「もう一声ほしかったが、やはり小池ルパンはかっこいい」LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族 ぽぉたさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5もう一声ほしかったが、やはり小池ルパンはかっこいい

2025年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

斬新

ルパン三世は、ハードボイルドで、クールで、天才的な泥棒だ。
決して間抜けでなければ、悪党を挫きかわい子ちゃんを助ける義賊的ヒーローでもない。
しかし放送コードでそれが薄められ、最後にはカリオストロの城が作り出した、「年を取って丸くなったルパン」という人格こそが「ルパン三世」なのだという印象が広まってしまった……。
TVアニメ PART6の評価に続き、現状この映画のレビュー点数が振るわないことからも、やはり悪人としてのルパンは大衆受けしないのだと少し悲しく感じます。

峰不二子という女や次元大介の墓標を公開当時から見続けていました。
最近音沙汰がなかったものの、ここに来て一気に2作公開!しかも待ちに待った劇場版!
THE FIRSTは3Dへの初挑戦という失敗できないということでカリオストロを踏襲したものでした。それは仕方ありません。
しかし、LUPIN THE ⅢRDは、今まで実績のある小池ルパン。
我々の求めていた大人向けのルパンがついに劇場に来たのだ!!!
胸を躍らせ、公開初日に劇場に向かいました。

結論から言えば、かなり満足。
小池ルパンを、より長尺で、より大きいスケールの物語で見られたことはとても嬉しかったです。
異次元の強さを持つ敵が現れ、ルパンの頭脳が解決する。
今までスピンオフでそれぞれの特性が描かれていたところから、ついにルパンの頭脳に焦点を当てられた。
様々な伏線がありつつも、見事に問題を乗り越える流れは、まさに求めていたLUPIN THE ⅢRD ルパン三世編でした。
また、過去作品を見ておらずともある程度わかるような親切な説明も入っており、初めて劇場で触れる人にも配慮されていました。
(初めて劇場でLUPIN THE ⅢRDシリーズを見る方が今作を気に入るかは別問題ですが……)
過去作品を見ている人であれば、意外なキャラが活躍を見せて心躍る場面も。

しかし、次元大介の墓標ほどの痺れる感覚が感じられませんでした。
「はぁぁ……」と息の漏れるような感嘆はありましたが、思わず「ヒューッ!」と言ってしまいたくなるような、あの衝撃には達しませんでした。
欲を言えば、ルパン三世本人に痺れるほどのかっこよさを感じる、そのもう一声がほしかったです。
あと、とあるキャラがすぐ退場してしまったことも少し残念ではあります。

他の方のレビューを見て思ったこと。
・カーチェイスが少ない、お色気が少ない
確かにおっしゃるとおり。この映画にはそういった「お決まり」はあまりありません。
服装ですら、ほぼ全員がアイコン的ないつもの服とは違う、平凡な装いです。
しかし、むしろそういった大衆への媚びを排除し、この作品でのルパン三世の物語を貫いたという姿勢を評価したいです。
この作品では、お決まりを入れればむしろ雰囲気を壊しますし、スーツで居れば「泥臭く動きにくい環境なんだからそんな服脱げばいいじゃん」となってノイズになりそうなところ。
だから、これでいいのです。

・前日譚に5作も?
たしかに前日譚になってはいます。
しかし、過去4作は1話完結ですし、今作も「若かりしルパン三世」を描く物語として、後の作品に続く一区切りとなっています。
たしかに煮え切らなさはわずかにあるかもしれませんが、視聴前の方は心配する必要はありません。

・ルパンたちが負け過ぎ
小池ルパン全体としてそういう作風です。
強大な敵が居て、最後に逆転する。
今作もそれを踏襲するため、小池ルパンを好むかどうかの問題です。

・栗田ルパンは山田ルパンに及ばない
たしかに、山田康雄さんの哀愁漂う奥深い演技には唸るものがあります。
対して栗田さんのルパンは、そういった面では劣るのかもしれません。
しかし、いやだからこそ、徹底的にクールを貫いたルパン三世の声として、栗田ルパンはとてもよく響くと思っています。
山田ルパンが素晴らしいのはもちろんのことですが、「栗田貫一のルパン三世」と「若くクールなルパン三世」は非常に相性が良く素晴らしいものだと感じます。

・かっこいいだけの作品、味わい深さがない
何が悪い。
私はずっと、ハードボイルドで、スタイリッシュで、かっこいいルパン三世が見たかったんだ。
義賊的な優しさやおちゃらけたコメディはない。
原作から更にハードボイルドを突き詰めた、このシリーズが私は大好きだ。

総評!
スタイリッシュ・ハードボイルドな小池監督の作風を貫いたLUPIN THE ⅢRDシリーズの正統劇場作。
「お決まり」や大衆への媚を捨てた、決して大衆受けはしない作品。
「尖っているからこそ、小池ルパンが好きだ!」
そんな方なら、劇場という最高の映像視聴環境で観劇して損はないでしょう。

ぽぉた
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