「命の重さとジャーナリズム、その狭間で——」セプテンバー5 abuさんの映画レビュー(感想・評価)
命の重さとジャーナリズム、その狭間で——
平和の祭典であるオリンピックの最中に起きた衝撃的なテロ事件。
混乱の中、「ジャーナリズム」という使命感を胸に、カメラを止めず真実を伝えようとする報道陣の姿が描かれます。
その姿勢は称賛に値する一方で、社会に不安や混乱を広げる危うさも孕んでいます。
映画では、報道が加熱するにつれて、記者たちの高揚感がリアルに伝わり、スリリングかつテンポの良い展開が観る者を引き込んでいきます。
しかし一方で、競技は淡々と続き、選手村では笑顔があふれる日常がある。
事件と日常が交錯する中、観客は「傍観者の無自覚さ」という苦味も突きつけられます。
報道は誰のためのものなのか?
その報道は、犠牲者にとって何をもたらしたのか?
命の重さよりも“伝えること”が優先される現実に、私たちはどう向き合うべきなのか?
エンターテインメントとしての完成度が高いからこそ、観終えた後に残るのは深い問いと余韻。
報道の在り方、そしてそれを受け取る私たちの姿勢まで問う、重厚な一本でした。
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