劇場公開日 2025年11月28日

消滅世界のレビュー・感想・評価

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正常という名の異常

2025年11月27日
スマートフォンから投稿

冒頭から、いつまでも解消される事ない違和感。
政府やマスコミに押さえつけられてるわけではなく、抵抗せず、漂白された無機質の世界で、感情を出さず清潔な会話をする。
とてつもない違和感。
そして、それが常識であり、正常だと言わんばかりに、当たり前の様に受け入れる。

正常という名の異常。
この異常さは、物語後半の実験都市エデンに向かうに連れ、加速度を増してゆく。

ジョージオーウェルの「1984」や、テリーギリアムの「未来世紀ブラジル」と同じディストピアではあるが、無機質であるはずなのに滑り気
があり、もっと苦痛度が高い。

だが、この映画の住人も、観ている我々も何故かこの世界に魅了されている。

まるで心地良い拷問のようだ。

それはきっと原作の村田沙耶香のイノセントで生々しい世界観と、それを映像に落とし込んだ川村監督の力ではないだろうか。

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ゾンビ

3.0解釈は人それぞれ。その先にあるのとは…。

Kさん
2025年11月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

《試写会にて鑑賞》

村田沙耶香さん原作。
村田文学の無機質な美しさを映像にて堪能。

自分の価値観が何度も試されました。
何が「異常」で何が「正常」か。

近い未来こうなっていくだろうな…と思う
描写もあって納得と共感した部分あり。

いちばん恐ろしく感じたのは
夫婦が子どもちゃんたちと初対面したシーン。

そして、家族の崩壊がリアル。
主人公がグラデーションに洗脳されていく様子が見事です。

キャストの皆様の演技も素晴らしくて
眞島秀和さんと霧島れいかさんの演技が
個人的に強く響きました。

ラストの狂気は冒頭を思い出し唸る…!

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K

4.5完成披露試写会

2025年10月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

怖い

難しい

人工授精で子どもを産み、夫婦のセックスが近親相姦とされる世界。
原作を読んだときは例に漏れず「実写化は無理だろう」と思いましたが、まさか本当に形になるとは。
性描写はあえて直接描かず、余白の中で感じさせるような演出になっていて、どこまでも清潔で美しい世界が完成していました。
家族という概念すらなくなり、何が正常で何が異常なのか、人としての境界がだんだん曖昧になっていく。
観ていて苦しくなる瞬間もあったけど惹き込まれていきました。
原作へのリスペクトをすごく感じたしラストはやっぱり衝撃。
観終わったあともしばらく余韻が残って、いろんなことを考えさせられました。

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TheE

4.5文学的表現の最上級映像作品

2025年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

斬新

ドキドキ

先日、映画『消滅世界』の試写会に参加しました。
上映前には川村監督と主要キャストによる挨拶とトークが行われ、
和やかな空気の中にも作品への確かな熱量が感じられました。
印象的だったのは、監督が俳優たちに演技プランを提示する際、
音楽担当・D.A.N.による主題歌を聴かせたというエピソード。
音から物語のトーンを共有する——
その手法に、この作品の繊細な世界観の根源を垣間見た気がしました。

そして、いよいよ本編へ。
原作を既読の身としては、やはり映像化のバランスが気になるところでしたが、
結果は見事。
115分があっという間に感じられるほどの完成度でした。
原作に忠実でありながら、単なる再現に留まらない。
性的な描写をあえて直接描写せず、
観るものに想像の余地を残し、あとは各自それぞれの情動に託す——
監督の手腕と映像的センスを垣間見るようでした。

何より圧巻だったのは、蒔田彩珠の演技。
彼女が体現する「消滅」と「生」の境界には、息を呑むようなリアリティがありました。
ラストシーンは、静かな絶望と美しさが同居し、まさに鳥肌ものの瞬間です。

映像は端正で、どのカットにも意識的な構図が感じられる。
原作の印象的な台詞や世界観を損なうことなく抽出し、
読者でなくともこの異質な世界に自然と引き込まれるでしょう。
最後まで一切の冗長さがなく、緊張感を保ったまま着地する作品でした。

公開日が待ち遠しい。
静謐でありながら確かな余韻を残す、今年屈指の文学的映像体験です。

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きりこ