「本編部分が正直…」機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning frmさんの映画レビュー(感想・評価)
本編部分が正直…
うーん、こんなものか…?
というのが観終わった後の第一印象。感想は適宜追記。
もしかしたら、至極単純に現段階では伏線や設定など鑑賞者側の知らないことが多すぎて、まだ評価できる段階じゃないのかもしれない。
それでも一つの劇場映画作品として向こうが出してきた以上は1ガンダム映画として鑑賞したつもり。
なお、自分は20代だが初代含めガンダムや富野作品は観ている方なので、そういう人間の感想と承知して読んでほしい。なおエヴァはエヴァわかとスパロボ知識しかないし、鶴巻作品は恐縮だが観たことがない。
前半、つまりサブタイの通り”ビギニング”の部分はかなり好感触だった。初代をベースにしたifモノだが既存の設定との整合も適度に取りつつ、ラストは完全オリジナル展開!といった感じ。
パラレルデザイン的なMSのアレンジもとても好み。
芸の細かさが行き届いており画面が非常に見やすくメリハリがあるのも良かった。優等生的。
声が違う点などを踏まえると若干一昔前のなろう系転生モノ臭くてちょっと、と思ったが、この奇妙な違和感は意図したものだったのだろうか?
一方で後半はテレビへの助走ということもあってか正直失速気味。
ベースのプロットがぶっちゃけよくある平成ロボアニメなので、多少ロボアニメをかじっている人にとってはお約束通りすぎて既視感がかなり強いのが失速の大きな一要因。よく言えば王道、悪く言えば陳腐。平成アニメの良いところ悪いところがそのまま令和にアウトプットされている。それらプラス水星でも見られたようなオトボケ主人公を足した仕上がりでここも既視感。
キャラクターも主人公をはじめ何を考えているかよくわからない。シンプルに感情の機微に対する掘り下げが足りておらず、突発的に行動する幼児を見ている気分。それが物語上のフックになっているかというとそうでもない。
ガンダムに乗る動機付けもかなり弱く、劇場版用に尺を詰めた影響なのか、この描き方だとマチュはただの戦闘狂のサイコパスかなにかにしか解釈できない。考えるより感じる系の作品なのかな?と。
恐らく観客に伝えたかった動機であろう「地球の重力や宇宙への憧れ」+唐突に湧いた「軍警の顔に泥を塗りたい」=「ガンダムに乗れば一石二鳥やん」という部分はHBの鉛筆くらいには薄く書けているのだが、ガンダムとしては目新しくもなくありふれたテーマで、今更絶賛はしないかなぁというところ。ゼータとかクロボンとかで見た。
というか、あれだけ前半で尺使って「既存のガンダムをぶっ壊す!」ってノリを出しておいて、いざ始まった本編がこじんまりと既存の王道をなぞっていくっていうのが…無念、と言うか…まぁこれは前半の空気が面白くて期待しすぎたのが悪い。
1番の問題として、そもそも劇場向けのプロットとして煮詰まっていないため、SEED1話とかのような先が気になる爆発的なつかみや引き込み力が無い。
正直なところ、仮にこの本編部分が劇場版無しでそのままTVで流れたとした場合、ガンダムじゃなかったら平気で1話切り2話切りが視野に入るレベル。
というのもメイン3キャラクターの抱える問題(主に金銭の問題という、物語を動かすには極めて瑣末に過ぎる問題)が映画部分だけでも一旦解決してしまっているため、既に積極的に戦う理由がほとんどない上、
マチュは学生の身分で無理に戦う理由付けがないし、サイド6の警察機関の横暴も難民じゃないマチュには究極的には関係がないし…と、
マチュやシュウジの素性を除けば、先が気になる仕掛けが全くないのが勿体ない。
また"難民(不法移民)"という、現実の世界情勢にもダイレクトに関わってくるきわめてデリケートな問題に対してのアンサーを「不法移民をMSという強制執行で取り締まる警察は悪いので倒す」で行くのだけはやめて欲しいと切に願う。
前半は個人的に評価点なのは前述の通りだが、厳しく言ってしまうと、
そもそも本編を展開する上で初代をベースにする積極的な理由はあったのだろうか?という疑問がある。正直、無い。
なぜかといえば、本編部分は前半部分が無くても成立するからというのが一つ。
ジオンが勝ったと言っても、中立だったサイド6にとっては飼い主が変わるだけで影響が無いんじゃないか?と、本編を観るだけでも思った。
赤いガンダムの出自について、わざわざファーストのパラレルを作ってそこと絡める必要はないのでは、という点もある。「戦後ジオン技術を接収して作られた試作型が消えました」くらいの話でいい。コレはコレでナラティブとやや被るが、既存作品とのネタ被り度合いで言えば本編もどっこいどっこい。
画的なインパクトを優先した結果赤いガンダムとその取り巻きだけが前半と本編の接点になっているのが残念。
結局のところ、前半部分(庵野氏)と後半部分(鶴巻氏)でそれぞれが自由にやった結果、接続がおかしなことになってしまい、どっちも中途半端に切り取った尺と物語になっていると感じる。
前半だけ続きを観たいという人と後半だけ最初から観たいという人に分かれるのは、単に初代を知っているかどうかということ以上に、そういった問題点のせいだと思う。
総評として、本編への助走としては正直物足りない出来。
肝心の本編部分を観た結果新しく分かったことが何も無い。情報量が0。既に公開されているあらすじをその通りなぞっただけの作品に仕上がっていた。