三隈乗員の救助、(朝潮型駆逐艦の記憶だったので)雪風はいたっけ?と思い、調べると荒潮、朝潮とある。作劇上のフィクションか?
最期に艦上での相撲のシーンを入れていたようだが・・・・
あれは、駆逐艦の日常風景として本編で描くべきものでは?
そもそも、「雪風」と銘打ちながら、具体的な艦隊生活が希薄のような。
魚雷発射管もアップ過ぎて、駆逐艦の中での位置関係、装置の全容もよく分からず・・・・
「タイタニック」なんて見せるべきところは全部見せているのに、少しは見習ったらどうか。
なので、不幸な出来事があっても、まったく感情移入ができないと言う・・・
しかもえらく、ファンタジックな演出で・・・・
対日戦を描いた米国ドラマの「ザ・パシフィック」など、ちょっとしたエピソードと数発の銃撃戦で、あっと思わせる演出があり、これまた雲泥の差を感じるところ。
時系列がよく分からなかったが、確か戦闘中?なんとも緊迫感のないシーンで、邦画ならしょうがないか、と諦めの境地・・・
戦局をあれこれ地図で説明する割には、個々の戦闘がなんなのかが、よく分からない。
みんな知ってる栗田長官など出す暇があるなら、横須賀から呉へ退避させる空母信濃の護衛で、ひと悶着あったエピソードをやるべきではなかったか。
あれこそ「雪風」にとって身近なエピソードに思うのだが・・・・
一駆逐艦長が連合艦隊司令部が考えるような戦略を口にするのに、ちょっと違和感が。
空母の護衛でさえ、(歴戦の駆逐艦長の意見が重用されず)空母艦長の指示を受けているくらいなのに。
そのサマール沖海戦(レイテ沖海戦)
戦闘の経緯がまったく描かれておらず・・・再現する予算がなかったのか?
帝国海軍戦艦部隊の最初にして最後、最大の見せ場なのに(山崎監督なら、色付けてくれたかも)。
また、止め画のような空母が横を向いていたが、追撃戦なのに、あんなふうに見えるのか?(雪風視点だとどうか分からないが)
何かにつけて雑な感じが否めない・・・
ヤマ場のはずの?天一号作戦
大和の沈没シーンが・・・
もうちょっと工夫できないものか。これも雪風視点で作るべきと思うのだが。
映画「アルキメデスの大戦」もいいとは言えなかったが、新しく作ったのにあの映像・・・
実写で大和の映像なんて数多く残っているのに、あれをAIで合成したほうが、面白いものができそうな気も。
燃料片道分で・・・は、「またかよ」と思ったが、追加で往復分になっていたのは良かった。
さらに、あの時は沈没艦の乗員救助は行わずに雪風一隻でも沖縄に突っ込む算段だったらしいので、その辺の葛藤もなく救助活動となっているのが、戦闘艦たる振る舞いもなく終わった感じ。
そのほか、前の大阪万博を出す意図がよく分からない唐突感。
戦後の復興を表すものらしいが、世代じゃないので全くピンと来ず・・・
これまた、今作の最初と最後で似たような映像の繰り返しで、本編同様に退屈する。
戦闘シーンも同じアングルの機銃掃射。
「ミッドウェイ(2019版)」のほうが、上手く描写されていたような?
「男たちの大和」より、若干マシかもしれないが。
作戦参謀絡みの描写は蛇足もいいところ。
駆逐艦は「何でも屋」として酷使されているのだから、それを描写すればいいのに、いつまで上から目線のシーンを入れ続けるのか。
そのくせ、本質的な大本営の話までは言及せず(上級将校たちの無能さ加減は描かず)。
こういう時に限って、マスコミがいいだけ煽ってきたことは、頬かむりだったりする。
(他の邦画ではマスコミ関連がちょくちょく出てくるが)
艦長は、ゴジラ-1.0に出ていた雪風艦長のほうがピッタリに思えたが・・・・
(今作では、大和艦長?)
呉に帰投している雪風の画が、いつも同じなのはいかがなものか(呉じゃない場合もあったが)。アニメ「この世界の片隅に」に出てくる、重巡青葉の帰投シーンなんて数秒のモノでしかなかったが、印象的な画だったなぁ・・・
復員船時代も雪風には必要なのだろうが、これまた取ってつけたようなシーンで・・・
兵隊のほかに一般人もいるなら、なにか説明を付けても良かったような。
個人的には、戦後パートは説明画像で終わらせても良いと思えた。
またフィクション混じりのためか、歴代艦長の肖像を出すような演出もなく・・・
2回目観て気づいたが、この時に艦長、唐突に亡くなっていたのね・・・
中井貴一・松田聖子共演の「プルメリアの伝説」を思い出す(?)
観終わって思ったのは、学芸会「雪風」 (ラストシーンで確定)
観たくもない「ミッドウェイ(2019版)」で口直ししたくなってきた・・・
良ければ数回でも観るつもりだったが2回目以降を観るのはツライ・・・
とりあえず2回目(8/21)を鑑賞(中盤の眠くなるシーンは寝ていた)
・三隈の沈没シーン、本当は頑張ったところなのかも。
(ミッドウェイ海戦での、三隈の部隊の話はあまり出てこない・・・これも栗田艦隊)
・中井貴一の出てくるシーンは緊迫感があり、これは中井貴一成長の物語なのだと思えば、腹も立たない?
・雪風を多少でも見られる点で良しとしましょう?
・エンドロールは、「海ゆかば」が流れるのが、何より一番しっくりくると思うのだが。
(まぁ、絶対やらないと思うが・・・)
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