劇場公開日 2025年2月14日

セプテンバー5のレビュー・感想・評価

全162件中、41~60件目を表示

4.0倫理観と報道

2025年2月23日
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鑑賞方法:映画館

日本の報道は昨今ぐっちゃぐちゃですが、そこにもやはり真実をいち早く伝えたいという思いと現実はハッピーエンドになるとは限らない残酷さがあって事実はいつも皆が願う方になるとは限らないしやはり救いは無い。
でも明日も皆生きなければならないという生命の積み重ねを思い出させてくれる映画でした。
通訳のマリアンヌは戦争世代では無いけど、ドイツという国が背負った敗戦によって職場で傷付かなければならないことも多くて、当時の戦争しなかった世代の苦しみや背負ったものの表現も重苦しくのしかかっている様が描かれていた。
真実は何か、いつの時代も見極めなければならないし、真実として報道される事が真実なのかは現代社会では分からない事が多くなったのかもしれない。

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ぽな

1.0個人的には全く、、、

2025年2月23日
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鑑賞方法:映画館

先ず現在作られてるのに昔風の映像にする意味があったのか?終始薄暗い室内で繰り広げられる会話劇で、緊張のみ(事件を知ってるので緊張しなかったのですが、、、)の平坦な進行で、目を開けて寝たようでした。テレビマンあるある話を、テロや人命という飾りをつけて製作した作品ですかね。日本の宣伝のやり方にもあると思いますけど。
何にしろ見ていたのに、気付いたら終わっていたのであまり言えたもんじゃないのですが、個人的にまったく刺さらず、眠くなる作品でしたとだけ記しておきます。NHKスペシャルや舞台の方が上手く作れたのでは、、と思いました。

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マクラビン

4.5報道の在り方

2025年2月23日
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鑑賞方法:映画館

見せるもの、見せないもの。
見せたいもの、見せたくないもの。
見せるべきもの、見せてはならないもの。
そこにはあくまでも誰かの主観(判断)が存在する。

ドキュメンタリー(タッチ)のこの作品も、作り手の、これを見せよう、という意志によって作られている。

報道の在り方が問われる今、考えさせられる作品だ。

こういった実話ベースの映画が好きで、今作は半世紀前の事件を題材にしたものだが、現在起こっている出来事の多くが、今から半世紀ののちには、映画の格好の題材になっているようなことだばかりだと思うととても悲しい。

比べてはいけないが、ショータイムセブンも吉田鋼太郎なんか入れずに今作のような描き方をしていたらもっと緊迫感が出て面白くなっていたかも。あの犯人では無理か。

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大吉

3.5あれから半世紀

2025年2月23日
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1972年のミュンヘンオリンピックの背中に起こった選手村での人質事件を描いた作品。

オリンピックにはあまり興味がなく、ほとんど観ていないが、過去にこんな事件があったことは初めて知った。

米ABC放送が期せずして生中継をしたことで、放送史に残る事件だったはずなのに、まさかの悲劇が待っている。

ピリピリした生放送ならではの緊張感が伝わり、全編無駄がない。

鑑賞後にこの事件の報復として、イスラエルとパレスチナの血と血を洗う報復合戦には目を覆う。
あの事件から半世紀経つが、あの地は未だに紛争の解決の糸口が見つからない。
過去と現在を思うと、重い作品だった。

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tohko

4.0オリンピック取材班の目を通してテロ現場が描かれた緊迫感ある作品

2025年2月23日
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イスラエル選手団がテロリストに襲撃されたミュンヘンオリンピック。
テロ現場をアメリカのオリンピック取材班が生中継するのは緊迫感あります。
上映時間が短いこともありあっという間に最後まで進みます。

後手後手の旧西ドイツ政府の対応により悲劇的な結末になりました。
また、イスラエル建国以来のパレスチナとの軋轢の歴史はほとんど描かれません。
ちょっと物足りないですが、あくまで、オリンピック取材班から見た作品なので
そこらへんはやむをえないのかな。

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お抹茶

4.0臨場感

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

ミュンヘンオリンピックでスポーツ担当のTVクルー達が突然のテロに遭遇し意地を貫き生中継するという内容。

ジャーナリストとしてのプライド、射殺場面でさえも中継するのかという倫理面、そして現実的な視聴率など、色々な問題の狭間で葛藤するクルー達の姿が臨場感満載で素晴らしかったです。
また、1972年が舞台ということで、荒い画質なのも雰囲気があってよかったし、字幕の付け方や写真の拡大方法など、当時の番組製作の方法を映像で見せてくれるのもとてもよかったです。

私はこの事件の存在も知らなかったので、歴史を学ぶ良い機会になりました。
ユダヤ人の迫害の歴史とドイツの汚点、そして今もなお根強く残るパレスチナ問題。
最近のガザ地区でのニュースも思い出しながら歴史のつながりを実感し、
もっと世界の歴史を学ばなければと改めて思いました。

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ぞの

3.0ジャーナリズムと倫理観

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

ジャーナリズムと倫理観。
きっとテレビの報道はこの二つを背負いながら真実を追い求める。しかしながら現実は視聴率という数字に支配されている。50年以上前からそれはきっと変わらない。ミュンヘンオリンピックでのテロ事件の話しだが、日本でも同様に浅間山荘事件、別の案件ではあるが大阪三菱銀行人質事件など、きっと報道する側はジャーナリズムと倫理観を持ちつつも現実的には数字が支配する。
この作品を観て感じたのは事件を報道する側のドキュメントは類似作品があるが、観る側の心理や倫理観を描いた作品はあまりない事に気づいた
モラルが問われる現代だからそんな作品をいつか観てみたいと感じた。

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makoto

3.5ものすごい緊張感に身体が固まり、いい意味でどっと疲れた

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

映像が当時を再現したようにめちゃくちゃレトロだから作品から受けるイメージがとてもリアル、キャスティングも知らない役者さんばかりだからドキュメンタリー作品を観ている様で最高の緊迫感を味わえます

報道の現場の描き方は『ネットワーク』(1976)を想起させる重厚感でこれもまた◎

めちゃくちゃグッタリした後ですが、このまま続けて本作の後半20分ぐらいがオーバーラップして本作の後日譚の様に描かれるスティーヴン・スピルバーグ監督の『ミュンヘン』(2005)を久々に観たくなりました

報道、テロリズムの歴史の一幕を世に残す見応えのある重要作でした

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Jett

3.0生放送の醍醐味と善悪

2025年2月22日
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鑑賞後すっきりしない作品でした。
視聴率のため・殺害現場を放映する事の善悪。

現在と当時との通信環境の違いはあれど、誤報・資本主義・政治宗教の刷り込み・差別はいまも変わらぬ永遠のテーマですね。

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jiemom

4.0低予算でも圧巻の緊迫感

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

ドラマの大半はテレビ中継のコントロールルームで展開され、極めて狭い舞台なのにこの緊迫感は秀逸。事件現場の映像はあえて当時のものをそのまま使っていて、映画で製作した再現映像はほぼない。ある意味これも妙なリアル感を演出している。確かにあの場にいた登場人物はあの映像しか見ていない訳で。

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O家の主人@マンU

3.0緊迫感ではなく忙しなく煩わしい感なのだ。

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

オリンピック開催、当時珍しい衛星生放送、そして最中に勃発したテロ人質事件と、ノンフィクション作品としての素材に打って付けな題材の本作。

予告編は、まさに前代未聞な事件があの時に起こっていた! といった緊縛度合いもしっかり伝わってきて、骨太な作品と上映を期待してました。

が。期待値が上がっていた分、若干肩透かしされちゃったかな。どうも緊迫度というよりは、ネットがない時代の不便極まりない状況による"忙しなさ"だったり、ドイツ語から英語に通訳しないと事態が把握できない"煩わしさ"が要因だったなと。

ノンフィクションだけに脚本の流れもわかる分、鑑賞後のカタルシスも今ひとつ。
感じるのは、ネット以前と以後では、この手の作品は受け取り方が変わってしまうのだろうな。

電話機がダイヤル式のジーコジーコって、本当にまどろっこしい時代でしたよね。

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ヘマ

3.5裏をとれ

2025年2月22日
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実録モノの作品が好きだ。
事実である、という裏づけが物語の格を一つ高めてくれるような気がして、
より集中力を持って観ることができる。

この映画の題材も、この作品がなければ知ることはなかった事実、事件だ。

物語の冒頭は少し観づらい。
登場人物のキャラクター付け、彼らのABCにおける立場、役職などが
イマイチ説明されないまま進むのでちょっと混乱する。
また当時の戦後ドイツという国の国民感情、歴史背景なども一瞬戸惑うところかもしれない。

ということは一旦差し置いて、
ほとんどセットだけ、ワンシチュエーションの物語構成でラストまで見せ切ることができているのは、
やはりこの物語が「事実である」という点が大きいと思う。

テレビ中継がまだ黎明期の頃の技術、システムを知ることができる、という部分は
個人的には面白かったが、多くの人にとってはむしろ退屈で歯痒さを感じる点かもしれない。
衛星の使用可能時間を局どうしで調整したり駆け引きしたりなどというのは、
観客にどう受け止められるのかな?と思いながら見た。面白いのかな?

真実とは何か?
「そこにカメラを置き、時事刻々と変化する事実を伝えること」をABCスポーツ班は選んだ。
慣れない言葉の言い回しや、むしろテロリストに有利な情報を中継してしまった?などの
問題点を乗り越えて中継は終わる。

ジャーナリズム、真実とは?という視点からこの作品は論じられることが多そうだ。
「ZDFが言っていた」「ここはABCだ!」というくだりが個人的には好きだった。
真実を伝えるって、なんだ?

個人的にはこの話は「裏を取れ」という話なんだな、と思った。
ラストシチュエーションではこの「確認(confirm)できたのか?」というセリフが、しばらく飛び交う。
誰が、どう確認すればいい?
政府が言ってることすら当てにならない。

現代においても、ネットや週刊誌は不正確な情報で埋め尽くされている。
裏をとれ。確認しろ。
1972年のミュンヘン五輪テロの現場で飛び交ったこの言葉。
今や、AIやフェイクの氾濫で当時以上に世界中のメディアは「確認」に翻弄されている。
私たちも一人一人が、「裏を取れ」ということを意識して暮らしていかなければ、
SNSのちょっとしたニュース、噂を簡単に信じ込んでしまう。

「裏を取れ」。
ABCスポーツ班のクルーの苦悩を、今の私たちも同じく背負って生きていくべきなのだろう。
きっと。

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Tak

4.0実に見事

2025年2月21日
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歴史的な1日を追体験する、これは見事でした。
オリンピックの選手村を襲ったテロ、ミュンヘンオリンピック事件を題材にしたシリアスな作品。
テロ事件そのものでなく、事件を追うTVクルーの物語なのが斬新でした。
だから思想や国家間の問題は最低限の描写。
あと色調も当時のようなカラーグレーディングを施し、施された機材も凄いことに。あんな古いものどこにあったのやら。
物語はじっくりとタメを作った後、急ピッチで動き出す現場に引き込まれました。
スタジオという閉鎖された空間の緊張がピリピリと、少ない情報を何とか集めようと錯綜する熱量がすごいです。
この張り詰めた空気がずっと続くので、観ているこちらもつい力が入ってしまうんですよ。
最後、機材の電源を落としスタジオを後にした後のエンドロール。どっと疲れが出ました。
事件のその裏側でも、こんな闘いがあったのですね。
その描き方、実に見事でした。

そしてこれは史上初の「テロに寄る悲劇が生中継された瞬間」であって、決して「倫理のない報道からくる悲劇」ではないと思っています。
もちろん報道倫理や規制に関心が動いた機会ではあったと思いますが、あくまでも全くテロに対応できなかった西ドイツ側の失態でしょう。
そもそも選手村のフェンスをバッグを持って乗り込んでいる姿を目撃しているのに、それをスルーするところから事件は始まります。
事件後も現場にいたのはただの現地警察官で、もちろんテロリストに対抗する装備も訓練も行ってません。
狙撃手もただの警官でスコープも無く打てない、情報も錯綜し他の作戦も全て後手後手。
それを裏付けるように、事件後西ドイツは公式に調査も行っていません。
そして同じくIOCも同様の対応で、遺族のオリンピック開会式での黙祷の希望も聞き入れられませんでした。
驚くべき事にこの願いが届き、イスラエル選手団への黙祷が実現したのが、2021年東京オリンピックの事です。
映画とは直接関係ないのですが、オリンピックはの裏にはどうしても色々あったりしますよね。

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白波

4.0緊迫感が続く90分

2025年2月21日
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突然勃発したテロ事件を報道することになったスポーツ番組の放送クルー達が、即断即決を強いられながらも、ジャーナリズムや人権に直面する様が、終始緊張感の続くスピーディーな展開で描かれていました。

慣れないニュース番組の報道であり世界が注目する特大スクープ。それぞれのプロフェッショナルを発揮して今起きていることをカメラに映し出す。その機敏な仕事っぷりは観ていて気持ちが良く、1970年代のアナログな放送手法だからこその切り抜け方なども見応えがありました。

テロの発生から数時間が経ち、テロリスト側もテレビを見れることで情報を得てしまうことが分かったりと次第に難しい立場に立たされていく。そして、事実確認が仕切れていない速報が届き…。

「噂によると」「事実確認はまだですが」そんな保険をはっても結局他社が追従し、事実のように扱われてしまう。フェイクニュースに踊らされる現代にも通じるラストの後味の悪さは何とも言えないものがありました。

エンタメとしても、歴史の一片を知る機会としても、メディアの受取手としても、とても面白かったです。

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まだまだぼのぼの

4.5コレこそ、観たかった報道の映画

Kさん
2025年2月21日
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怖い

興奮

95分間、スクリーンに目が釘付けになりました。緊張感がすごい映画でした。
報道の自由とその難しさを考えさせられました。

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K

5.0とても良かった。

2025年2月21日
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話の展開もスムーズでとても見やすくわかりやすかった。
事件の事は「ミュンヘン」の方も見ていたので今回はマスメディアとしての視点から見れた。

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chihdd

4.5情報を追う者もまた、情報に踊らされる。

2025年2月20日
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興奮

知的

1972年9月5日。ミュンヘンオリンピック開催中のイスラエル選手団の選手村を、パレスチナ武装組織「黒い九月」が襲撃。選手団とコーチを人質に立て籠もる。事件を中継したのは、ABC放送局のスポーツ部だった。事件発生から終結までの1日を、テレビクルーの視点からスリリングに描く。
監督・脚本にティム・フェールバウム。その他脚本にモーリッツ・ビンダー、アレックス・デヴィッド。

1972年ミュンヘンオリンピック。アメリカのABCチャンネル放送局(American Broadcasting Companies,Inc.)は、独自の機材を駆使した衛生中継による生中継を謳い文句に、スポーツ部のメンバーが日々中継を行なっていた。仮設スタジオは選手村のすぐ近くに設置され、目と鼻の先には世界各国のアスリートが宿泊する宿舎が見える。
9月5日、早朝。新米プロデューサーのジェフリー(ジョン・マガロ)が出社し、先輩のマーヴィン(ベン・チャップリン)やスポーツ局トップのルーン(ピーター・サースガード)らと共に、その日の枠で放送する競技の打ち合わせをしていた。放送の指揮を執る調整室のクーラーは故障し、ケーブルのトラブルでモニターも不調を来していた。そんな中、ケーブル修理に励む職員のジャック(ジヌディーヌ・スアレム)と、新しく入ったドイツ語通訳のマリアンネ(レオニー・ベネシュ)は、イスラエル選手団の宿舎から発せられた複数回の銃声を耳にする。
マリアンネが現地警察に確認すると、同様の通報が複数寄せられており、調査中だという。情報によると、パレスチナ武装組織「黒い九月」が選手村の宿舎を襲撃。選手団とコーチを人質に立て籠もっている様子。
かつてない特ダネを前に、ジェフリーは仮眠中のマーヴィンを起こし、ルーンを呼び戻す。本部からは本国の報道部に明け渡すよう要請が入るが、ルーンはこれを拒否し、現地に居る自分達が中継すべきだと前代未聞のスポーツ部のクルーによる世界初のテロリズムの生中継が行われる事になる。

ストーリーのほとんどが調整室内で展開されるクルー達の奔走で占められている。テロリズムの経緯は、調整室のモニターに映される当時の映像と、様々な場所から仕入れてくる不確かな情報のみ。何が真実か、何を報道すべきか?クーラーの故障した蒸し暑い調整室の中で、皆が額に脂汗を浮かべ、刻一刻と変化する現状に対処しながら行われる世紀の生中継。むせ返るような蒸し暑さまで伝わってくるかのような緊迫感溢れる様子に、こちらも緊張感を抱く。
また、情報を得る為、職員の身体にフィルムを巻き付け、偽のIDを胸に下げて現場に送り出す様子や、警察の巡回を掻い潜って選手村のバルコニーに潜伏する職員が居たりと、手段を選ばない様子には、緊張感と共に一種の嫌悪感も抱く。

警察が宿舎の電源を落とさなかったという落ち度もあるが、テロリストもABC放送によって現場の警察の情報を把握してしまう“平等に与えられる情報”という皮肉が効く。そして、そうしてなりふり構わず中継し続けた事が、最悪の結果を生む事に繋がるのだ。

【情報を追う者もまた、情報に踊らされる。真実を見極めたければ、冷静になれ。】
情報の速さがものを言うというのは、現代にも通じる問題である。しかし、情報源はどこからなのか。その情報が本当に確かなものなのか。それを見極めるのは、あくまで人なのである。

クライマックスでジェフリーは、空軍基地に搬送された人質が「全員無事に解放された」という不確かな情報を世界に伝えるべきかを問われる。マーヴィンは確証が得られるまで待つよう言うが、業界内の競争の激しさを知るルーンは“噂では”と付け足した上で放送するよう促す。ジェフリーもまた、新米である自分に訪れたチャンスを前に、「ドイツの公共放送局が発表したから」と、マーヴィンとの対立も厭わずに放送を決意する。直後に調整室に入った電報により、その情報が確かなようだと確認した一同は、長い1日が終わった事に安堵し、祝杯を上げる。

しかし、喜びつつもマーヴィンは自局のスタジオでインタビューに答えるドイツの報道官の発言に違和感を覚える。彼の発言は、何処か希望的観測によるものだからだ。直後、「まだ空港で銃撃戦が続いている」という情報が入る。マーヴィンは知り合いであるドイツの広報に連絡を取り、「人質が全員死亡した」という確定情報を得る。世界に向けて放たれた世紀の誤報は修正され、最悪の結果を報じて放送は終了する。

放送終了後、ジェフリーは自らの欲で先走り、誤った情報を世界に発信した罪悪感に苦しむ。しかし、ルーンに局長室に呼び出された彼は、「今日はよくやった。明日、追悼番組を放送するから指揮を執れ」と告げられる。痛ましい犠牲を前にして、尚もルーン達は翌日の放送について考え、悲劇性を強調するよう翌朝空港に赴いて、逃走用のヘリの残骸を映そうなどと話している。

ラスト、ジェフリーは調整室の電源を落とし、ボードに貼られた人質達の写真の方を振り返る。やるせなさに苦悶の表情を浮かべ、調整室を後にする。暗い駐車場で1人静かに車に乗り込む彼の横顔のアップで、本作は幕を閉じる。
全世界で9億人が視聴した初のテロリズムの生中継は、最悪の形で幕を閉じた。皮肉にもそれは、人質が無事だと放送した直後、電話越しで本部のボスがルーンに言った「放送史に残る」中継となって…。

限られた空間内で展開される緊迫のテロ中継に釘付けにされた。ロレンツ・ダンゲルによる音楽が素晴らしく、緊迫感溢れる本作を更に盛り上げてくれている。情報の信憑性については、現代でも度々取り沙汰される問題だ。本作で描かれている事は、決して単なる過去の出来事ではない。強烈な切れ味を持って、今日を生きる我々に突き刺さる。

画質の良さが強調される昨今において、本作はまるで“70年代の作品をリマスターして流している”かのような、綺麗過ぎないザラついた映像に仕上げている。アップで展開される登場人物達こそ綺麗に映されてはいるが、ふと背景に目を向けると、ザラついた質感を感じ取る事が出来るのだ。個人的に、この選択には大いに拍手を送りたい。綺麗過ぎない映像は、当時の映像との親和性が高く、相乗効果を持ってこちらの没入感を抜群に高めてくれるからだ。

惜しむらくは、本作のパンフレットが制作されていない事。こういった作品にこそ、内容の充実したパンフレットは必要不可欠だと思うのだが。

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緋里阿 純

3.5史実を知らずにに観るか、史実を知ってから観るか

2025年2月20日
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こんな事件があった事は昔聞いてはいたが…詳細は知らなかった。ドキュメンタリータッチでスリリングに描いている。それをまたスタジオ内のみのワンシチエーションで見事に表現している。

しかし一方で、これは米国ABC放送の言い訳ムービーではないかとの批判もある。生放送の恐ろしさや警察の動きを犯人達にも伝えてしまう重罪な部分がある。それから人質が助かったとの憶測をあそこで放送していなかったら、その後の他局の後追いもテレグラム(電報)の送信も無かった筈だから…。
まさにマスコミの罪な部分だ。。それは現在のマスコミにも通じる部分となる。メディアにとって何が正しくて何が間違いなのか…これはずっと問い続けられる課題だと私は思うのである。

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えーじ

5.0黒い九月を知っているか

2025年2月20日
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当時小学生だった少年が今や60代なので、この事件を知っている人も少ないので、話の展開がわかりにくいかもしれません。事件自体ではなく、事件を生中継した米ABC局のドキュメンタリーなので肩透かしを食った人も多いかもしれません。
ドキュメンタリー手法に徹底した演出方針で、スリラーも申し分なし、時代考証もしっかりしているので、逆に言えばこの時代を知らない人にはどう映るのでしょう?

参考
昭和47年というのは、2月に札幌で日の丸飛行隊が表彰台独占して、その後あのあさま山荘です。事件の最中にニクソンが電撃訪中して毛沢東と握手、連合赤軍を始めとしたアカの連中が愕然としました。米中接近の流れで角栄が日中国交回復してパンダが初来日した年です。野球はON健在でV8、大相撲は大鵬引退、玉の海休止のあと北の富士が一人横綱で貴ノ花が大人気、郷ひろみがデビューしてジュリーはソロに、女性では天地、小柳、南の三人娘、そんな時代です。

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越後屋

3.5職務か?倫理か?

2025年2月20日
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ミュンヘンオリンピック事件は私がまだ生まれる前の事件。そういう事件があったということはテレビのドキュメンタリーなどで知っていたが、今回あらためて衝撃を受けた。平和の祭典であるオリンピックでこんなテロ行為が行われたなんて。しかもテロが起きているにも関わらず一部競技は継続していたことも衝撃。映画の中でも時折出てくる発言を聞いていると政治的にも非常にヒリヒリとしている時代やったんやろう(今もだろうけど)

メディア側の人たちにとっては職務を全うする意思を持ってやっていたのだけれど、テレビは犯人たちも観ているもので、報道規制の重要性も認識されることになったきっかけの事件なんやなあと。倫理的な面で考えると人が殺されるかもしれない場面を流すことが果たしてどうなのか?視聴者の知る権利も守る必要はあるけれど…あの放映によって事件が最悪の結果になったと100%否定はできない時点で当時も「マスゴミ」なんて呼ばれたのかな?とふと思った。

ただ、あの人たちやって解決してほしいという気持ちは同じなんやよね。有名な事件なので結末は分かっているからこそやりきれない。

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める
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