劇場公開日 2024年12月20日

「年を取るのもそう悪くない」セカンドステップ 僕らの人生第2章 Tama walkerさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0年を取るのもそう悪くない

2024年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

たぶん、もっと(微苦笑、という感じで)笑わせる映画としてつくられたんだろうと思う。しかしあまり笑えず。カーラ(キャロル・ケイン)はとても魅力的だったが、主人公のベン(ジェイソン・シュワルツマン)および彼の母など周囲の人々にもう少し、コメディタッチの軽みがあったら良かったんじゃないかと思う。

カーラの息子家族と会うシーンが面白かった。70歳で、「バット・ミツバ」(ユダヤ教の洗礼のようなもの)を受けたいと言い出す母に慌てふためき拒否反応を示す息子は、明らかに母(や自分)がユダヤ系の血を引いていることを否定したがっている。「アメリカ社会においてユダヤ系であること」が当事者にとってどんな意味をもつのか、生き方にどう影響するのか、ベン、カーラ、カーラの息子の三人のコントラストが見事に描き出す。

非ユダヤ人と結婚し、ほとんどユダヤ人であることを忘れて生きてきたカーラは、70歳になって自分のアイデンティティを自覚し、カムアウトして残りの人生を生きようとけんめいに努力する。逆にいえば、夫を亡くして70という歳になるまで、彼女はユダヤ人として生きようとはしてこなかったわけで、そのこと自体が、ユダヤ人として生きることの困難さを示してもいる。
しかし今は、ふっきれたのか開き直ったのか、もう失うものがないからか、カーラの気持ちがぶれることはなく、明るく前向き。これなら年を取るのもそう悪くない。

Tama walker