光る川のレビュー・感想・評価
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水と緑に癒されてきました
安田顕さん目当てで見に行きました。
勝手に、カメオ出演的なあまり出番のない役かと思い込んでたんですけど、予想外に出番が多くて満喫。情の深い父親として、娘や息子に向ける優しい顔、娘の幸せを願う思いのあまり大声で怒鳴りつける炉端のシーン、地に這いつくばって懇願する木地師たちとの直談判、どの場面でも声の緩急の迫力がすばらしくって観に行った甲斐がありました。
ストーリー自体は、嵐の中子ども一人を滝に行かせてしまうお祖母ちゃんは幼児虐待だと思うし、悲恋伝承のふたりが実は結ばれて現代(というには昔ですが)でも嵐が収まって山が開発から守られるというオチはちょっと安易な気がしてしまうのですけど、日本昔話の世界はまあ理不尽で不可解なものですものね…。
川や風の音、山の中の踏み分け道、滝と鵜の目の淵、と自然の風景がなつかしくも美しくて観ているだけで森林浴気分で、小学生のころの金剛山遠足を思い出していました…。
土地の伝承
「こんな美しい映画があるんだ」
もはや映画自体が伝承だ
アルビノ現象を山神と祀る村人の不変の作法を描いた「アルビノの木」。
絶滅したニホンオオカミの軌跡を探し求めているうちに、かつて、そこに住んでいた人たちの想いとリンクし、時を共有するという不思議な体験の「リング・ワンダリング」。
そして、ネイチャー三部作として「光る川」。
三本ともに、ストーリーはいたってシンプル。
しかし、セリフを少なめにし、川のせせらぎの音や木々の風に揺れる音、鳥の声、自然気象の音などを印象深くすると、とても奥行きが感じられた。
過去の人と時を共有するとは、流行りのタイムリープなどのSFとは違い、そこにはもう存在しなくなっても、その想いがそこに残り、それが霊的に同期する事であって、いかにも日本的なネイチャー作品なのだ。
それを象徴しているのは滝だ。
いつも滝が作品の鍵を握っており、そのパワーを伝える撮影に感服する。
監督は日本を良くわかっておられる。
生活のすぐそばに霊的なものがあり、それは想いであって、それこそが伝承なのだと思います。
没入新体験ー時空を超えて
旅をしてきました。岐阜の深い緑の山々。青々した清らかな川や滝。その大自然の中で出会い恋に落ちる山の民の若者と里の娘と。大きな使命を背負い山奥の道なき道を行く幼いユウチャと。彼らとともにに歩き、川のせせらぎの音、鳥たちのさえずりを聞き、轟く滝の水しぶきを浴び、木々のむせる匂い、穢れを浄化する空気の中にいたんです。そして、草笛が響く。その音色に鷲掴みされ。。。
原作小説がすごく好きで(自分的には副題の本家の上をいく)映画期待してみました。
松田悠八著『長良川 スタンドバイミー1950』にインスパイアされた金子監督の映画は、小説とはまた違うストーリーでしたが、作者へと、描かれた岐阜の自然と営む人々へのリスペクトとオマージュは、損なうことはなく、むしろより深まり神々しいほどでした。オールロケの圧倒的な映像美は、パンフにはー ロケ地を1か月ほど監督自ら探し歩き、その土地に息づく気配を感じ、民話や伝承から選んだーとあり納得しました。だからこそでしょう。客をスクリーンに引き込む装置が映画にセットされているに違いないと思うほど。これはですね、絶対に自宅のテレビではできない新たな体験だと言えます。映画館で見るべき映画だと実感しました。それにしても、美しく哀しい。そして優しさにあふれていました。
近年のマイベスト。お薦めします。
自然に宿るもの
アンビバレントな映画か
マルチエンディング紙芝居
日本的自然観と霊性の視座から創造秩序と人間性回帰を問う
金子雅和監督が長良川流域を遡り自然光の中で撮影した映画「光る川」は、現代人が忘れかけている自然への畏怖や人間の根源にある生命力を、岐阜県内をロケーションした圧倒的な実景撮影と民俗学・美術に裏打ちされた世界観で描き出す作品として国内外から注目を集めている。この映画は、無垢な少年の眼差しを通して、現代化への分岐点となる高度経済成長期と、人々が自然への畏怖を抱いていた300年前の時代とが邂逅する物語。
現地撮影による川面の煌めきなどの映像美、高木正勝による自然音を活かした音楽性もすばらしい。ローマ・カトリック系メディア「オッセルヴァトーレ・ロマーノ」は、2015年に刊行されたフランシスコ教皇の回勅「ラウダート・シ――ともに暮らす家を大切に」との思想的親和性を論じられている。キリスト教も含め海外からの高い関心が寄せられていることが興味深い。
監督:金子雅和 2024年/108分/日本/英題:River Returns/ 配給:カルチュア・パブリッシャーズ 2025年3月22日[土]よりユーロスペースほか全国順次公開。
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