「愚かな人間の「思い上がり」に対峙する教義」ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師 mayuoct14さんの映画レビュー(感想・評価)
愚かな人間の「思い上がり」に対峙する教義
ドイツという国が向き合って来た歴史やそこと関連する文化やものの考え方にしばしば共鳴させられます。
この物語もその一つになりました。
教会を我が物にしようとした愚かな独裁者とそれを受け入れた社会に対して、神の言葉を伝える牧師が「成し得ること」を全うしようとして最後は殉教する物語ですが、教会は神のものであり、信じる人々のものであり、決して特定の人間のものにはなり得ない、牧師は、神の御言や思想を伝える者として、決してその魂を売ることはしない…という強いメッセージを感じ取りました。
最後にボンヘッファーから発せられる「地の塩、世の光」の祈りの言葉(私は中学・高校で日々唱えていました)や、彼の著作にまつわる数々の言葉がこれ程胸に迫り、涙したことは初めてでした。
牧師や神父、日本の場合だと僧侶が多いのかなと思いますが、宗教家の言葉には言霊が宿っていることも多いと感じます(間違った使われ方がされる危険とも隣り合わせですが)。
ボンヘッファーがラスト付近で処刑を待つ人々(その人々は処刑される理由など本当はないのですが)に聖体拝領をする場面は、ボンヘッファー自身の矜持や拝領を受ける人々との心の通わせ合いなどがしみじみと感じられ、人間の尊厳を深く感じ入る、まさにキリスト教教義の真髄とも思える場面でした。
この映画に関しては、自分の多感な時代のバックボーンの一つであるカトリックの教えが改めて胸に沁みた、鑑賞後そんな心持ちで劇場を後にしました。
一つだけ難点を言えば、他の方もレビューしていますが、どの時代の主人公が描かれているのかが飛び飛びで結構わかりにくいつくりなところがありました。
が、総じて良い映画でした。
